UAE企業主導、総額10億ドルでAI衛星50機を構築へ|検知情報を数秒で通知
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UAEの宇宙企業Marlan Spaceと米仏に拠点を置くLoft Orbitalは2026年9月9日、50機のAI衛星で構成する「Altair-Next Gen」の構築に10億ドルを投じる計画を発表した。

衛星上で観測データを解析し、火災や船舶、重要インフラなどに関する情報を数秒で利用者へ届ける構想である。

本記事では、Altair-Next Genの計画概要や従来の地球観測衛星との違い、参画企業の役割、UAEの宇宙産業に与える意味を解説する。

AI衛星50機を構築、初号機は2026年10月に打ち上げへ

Altair-Next Genは、レーダーや光学などのセンサーと、衛星上でデータを処理する計算機を組み合わせた地球観測衛星コンステレーションである。

Marlan SpaceとLoft Orbitalが主導する企業連合は、Altair-Next Genの構築に向け、フランスを拠点とする事業へ10億ドルを投資する計画である。衛星設備はフランスに設立する専用会社が保有し、衛星はUAE・アブダビで製造する。

初期段階では50機の衛星を整備し、フランスや欧州、UAEの政府機関に加え、各国の企業や公的機関へサービスを提供する計画だ。最初の10機は、UAEの首都アブダビにあるOrbitworksの工場ですでに製造が進み、初号機は2026年10月の打ち上げを予定している。

想定される用途は、船舶や海域の状況把握、山火事の検知と災害対応、港湾や重要インフラの監視などである。観測画像そのものを届けるだけでなく、現場の判断に使える情報まで衛星上で生成する点が計画の中心となる。

Altair-Next Genとは?宇宙で観測データを解析

現場の判断に使える情報まで衛星上で生成

従来の地球観測では、衛星が取得した画像などを地上局へ送り、地上の計算機で処理・解析してから利用者へ提供する流れが一般的である。

大容量の画像を送信するには時間がかかり、衛星が地上局と通信できる時間も限られるため、観測から情報提供までに時間を要する場合がある。

一方、Altair-Next Genは、衛星に搭載したAIが観測データを軌道上で解析し、元の画像すべてではなく、検知した出来事や警報を優先して送信する。

利用者は数秒以内に通知を受け取れるとされており、山火事の発生や船舶の動き、設備の変化など、対応の早さが重要な用途で価値を発揮する仕組みだ。

衛星画像を地上で解析する従来方式と、軌道上AIで解析して必要な情報を数秒で通知するAltair-Next Genの比較図
従来の地球観測と、衛星上のAIでデータを解析するAltair-Next Genの情報提供方式の違い ©Space Connect

50機で観測の空白時間を短縮

地球観測衛星は地球の周囲を移動するため、1機だけでは同じ場所を常に見続けられない。複数の衛星を配置すれば、1機が対象地域から離れた後に別の衛星が近づき、次の観測機会までの待ち時間を短くできる。

Orbitworksは、衛星コンステレーションを50機規模に拡大することで、限られた時間だけ撮影する状態から、必要なときに利用しやすい観測体制へ移行できると説明している。

同じ場所をどの程度の間隔で観測できるかは、衛星を投入する軌道や高度、センサーが一度に観測できる範囲によって決まる。今後は、こうした運用条件が具体化の焦点となる。

AIアプリを選び、複数の利用者で衛星を共有

計画には「AIアプリケーションストア」と呼ばれる仕組みも含まれる。利用者は、複数の企業が開発したAIモデルから目的に合うものを選び、同じ衛星群に搭載された計算機上で動かす。

例えば、山火事を検知したい利用者は火災検知用のAI、船舶の動きを把握したい利用者は船舶監視用のAIを選ぶ。同じ衛星群を複数の目的に使い分けられるため、利用者ごとに専用衛星を一から開発する必要がなくなる。

衛星本体やセンサー、計算機、通信・運用システムを共通の設備として提供し、必要な機能をソフトウェアで追加する事業モデルである。

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各社の役割

Altair-Next Genに参画する企業とその役割は以下の通りである。

Altair-Next Genに参画するMarlan Space、Loft Orbital、Orbitworks、Mistral AI、BlackSky、MaiaSpaceの役割
Altair-Next Genに参画する企業と各社の役割 ©Space Connect

