ボーイング社「スターライナー」、初の有人飛行テストにおける宇宙飛行士のミッションとは
©Space Connect株式会社

NASA(アメリカ航空宇宙局)と米航空宇宙機大手会社ボーイングが主導する新型宇宙船「スターライナー」の初の有人飛行試験が2024年5月7日11時34分(日本時間)より実施される。

本記事では、スターライナーの打ち上げからISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングを経て、地球に帰還するまでの間に宇宙飛行士が行うミッションについてご紹介する。

1分でわかる スターライナー

スターライナーとは、NASAのプログラム(CCDev)の下、ボーイングが開発する有人宇宙船のことだ。

CCDevにて、開発支援を受けている民間有人宇宙船は、今回挙げている「スターライナー」とすでに運用が始まっているSpaceX社の「クルードラゴン」、この2種類である。

NASAが宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に輸送する際に利用するのが、この両宇宙船になる。

スターライナーは今回が初めての有人飛行試験となるが、ISSへの無人飛行試験はこれまでに2回実施している。

2019年に実施された最初の無人飛行試験では、ソフトウェアの問題が生じたためにISSへの到達を断念し、地球に帰還。

2022年に実施された2回目の無人飛行試験では、打ち上げからISSへのドッキングを経て、地球に帰還することに成功した。

スターライナーは最大7名の宇宙飛行士を輸送できる設計になっており、宇宙飛行士の人数が少ない場合は、代わりに貨物を積むことも可能。

今後予定されているNASAのミッションでは、最大4名の宇宙飛行士と科学研究のための荷物を輸送することを予定している。

スターライナーでの宇宙飛行士のミッション

超多忙! 宇宙飛行士の宇宙での業務

今回の有人飛行試験では、NASAの宇宙飛行士であるバリー・ウィルモア氏とスニータ・ウィリアムズ氏の2名がスターライナーに搭乗。

両氏を乗せたスターライナーは、フロリダ州にあるケープカナベラル宇宙軍基地からULA(United Launch Alliance)のロケット「アトラスV」によって打ち上げられた後、ISSに約1週間滞在し、地球に帰還する。

スターライナーが分離されてから、ISSに到達するまでにかかる時間は約24時間。

飛行中、2名の宇宙飛行士はスターライナーの実用化に向けて、いくつかのテスト業務を実行する必要があるが、これが中々のハードワーク。

打ち上げ時におけるスーツや座席などの宇宙飛行士用装備の性能確認から始まり、通信機能、エンジンパフォーマンス、ナビゲーションシステム、生命維持システム等の評価をISSにドッキングするまでの間に実施しなければならない。

ISSにドッキングした後も、緊急事態に安全な避難場所として機能するかどうかの確認として、火災やデブリ衝突に備えた貨物輸送システムの査定をする必要がある。

当然のことながら、査定後も他の宇宙飛行士とともに生活し、約1週間もの間、様々な作業を行う。

ISSから分離後の地球への帰路では、自動操作に戻る前にスターライナーの手動操縦テストを実施。

約6時間後に地球の大気圏へ再突入するのだが、この時時速2万8,000㎞程の速度で突入するため、宇宙飛行士は最大3.5Gの負荷がかかる。

その後、合計5つのパラシュートにより姿勢を制御しながら、最終的にはおよそ時速6.5㎞まで減速し、エアバッグにより衝撃を吸収、着地。

ニューメキシコ州やアリゾナ州、ユタ州などにあるミサイルなどの実験場が着陸地の候補となっている。

新型の宇宙服にも注目

今回のミッションでは、ボーイングが発表した新しい宇宙服「Boeing Blue」が使用される。

シンプルなデザインで構成された「Boeing Blue」の重さは約9㎏。

これまでNASAが使用してきた宇宙服と比較するとおおよそ40%もの軽量化に成功している。

内部が涼しいため、外部の冷却装置を必要とせず、ヘルメットも小型化されているのも特徴的な要素の1つだ。

また、スターライナー内はタブレット操作を必要とするため、手袋(グローブ)部分はタッチスクリーンを触りやすい設計になっており、靴は滑りにくく、通気性にも優れているとのことだ。

Boeing Blueを着用した宇宙飛行士と、バリー・ウィルモア氏、スニータ・ウィリアムズ氏の生活の様子 ©ボーイング

打ち上げ概要と配信情報

スターライナーの有人飛行試験について、打ち上げの概要は以下の通り。

  • 日程:2024年5月7日午前11時34分(日本時間)
  • 発射場:ケープカナベラル宇宙軍基地 第41発射施設
  • 打ち上げロケット:アトラスV(ULA)

打ち上げの様子は、NASAの動画配信サービス「NASA+」でライブ配信される予定だ。

さいごに

いかがでしたか。

スターライナーの有人飛行技術が確立すれば、SpaceXのクルードラゴンと並びアメリカの宇宙船は2枚看板となる。今回の試験が成功した場合、次回はNASAのミッションによる正式な運用となる。

初回のスターライナー1号は早ければ2025年2月に打ち上げ予定で、日本人の宇宙飛行士である油井亀美也(ゆいきみや)氏も搭乗する可能性があるとのことだ。

参考

NASA's Boeing Crew Flight Test Mission Overview

Next up is launch, as Boeing's Starliner takes trek to Cape Canaveral

NASA’s Boeing Crew Flight Test Launch

CST-100 STARLINER

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