ispaceがコマツとコンサル契約 ~デジタルツインを活用して月面建設機の開発へ
©株式会社小松製作所の画像を使用

2024年8月9日、株式会社ispaceが、建設・鉱山機械メーカーである株式会社小松製作所(以下:コマツ)と、宇宙機開発に関するコンサルティング契約を締結したことを発表した。

コマツは2021年より、政府が進める『宇宙無人建設革新技術開発推進事業(宇宙建設革新プロジェクト)に採択されており、将来構想として、月面建設機械の開発を目指している。

本記事では、コマツが取り組む宇宙機開発についてご紹介する。

宇宙建設革新プロジェクト

宇宙建設革新プロジェクトは、各省が連携して宇宙研究開発プロジェクトを推進する「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の一環として2021年に決定された事業だ。

国土交通省と文部科学省が連携して進めており、日本で風水害・火山災害の克服のため培われてきた、国際的にも強みを有するとされている無人で工事を行う“無人化施工技術”を、月面拠点建設へ適用するために技術開発を促進する。

これにより、世界に先駆けて月面拠点建設を進めるための技術の獲得と、獲得した高度な技術を地上事業でも活用して防災力強化、生産性向上、働き方改革等に貢献することも目指しているのだ。

研究開発の内容には、月面建設の無人・自動化、測量、建材の製造、簡易的な施設の建設などがあり、清水建設株式会社、株式会社大林組などの建設会社や有人宇宙システム株式会社などの宇宙企業、大学の研究グループなど、様々なグループが採択されている。

国土交通省 HPから引用

デジタルツインで建設機実現を目指す

月面建設機の実現に向けて

宇宙建設革新プログラムにおけるコマツのテーマは、『デジタルツイン技術を活用した、月面環境に適応する建設機械実現のための研究開発』だ。

デジタルツイン技術とは、現場環境や実機を精度良くサイバー空間に再現する技術で、現物へのアプローチが困難な月面において非常に重要となる。

同社は2021年度のプログラム採択以降、デジタルツインを利用したシミュレータの検証や、シミュレータに対する必要な機能の追加と制度の向上、また実際にシミュレータを活用して月面建設機の具体的な検討などを実施してきた。

2024年度以降は引き続き機能の追加と精度の向上、また月面建設機の具体的な検討を実施するという。ポイントは以下の2つ。

  • 移動、掘削、積み込みを含めた一連の作業を確認できるシミュレータを作成。実際に月面での工事を検証し、月面建設機を実現するために具体的に検討する。
  • 月面の土質調査に向けた、月面で使用可能な部品や素材を使用した小型軽量の掘削試験機の開発をする。
国土交通省 HPから引用

コマツのデジタルツイン技術

コマツは、日本の建設業界の深刻な労働力不足の解消をはじめとしたさまざまな課題をデジタル技術によって解決するために、現場のDX化を進めてきた。

“デジタルツイン”施工もその1つであり、現場の地形をデジタル空間で再現したデジタルツインで分析・シミュレーションし、その結果を現実の現場にフィードバックすることで、安全性と生産性の高い次世代の現場管理を実現している。

デジタルツインの構築に必要な地形・人・機械・材料のデータをデジタル空間につなぐデバイス、およびデジタルデータを分析するアプリケーションは、2021年に他社と共同で設立した株式会社EARTHBRAINで提供。

同年11月に提供を開始した、現場情報を3Dビューアーで可視化する「Smart Construction Dashboard」は、デジタルツインのプラットフォームとして、その後に開発されたデバイスやアプリケーションのデータとも連携し、現在も機能を拡張している。

2022年9月には、AIによる最適な施工計画の策定と管理を短時間で実現する「Smart Construction Simulation」の提供を開始し、現場の安全性・生産性の更なる向上を実現した。

コマツが目指す月面建機

株式会社ispaceのプレスリリースより引用

コマツは、同社がYouTubeで公開している動画にて、デジタルツインによりシミュレーションを重ねている月面建機について紹介している。

同社は、これまで機械の自動化・自律化、効率アップに向けた電動化、排出カーボンの削減などの技術革新で得た知見を活かして、新たなフィールドである月面に挑戦する。

月面建機のフレームには温度変化に強く、輸送コスト削減に繋がる軽量素材を採用し、動力には地上で培った伝統技術を活用。

また、砂地や岩場など不整地の安定性のため、脚周りに新た機構を検討し、そしてICT技術を活用することでステレオカメラやレーダ・ライダなどのセンサにより正確に物体と地形を認識する。

さらに、スマートコンストラクションを発展させて、無人での完全自動自律施工の実現を目指しているのだ。

©株式会社小松製作所

さいごに

いかがでしたか。

株式会社ispaceの代表取締役CEOである袴田武史氏は、以下のようにコメントしている。

「スターダストプログラムの一環となる国土交通省及び文部科学省連携の宇宙無人建設革新技術開発推進事業で、月面等宇宙開発における建設活動に資する研究開発に取り組まれているコマツと、戦略的なコンサルティング契約を締結出来たことを嬉しく思います。

月面建設に必要な無人建設機械の研究開発に、私たちのこれまでの開発実績や知見が活かされ、他業種が共に宇宙開発に挑み、加速していけることを楽しみにしています。」

株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田武史氏

日本、ルクセンブルク、アメリカで活動し、月着陸船や月面探査車の開発、月市場への参入をサポートするためのプロジェクト等を行っており、月面開発に関わる様々な経験を積むispace。

同社の知見と、100年以上にわたり磨かれてきたコマツの建設・機械技術が合わさり、どのような月面建設機械が誕生するのか、非常に楽しみだ。

参考

株式会社ispace プレスリリース

株式会社小松製作所 HP

国土交通省 HP

株式会社小松製作所 YouTube

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