Marlan Space、Loft Orbitalが計画を主導、Orbitworksが衛星を製造

計画全体を主導するのは、Marlan SpaceとLoft Orbitalである。両社が設立したOrbitworksが、衛星の製造や運用を担う。

Marlan Spaceは、UAEを拠点に宇宙関連企業への投資や事業運営を行う企業である。Loft Orbitalとともに企業連合を主導し、UAE側の資本や事業基盤を計画へ結び付ける。

米仏に拠点を置くLoft Orbitalは、顧客の観測装置やソフトウェアを衛星へ搭載し、打ち上げの準備から軌道上での運用までを一括して提供する企業である。これまでに100基を超える搭載機器と20件のAIミッションを軌道上で運用。NASAジェット推進研究所(JPL)との実証では、衛星上で画像と言語を扱うAIを動かし、自然な言葉による指示に対応させた実績もある。

衛星の製造を担うOrbitworksは、Marlan SpaceとLoft Orbitalが2024年に設立した共同事業である。アブダビのKEZAD経済区にある専用施設で、衛星の組み立て、機器の統合、環境試験、打ち上げ準備を行う。

Mistral AI、BlackSky、MaiaSpaceが技術を提供

AI、光学観測、打ち上げの各分野では、Mistral AI、BlackSky、MaiaSpaceがそれぞれの技術やサービスを提供する。

フランスのMistral AIは、センサーの近くで動くAIモデルを提供する。観測内容の解析や自然な言葉による指示への対応を担い、AIアプリケーションストアのサービスにも利用される予定である。

米国のBlackSkyは、高分解能の光学衛星を提供する。同社は低軌道の地球観測衛星と、撮影指示から解析までを扱う情報基盤を運用しており、Altair-Next Genでは光学観測を支える主要企業となる。

フランスのMaiaSpaceは、打ち上げサービスが商用化された段階で利用する優先打ち上げ事業者に選定された。初号機の打ち上げ手段とは分けて考える必要があり、MaiaSpaceによる打ち上げ時期や回数は今後の発表が焦点となる。

UAEは衛星サービスの買い手から売り手へ

Orbitworksは、Altair-Next Genについて、UAEを衛星サービスの「買い手」から「売り手」へ転換する計画と位置付けている。UAEで衛星を製造し、その衛星群から得られる情報を各国の政府や企業へ提供することで、海外向けの衛星サービスを生み出す構想である。

UAEにとって重要なのは、事業会社の所在地だけではなく、衛星の製造を国内で行うことである。製造設備に加え、技術者の技能や知的財産、部品の調達網を国内に蓄積し、UAEで生み出した衛星サービスを海外へ展開する狙いがある。

フランス側にも、専用会社を通じた事業運営、Mistral AIの活用、欧州の供給網、MaiaSpaceによる将来の打ち上げ需要といった効果が見込まれる。Altair-Next Genは、UAEの資本・製造力と、フランスを中心とする欧州の宇宙・AI技術を組み合わせる国際事業といえる。

軌道上AIは地球観測ビジネスをどう変えるのか

Altair-Next Genが示す変化は、衛星画像を販売する事業から、判断に使える情報を素早く提供する事業への移行である。

利用者が必要とするのは、必ずしも大容量の画像ではない。「どこで火災が起きたか」「どの船舶が通常と異なる動きをしたか」「設備に変化があるか」といった答えを短時間で受け取れれば、初動を早められる。

また、軌道上で必要なデータを選別することで、地上へ送るデータ量も抑えられる。限られた通信回線を、緊急性や重要度の高い情報に優先して使えることも、軌道上AIの利点である。

今後の焦点は、50機の整備時期、各衛星のセンサー構成、観測頻度、通知までの時間を実運用でどこまで実現できるかである。AIによる検知結果の精度や、政府・商用利用でのデータ管理も事業の信頼性を左右する。

さいごに

Altair-Next Genは、50機の衛星、軌道上AI、複数のセンサー、AIアプリケーションストアを一つの仕組みにまとめる計画である。10億ドルという投資規模に加え、アブダビでの量産、フランスのAI技術、欧米企業の衛星・打ち上げ技術を組み合わせる点にも特徴がある。

地球観測市場では、画像の細かさや撮影枚数に加え、観測から結果提供までの速さが競争軸になりつつある。2026年10月に予定される初号機の打ち上げは、UAEが衛星製造国として存在感を高められるか、軌道上AIが実際のサービスへ移るかを測る最初の機会となる。

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