2022年8月22日、「Forbes JAPAN」が開催するプロジェクト「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」が発表。
受賞者30名のうち、なんと宇宙業界から次の3名が選出された。
パリ天文台の宇宙研究者
小仲 美奈 氏
宇宙建築起業家 ElevationSpace 代表取締役CEO
小林 稜平 氏
実業家 サグリ 代表取締役CEO
坪井 俊輔 氏
この記事では、Forbes UNDER 30に選出されたこれからの日本の宇宙産業を担う若き3名について紹介する。
Forbes JAPAN 30 UNDER 30とは
「30 UNDER 30」は、世界80カ国で46のローカル版を発行する経済誌『Forbes』が、グローバルで展開するプロジェクト。
米国で2011年に発足し、これまでにマーク・ザッカーバーグ、リアーナ、ノーベル賞受賞者など、世界に名を残す多種多彩な人材を輩出してきました。日本では2018年から実施され、今回で5回目となった。
Forbes UNDER 30は、ビジネスを始め、スポーツ、サイエンス、エンタテインメントなど、手広く、若き才能に焦点を当てているのが特徴だ。
また、人種やジェンダーの多様性に富んでいるかどうかも同賞では、重要な要素の1つとなる。
Forbes JAPANの審査基準は以下の3点だ。
- 30歳未満(2022年8月25日時点)の日本人、もしくは日本を拠点に活躍している人物
- 現在、グローバルな舞台で活躍をしている/今後、グローバルに活躍することが期待される
- 業界の常識を覆す挑戦をしている
では、本賞に選ばれた3名の逸材について詳細を記載する。
宇宙飛行士を目指しJAXAからパリ天文台へ
まず最初に取り上げるのは、パリ天文台でフランス語を習得しつつ、博士号の取得に向け研究を行っている小仲美奈氏。
1995年生まれで、大学は東北大学工学部機械知能・航空工学科。
同大学大学院修了後、1年間、JAXAでシステムエンジニアとして人工衛星の開発に従事し、現在はJAXAが実施している宇宙飛行士候補選技を通過中とのこと。
そんな彼女が宇宙飛行士を志したきっかけは、JAXAが月探査機の命名権を募集したことだ。
10歳の小仲氏が母親と一緒にこのプログラムに応募した結果、見事当選。
自身の命名した名前「かぐや」が採用されたのだ。
あの有名な月探査機「かぐや」の名付け親が小仲氏だったとは驚きだ。
この出来事をきっかけに「かぐや」の行った月に私も行きたい。と宇宙飛行士に興味を持った彼女は、持ち前の行動力でどんどん道なき道を切り開いていく。
夢を叶えるためには英語が必要と、AFSのプログラムを活用し、ワシントンDC近郊の高校へ留学。
大学時も宇宙開発に関わるトビタテ留学、インターン、国際学会など世界を股にかけて活動。
このような活動を通じて、「人工衛星や宇宙の研究において、日本の存在感は思っていた以上に小さく、中国やイスラエル、インドなどが世界的に意識されている事実を知った。そこから、日本の宇宙開発に対して少し危機感を覚えた。」と供述している。
その後も宇宙業界に関わり続けたいという強い思いから、JAXAに就職。
同法人では、システムエンジニアとして人工衛星の機械系、ロケットとのインターフェイスなどを担当した。
そして現在、フランスで博士課程に進学しながら、夢の宇宙飛行士を目指して挑戦している。
五つ星では足りない“宇宙ホテル”を目指す
続いて紹介するのは、株式会社ElevationSpace 代表取締役CEO、小林稜平氏。
1997年、秋田県で誕生。東北大学で建築学と宇宙工学を専攻し、修士号(工学)を取得。
大学在学中に人工衛星開発プロジェクトや次世代宇宙建築物の研究に従事し、宇宙建築において日本1位、世界2位を獲得した敏腕若手建築士。
その後、宇宙ベンチャーを含む複数社でのインターンを経て、株式会社ElevationSpaceを創業。
「誰もが宇宙で生活できる世界を創る」という小林氏の夢に共感した、東北大学の桒原聡文准教授との共同創業であった。
経済産業省 / JETROが主催する始動 Next Innovator等各種プログラム・コンテスト等で受賞している。
