2023年9月30日、小型ロケットの開発を起点に宇宙の総合インフラ会社を目指すインターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)の採用イベントが東京にて、開催された。
本記事では、ISTの採用事情並びに今後の成長可能性について、現地にて取材して参りました。
目次
堀江貴文氏が語るISTの将来性
政府が民間のロケット会社を本格的に支援
今回のISTの採用イベントは、ファウンダーである堀江貴文氏の話から始まったのだが、特に注目すべきだったポイントは、ロケット開発の鬼門であった資金調達の問題に一段落がついた点であろう。
実はこのイベントの前日にISTは、SBIRフェーズ3基金と呼ばれる文部科学省主催のイノベーション推進基金に採択されている。
この基金は、宇宙(宇宙輸送等)、核融合、防災分野を対象にスタートアップを資援する制度であるが、宇宙輸送分野の基金総額は350億円、フェーズ3までの合計で1社あたり最大140億円を援助するものだ。
金額の大きさはさることながら、この基金の注目点は、スタートアップの状況を考慮した上でよく設計されている基金であるということだ。
通常は、資金を獲得するための流れとして、成果物を書類等に収めるもしくは実際に打ち上げるロケットをすでに作っている等、成果物ありきで資金が支給されるのだが、SBIRの場合は、採択されてから、すぐに資金が振り込まれるのが特徴である。
この基金に加えて、近年ディープテック領域で盛り上がりを見せている福島県の復興補助金にもISTは採択されており、この補助金を活用して、ロケット部品の主要工場を福島県に建設することを計画している。
政府が本格的に宇宙開発に対して支援を進めている背景を堀江氏は、粘り強く政府に対して、宇宙開発の重要性を伝えてきた結果が実を結んだ。国が真剣に宇宙産業に向き合うといったメッセージがものすごく伝わってきた。と熱い気持ちを述べていたのが印象的であった。
宇宙の時代は必ず来る!?
また、インターネットが生活の必需インフラになったように、宇宙産業でもそのような時代がすぐ近くまで来ていると力強く断言していたのも印象的であった。
そのような状況下の中で、
- 日本の宇宙開発が民間に移っていることが、既定路線になりつつある点
- 立地、良質な人材、資本の集まる市場、技術のサプライチェーンが全て揃っている世界有数の国である点
について言及。これだけ恵まれた国であるなら、宇宙輸送関連企業のライバルがもっと増えて、切磋琢磨できる環境が必要であると日本のロケット市場の課題点についても指摘していた。
堀江氏は、これから立ち上がっていくロケットをたくさん打ち上げると、それまで考えられなかったようなサービスがどんどん展開できるようになって、その結果として宇宙ビジネスというものが大きく伸びてくるのではないかと発言。
IST自体もゆくゆくは、有人ロケットの打ち上げや小惑星の開拓、最終的には、太陽系の外まで行こうというところまで考えている。と未来について楽しげに語っていた。
民間ロケット成功の鍵は、人材採用!?
ISTは現在、2024年度以降の初号機打ち上げを目指して開発中の地球周回軌道上に小型衛星を運ぶ2段式ロケット『ZERO』の実現に向けて、人材の採用に力を入れているとのことだ。
ISTが求める人物像
ISTが求める人物像としては、プロフェッショナリズムとメンバーシップの両面を持ち合わせている人材を採用したいと公言していた。
プロフェッショナリズムとは、プロフェッショナルとしての自負を持ち、自らを高める姿勢や仕事のパフォーマンスにこだわる姿勢を見せること。
メンバーシップとは、個人最適に偏重せずに、組織全体を捉える視点を持って、他者や他部署に貢献する姿勢のことと定義しており、片方だけではなく、この両方のファクターを持ち合わせている人材をISTは求めているとのことだ。
拠点、福利厚生も充実
ロケットベンチャーと聞くと、多くの人が地方勤務や福利厚生の不足を連想し、不安に感じるかもしれないが、ISTでは、各人の能力を最大限に引き出すことを重視しており、そのためにフルフレックス制の導入や、職種に応じたリモートワークの導入も行っている。
他にも住宅手当や出産・育児支援制度等も整っており、福利厚生に関しても充実している。
また、勤務地は北海道大樹町に限らず、職種によっては東京での勤務も選択できるなど、従業員のニーズに合わせた働きやすい環境を積極的に整えているように感じた。
普通の人に来てもらいたい!?
また面白い要素としては、“ものづくりの総合格闘技”であるロケット開発では、宇宙業界出身者だけでなく、自動車や航空など幅広い産業からの参入を必要としているという点であった。
実際、ISTで働いている従業員の出身業界別構成比を確認したところ、航空・宇宙領域出身でISTで働いている人は、全体の2割程であり、8割は異業種の出身者であることがわかる。
製造業以外でもバックオフィス業務や営業職、地上設備のためのプラント業務、素材技術に電子部品、無線系の業務等、設計から製造・打上げ運用までを自社で一気通貫しているからこそ、自社内でたくさんの人材が必要になってくるのが、ISTの特徴である。
代表、稲川氏の発言から読み解くISTの企業文化
SBIRに採択された理由について代表の稲川氏に尋ねてみた
ISTの採用イベント終了時に、代表取締役である稲川貴大氏にSBIR採択に関して、いくつか質問をしてみた。
ー SBIRの採択を獲得するまでに苦労したことはありますか。
審査対象は、技術的な観点、事業的な観点が大丈夫かどうかといった観点で評価されるのですが、私たちはこれまで技術的にも事業的にも実績を積み重ねてきたので、準備はそれなりに大変でしたが、それを誠実に、そして確実に伝えることを意識しました。とのことでした。
ー 今回の採択を踏まえて、大きく変わること並びに今後の流れについて教えてください。
今回の採択を受けて大きく変わることと言えば、やはり開発のスピードが上がることです。
今後の流れとしては、ZEROの打ち上げよりも手前に国の審査があるので、そこを見据えての行動を意識して、スピード感を持って取り組んでいきたいと思っています。
さいごに
いかがでしたか。
今回の記事を通じて、国が民間の宇宙開発に関して、積極的に支援する流れが出来つつあることが理解できるだろう。
ただこのような流れが出来るまで、ISTは事業開始から約10年、前身である「なつのロケット団」の時代を含めると、約18年間、政府の大型の援助無しでロケットの開発に着手し続けてきている。
これは、ロケットに対する情熱や技術はさる事ながら、民間のロケット会社にたくさんのファンが集まっているからであり、「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンに多くの人が共感してきたからこそ為し得たことではないかと推測している。
現在、ZEROの打ち上げに向けて技術開発が進んでいるインターステラテクノロジズ。
今回の補助金を受けて、懸念要素であった資金の問題が一段落を迎え、本格的に人材の採用も加速することが見込まれる。
インターステラテクノロジズはあらゆる職種で求人を応募しているので、この記事を読んだあなたも是非、挑戦してみてはいかがだろうか。
数年後には、自らが関与したロケットが宇宙に飛ぶ瞬間を体験できるだろう。
参考: