
日本国内最大手の民間信用調査機関、帝国データバンクによると、有翼の宇宙機を開発する日本の宇宙スタートアップである株式会社SPACE WALKERは、2026年1月30日に東京地裁へ自己破産を申請した。
本稿では、SPACE WALKERの歩みと破産に至った経緯を整理し、日本の宇宙輸送産業が直面する課題と求められる戦略について考察する。
SPACE WALKERについて
SPACE WALKERは2017年12月に設立された東京理科大学発の宇宙スタートアップである。「有人宇宙飛行の実現」を掲げて、ロケットと航空機の特性を組み合わせた有翼式ロケット(スペースプレーン)の開発を行っていた。
再使用や滑走路運用を視野に入れた独自の宇宙輸送コンセプトを特徴としており、日本では珍しいアプローチを採っていた企業の一つである。
スペースプレーンを開発する中で、世界初となる特許技術を用いて極限まで軽量化を突き詰めた複合材推進薬タンクの開発や、完全自律航行での往還を目指した航法誘導制御システム開発等を進めていた。2026年に実験機による実証実験を行う計画であった。

破産に至った経緯
SBIR採択と資金調達
SPACE WALKERはJAXAをはじめとする官公庁、個人投資家、ベンチャーキャピタルからの資金調達を行っていた。とりわけ、文部科学省が実施する中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)では、2023年9月にステージ1として約20億円の交付を受けて研究開発を進めていた。
これは宇宙スタートアップにとって大きな資金であり、機体設計や技術実証の推進に活用されていたとみられる。
しかし、2024年度のSBIRステージゲート審査では ステージ2へ進むことができず、追加の大型資金を確保できなかった。SBIRは段階的に資金が供給される選抜型の制度であり、次段階に進めなかった場合、想定していた規模の公的資金を得ることは難しくなる。
収益化までの長期性と資金繰りの悪化
宇宙輸送分野は、衛星開発や宇宙データサービスと比べて研究開発・試験・実証コストが格段に大きい。さらに、打ち上げ実績がない段階では民間からの信頼を得づらく、顧客契約や収益化の早期構築が難しい。
SPACE WALKERは 打ち上げ実績がなく、その状態で大型資金の次段階審査を突破できなかったことが、資金繰り悪化に影響したと考えられる。
被保険者数(月次)も減少傾向にあり、社会保険に加入する常勤人材が縮小していたことがうかがえる。

宇宙輸送企業の課題と求められる戦略
今回のSPACE WALKERの事例は、宇宙輸送分野そのものが抱える構造的な難しさを示している。しかし、この状況は日本に限ったものではない。海外でも小型ロケット企業の撤退や再編が相次いでおり、宇宙輸送は成功企業と撤退企業の差が極端に分かれる分野と言えるだろう。
こうした中で、企業に求められるのは単一の資金や制度に依存しない事業設計だ。
SBIRはその典型である。同制度は初期段階では広く支援し、進捗が確認できた企業に資金を集中投下する選抜型の仕組みであり、国家予算を効率的に配分することを目的としている。裏を返せば、継続的な財源ではなく、通過できなければ資金は止まる。
したがって、宇宙戦略基金や防衛省案件といった官需、産業資本からの出資、周辺コンポーネント開発など、複数の資金源と収益機会を組み合わせながら開発を継続できる体制を築けるかどうかが分岐点の一つになるだろう。
さいごに
産業の成長過程において一定の淘汰が起きること自体は珍しい現象ではなく、むしろ市場が成熟していく過程の一側面とも捉えることができる。
重要なのは、この経験から何を学ぶかである。宇宙輸送は衛星利用やデータビジネスを支えるインフラであり、日本の宇宙産業の競争力を左右する中核領域だ。
2026年には、SBIRの次回ステージゲート審査に加え、SBIR採択企業であるスペースワンやインターステラテクノロジズの打ち上げが控える。日本の宇宙輸送業界の今後の動きに注目だ。








