Pale Blue、”世界初”の宇宙実証へ!JAXAのロケットで10月打ち上げ
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2022年10月7日金曜日、内之浦宇宙観測所にて、JAXAとIHIが開発したイプシロンロケット6号機の打ち上げが予定されている。

同ロケットは株式会社QPS研究所が開発した衛星を2基打ち上げる予定で、イプシロンロケット初の商業衛星打ち上げとして注目を集めている。【商業衛星初搭載のイプシロン6号機、打上げ日程を公開!!

しかし、注目すべきはそこだけではない。イプシロンロケット6号機は、宇宙で実証試験を行う機器を搭載した衛星である「小型実証衛星3号機(RAISE-3)」も打ち上げる。このRAISE-3には7つの機器が搭載されるが、その1つが、世界で初めての宇宙実証試験となるのだ。

その機器とは世界最大級のカンファレンスにも出展した、株式会社Pale Blueの開発する水統合式推進システム「KIR」。【世界最大級のカンファレンスに日本の宇宙ベンチャーPale Blueが出展!? 水エンジンの可能性に迫る

本記事では、このPale Blueの宇宙実証について注目していく。

Pale Blueの軌跡

Pale Blueは、東京大学発ベンチャー企業として2020年4月に設立。

安全無毒で環境に優しい「」を推進剤として用いた水エンジンの技術を軸に、持続可能な宇宙開発・利用を実現する。

同社の創業メンバーは東京大学所属時から水エンジンの研究開発をおこなってきた。

水レジストジェットスラスタ」は、アルテミス1号に搭載される「EQUULEUS」にも使用されている水エンジンだ。

このエンジンは水を加熱して得た水蒸気を噴き出すことで推力を得る。2019年には、ISS(国際宇宙ステーション)から放出される小型衛星への搭載を実現した。

Pale Blueでは現在、この水レジストジェットスラスタを含め3種類の水エンジンを開発、提供している。

3種類のうち2つ目は水のプラズマを高速で噴き出す「水イオンスラスタ」。そして3つ目はこの2つを統合し、状況に応じて使い分けることを可能にした今回宇宙実証が行われる「水統合式推進機」である。

同社は、この3種類の水エンジンを、より多くの小型衛星に搭載することを目指している。そこで鍵になるのが、今回の宇宙での実証試験だ。

Pale Blue代表取締役 浅川 純氏
Pale Blue代表取締役 浅川 純氏 ©Pale Blue

ミッション成功で競争力強化へ

世界初の水統合式推進機の宇宙実証。このミッションの目的は、「水を推進剤としたレジストジェットスラスタおよびイオンスラスタの2種類の推進系を一つのコンポーネントに統合した超小型統合推進システムの軌道上実証をおこなうことで、競争力強化をめざす」こと。

推進機は衛星の姿勢や位置制御を行う装置。使用が終了した衛星をスペースデブリ化させないためにも必要不可欠な装置だ。

しかし、小型衛星に推進機を搭載するには難易度が高い上にコストもかかる。そのため、現在ほとんどの小型衛星は推進機を搭載していない。

現在小型衛星の打ち上げは増加しており、伴って、小型衛星の移動・位置制御を行う推進システムの需要も増加している。

Pale Blueは小型衛星製造企業に水エンジンを販売する事業を行っている。その上で「宇宙実績があるかどうか」は重要な要素だ。

今回のミッション成功で商品に対する信頼を獲得し、競争力強化を狙う。

水統合式推進機の価値

今回のPale Blueの水統合式推進機の大きなバリューは2点。手軽さと機能性だ。

はじめに、手軽さは、推進剤として「水」を利用している点にある。

衛星の推進剤は、保管や運用に危険が伴うことが多い。例えば、イオンエンジンに使用されるキセノンは、高圧で貯蔵しなければならないし、化学エンジンに使用されるヒドラジンは毒性が強い。

一方、水は常温常圧で保管可能で、飲めるほど無毒である。また、キセノンなど高額な希少ガスと比べ費用も抑えることができる。

次に、機能性。これは、2つの異なる特徴を持つ水エンジンを統合している点にある。2つのエンジンの特徴は以下の通りだ。

  • 水レジストジェットスラスタ:水蒸気を噴出。
    瞬間的に大きな推進力を出したり、小回りを利かせたりすることができる。燃費はあまり良くない。
  • 水イオンスラスタ:プラズマを噴出。非常に燃費が良く、効率よくエンジンを動かす。推進力を調節することは苦手。

水統合式推進機はこの2つのエンジンを統合したハイブリッドタイプ。状況に応じてエンジンを使い分けることが可能である。

宇宙空間の人工衛星には多種多様な推進能力が要求されるが、小型で軽量であることが求められる小型衛星には、複数のエンジンを搭載する余裕がない。

従って、一つのシステムで複数の推進能力を使い分けられる同エンジンの価値は大きい。

さいごに

この記事では、イプシロンロケット6号の打ち上げにおける、Pale Blueの宇宙実証に注目した。

宇宙実績を得て、競争力強化を狙う同ミッション。宇宙業界の市場規模は、2040年には現在の3倍を超えると言われており、小型衛星の製造需要も今後高まっていくだろう。

それに伴い衛星用エンジンも市場競争が激しくなると考えられるが、Pale Blueの水エンジンはどれだけ存在感を発揮していくのだろうか。今後が楽しみである。

参考:

【株式会社Pale Blue】の水を推進剤とした超小型統合推進システム、JAXAの革新的衛星技術実証3号機に搭載する実証テーマに選定

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