ワープスペースがJAXAから月ー地球間光通信システムの概念検討業務を受託
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2026年2月16日、宇宙における空間光通信技術の産業化を目指す株式会社ワープスペースは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)より、「月面活動に向けた月ー地球間光通信中継システム概念検討」業務を受託したと発表した。

本記事では、本プロジェクトの重要性と、実施主体であるワープスペースの強みについて解説する。

プロジェクト背景と重要性

国家ビジョン:2040年代の月南極拠点構想

今回ワープスペースが受託した「月面活動に向けた月ー地球間光通信中継システム概念検討」プロジェクト(以下、本プロジェクト)の背景には、JAXAが内閣に提言し、策定した「日本の国際宇宙探査シナリオ2025」がある。

同シナリオでは、2040年代に月南極域における長期・大規模な拠点運用を目指す方針が示されており、その実現に向けて2030年代から段階的な技術実証が計画されている。

その中で、通信システムは月面探査を安全に行うために不可欠な要素の一つだ。探査機の遠隔操作、取得した観測データの送信、宇宙飛行士の安全確保、機器の状態監視など、あらゆる活動が月ー地球間の安定した通信基盤の上に成り立つ。

光通信インフラの構想と実証計画

日本の国際宇宙探査シナリオ2025 イメージ画像
日本の国際宇宙探査シナリオ2025 イメージ画像 ©JAXA

月ー地球間の通信の確立に向けては、月周回軌道であるELFO(Elliptical Lunar Frozen Orbit)※1に衛星コンステレーションを構築する開発シナリオ案が示されている。

そのシステムにおける中核技術の一つが光通信である。光通信は、高速かつ大容量のデータ伝送が可能であり、秘匿性の高い通信を実現できる点が特徴だ。月面―ELFO軌道衛星―地球を結ぶ基幹通信として位置づけられ、2032年以降に順次実証を行う案が検討されている。

本プロジェクトはその実証フェーズに先立つ重要な概念検証となる。2026年3月末に完了する予定だ。

プロジェクト概要とワープスペースの強み

ワープスペースが担う役割

月ー地球間光通信システムのイメージ画像
月ー地球間光通信システムのイメージ画像 ©Space Connect

本プロジェクトにおいて、ワープスペースが検討を進める主な項目は以下の2点である。

  1. 光通信端末を搭載した月周回衛星システムの概念検討
  2. 月ー地球間光通信中継システムのエンド・ツー・エンドでの運用コンセプト検討

1つ目に、月の周囲を回る衛星に光通信機器を搭載することを前提に、どのような衛星構成とすれば安定した通信が可能になるかを検討。
2つ目に、月面から月周回衛星、そして地球までの通信経路を一つのシステムとして捉え、どのような運用手順で安定的な通信を実現するかを整理する。

ワープスペースの強み

本プロジェクトを実施するうえで、ワープスペースが持つ主な強みとしては以下の3つが挙げられる。

1|月ー地球間光通信に関する実績

ワープスペースは、JAXAとともに月―地球間光通信の実用化を見据えた検討業務に取り組んできた実績を有する。加えて、月―地球間光通信用の高感度センサーの開発もJAXAから受託している。

これらの取り組みでは、技術成立性の検証にとどまらず、コスト、通信の持続性、運用・保守のしやすさといった観点からも評価を行い、実用化を見据えた検討・開発を重ねてきた

月―地球間通信は約38万kmに及ぶ長距離通信であり、わずかな姿勢誤差や指向ずれが通信品質に直結する。こうした条件下での技術検証や実用性評価を通じて蓄積してきた知見は、本プロジェクトの概念設計を行ううえで重要な基盤となる。

2|独自開発のDTS技術

同社は、衛星コンステレーションの設計から運用までを仮想空間上で再現するデジタルツインエミュレータ(DTS)を開発している。

これにより、実際に衛星を打ち上げる前に、軌道上での衛星の動きや通信状況をコンピュータ上で再現し、どのような配置や運用をすれば安定した通信が実現できるかを事前に検証することができる。

導入効果や運用条件を事前に具体化できる点は、実証リスクの低減や設計精度の向上につながる強みといえる。

3|富士通との連携

月周回衛星の軌道要件に関する検討は富士通株式会社との連携により進められる。

月ー地球間の光通信では、衛星がどの軌道を通り、どのタイミングで月面や地球と見通し関係を確保できるかが通信成立の前提となる。特にELFO※1のような月周回軌道では、長期間にわたり安定した通信機会を確保できる軌道設計が求められる。

富士通はこれまで、人工衛星の軌道解析や宇宙関連システム分野において実績を積み重ねてきた。長年にわたり軌道解析を担ってきた企業が参画することは、本プロジェクトの技術的信頼性を補強する要素となる。

さいごに

月通信インフラは、月面探査を支える基盤技術であると同時に、将来的な宇宙通信市場の起点となり得る領域である。

探査活動や将来的な商業利用のいずれにおいても、安定した通信網は前提条件となる。そのため、通信アーキテクチャの設計段階から関与することは、将来の実証フェーズや商用展開、さらには国際的な役割分担においても影響を持ち得る。

光通信分野では、日本企業が長年研究開発を積み重ねてきた実績があり、日本の宇宙開発・宇宙産業の国際的な競争力を左右する要素の一つとなるだろう。

注釈

※1 ELFO(Elliptical Lunar Frozen Orbit):月の重力分布を考慮し、軌道要素の長期変動が比較的小さくなるよう設計された楕円軌道の一種である。適切に設計することで、特定の月面領域や地球との可視条件を安定的に確保しやすいとされる。

参考

ワープスペース、月面活動に向けた光通信システム概念検討業務をJAXAより受託

ワープスペース、月・地球間の長距離光通信用の高感度センサー開発をJAXAより受託

宇宙ベンチャーのワープスペース、月と地球を結ぶ光通信システムの実用化に向けた検討業務をJAXAから受託

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