株式会社ElevationSpaceとは
ElevationSpaceは、「誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにする」ことを目指している東北大学発の宇宙スタートアップ。
それを実現する最初のステップが小型宇宙利用・回収プラットフォーム ELS-R。
ELS-Rは、人工衛星内に複数の装置を載せ、宇宙実験や製造等を行うことが可能で、ISSの代わりとなるプラットフォームを目指している。
ISSは、2000年の本格利用開始からこれまで、基礎科学的な実験から創薬などの産業利用まで幅広く利用されてきた。
しかし構造寿命などの関係から2030年末に運用が終了する可能性が高く、宇宙利用を行う場所が無くなると考えられている。
ELS-Rは小型で無人の人工衛星を用いるため、ISSよりも安く、簡単に素早く利用できるのが特徴。
人工衛星に搭載し実験等を行ったペイロードは、運用終了後に地球で回収し、分析等に活用可能である。
ELS-Rで培った技術を基に宇宙ホテルや月面基地等の宇宙建築事業、人や物資等を運ぶ宇宙輸送事業を展開。
軌道上や月・火星に人が持続的に住める未来を創る。
宇宙×農業で子供たちの挑戦を後押し
最後に紹介するのは、サグリ株式会社 代表取締役CEO、坪井俊輔氏。1994年、神奈川県出身。大学は横浜国立大学理工学部機械工学・材料系学科。
自身の高校時代の経験から、「自分の夢を語れなくなるような環境を変えたい」と考えた結果、2016年、大学3年のときに民間初、宇宙教育ベンチャーの株式会社うちゅうを創業。
同年、ルワンダに赴き、教育活動を行う過程で、現地の子どもが各々夢を持ちつつも、卒業後、農業現場で働く現状を知る。
そのような課題を解決するべく、2018年、衛星データを通じて、途上国低所得農家の経営発展を実現し、将来的に子どもが人生の選択肢を増やせる状況を目指し、サグリを創業。
2020年世界経済フォーラムが任命するGlobal Shaperとして選出されるなど様々な賞を受賞している。
サグリ株式会社とは
サグリ株式会社は、2018年6月に兵庫県で創業した「人類と地球の共存を実現する」をビジョンに掲げるスタートアップ。
衛星データ×AIで世界の農業と環境課題の解決を目指す。2021年6月にはリアルテックファンドなどから総額1.55億円の資金調達に成功。
また、ひょうご神戸スタートアップファンドの第一号案件の出資となった。
令和3年度農林水産省 「農林水産技術等大学発ベンチャー」に認定。
他にも近畿経済産業局より、J-Startup-KANSAI、環境省スタートアップ大賞事業構想賞受賞や東洋経済2021すごいベンチャーにも選出されているなど、ありとあらゆるところから注目されている。
代表的なサービスは、農地パトロール調査の「ACTABA(アクタバ)」と作付け調査の「デタバ」。
衛星データをAIを用いて解析することで、農地の状態を調査する農地パトロールや、作付けされている作物を確認する作付け調査の、代替手段を提供する。
さいごに
この記事では、「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」における宇宙業界の受賞者3名を紹介した。
同じ宇宙に関わる才能と言えど、こうしてみると、三者三様の面白さがある。
改めて、世界で最も影響力のある経済誌「Forbes」のForbes JAPAN 30 UNDER 30に宇宙業界から3名も選出されたことは、この業界に従事する人にとって、非常に喜ばしいニュースだ。
その一方で、今回取り上げた小仲氏が仰っていたように、日本の宇宙開発は、世界的に遅れを取っているという客観的事実は、前向きに受け入れ、対策を取っていかなければならないだろう。
引き続き、日本の宇宙産業のキーパーソンであるこの3名の動向に注目していきたいと思う。
参考:
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満30人の日本人」にサグリ代表 坪井俊輔が選出!
2022 WINNER 30 UNDER 30 JAPAN 2022年受賞者を発表