
2026年6月17日、宇宙農業の実現を目指す株式会社テラファームは、実業家の4名を株主とするエクイティ調達により、約1億円の資金調達を実施したと発表した。
調達資金は、光合成機能の改善に向けた研究と、農業向けロボットの開発・実証に投じる。
本記事では、テラファームの資金調達の概要と、宇宙農業につながる2つの技術開発について解説する。
テラファームの概要
テラファームは、「宇宙農業の実現」を将来的な目標に掲げるスタートアップである。AI・ロボティクス・バイオを組み合わせ、完全自動化された植物工場システムの開発を目指している。
同社が構想するのは、宇宙空間や月面・火星基地のように外部環境から隔絶された場所でも、安定して作物を生産できる仕組みだ。その実現に向けて、作物の生育環境を最適化する技術、人に代わって作業を担うロボット技術、水・空気・栄養分を循環・再利用する資源管理技術を重視している。
こうした技術は、地球上では作物の生産性向上や農業の担い手不足といった課題への対応にもつながる。テラファームは現在、光合成機能の研究と農業ロボットの開発を中心に、大学との共同研究や農家との実証を進めながら、将来的な宇宙農業に必要な技術基盤の構築に取り組んでいる。


資金調達で推進する宇宙農業研究
テラファームが今回の資金調達により進める研究開発は以下の2つである。
光合成機能の革新
1つ目に、テラファームは、作物の生産性向上につながる光合成機能の改善に向けた研究開発を進めている。

植物の光合成は、光エネルギーを利用して成長に必要な物質をつくり出す働きである。作物の生産性を高めるうえでは、光をどれだけ効率よく利用できるかが重要となる。
一方で、実際の栽培環境では、強すぎる光によるエネルギーの損失や、温度・二酸化炭素濃度などの条件によって、光合成の働きが十分に発揮されない場合がある。こうした点を改善できれば、作物の生産性向上につながる可能性がある。
この課題の解決に向け、同社は、光や二酸化炭素濃度、温度、湿度を精密に制御できる植物工場を研究環境として活用し、光合成機能の革新に向けた研究開発を実施。
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授・矢守研究室と共同研究契約を締結し、同研究室が持つ植物生理学に関する知見と植物工場環境を組み合わせながら、実用化に向けた技術の探索・検証を進めている。
フィジカルAIの農業応用
2つ目に、フィジカルAIの農業応用である。テラファームは農業向けロボットの設計・開発を自社で進め、農作業の自動化に向けた実証に取り組んでいる。人に代わって農作業を担うロボット技術を開発し、将来的には宇宙環境でも自律的に作業できる仕組みの構築を目指す。

農業では、天候や地形、作物ごとの成長状態などが常に変化する。そのため、決められた環境で動く機械とは異なり、周囲の状況を認識しながら作業内容を判断・実行する技術が求められる。
また、農業の担い手不足や高齢化が進む中で、作業負担を軽減する技術への期待も高まっている。
この課題の解決に向け、同社は千葉大学園芸学研究院附属宇宙園芸研究センターと共同研究契約を締結。同大学の試験栽培園を活用し、開発中の農業ロボットを用いた実証実験を進めている。
さらに、複数の農家とも提携協定を締結し、実際の農業現場でデータ収集や技術検証を進めている。研究環境だけでなく、現場での利用を通じて、実運用に耐えうるシステムの構築に取り組んでいる。
宇宙農業の実現に向け進む食料生産技術
宇宙で作物を育てる技術は、すでに国際宇宙ステーションでの栽培実験などを通じて研究が進められている。ただし、現時点では宇宙飛行士の食料を十分にまかなう段階には至っておらず、植物の生育状態の把握、水・肥料・光の管理、病害への対応など、多くの技術課題が残されている。
日本でも、JAXA宇宙探査イノベーションハブは、将来の月・火星での宇宙居住に向けた重点領域として、食料生産や資源・物質循環を掲げている。検討資料では、2040年代に月面で40人規模の長期滞在を目指すシナリオも示されている。
こうした長期滞在を視野に入れると、地球からの補給だけに頼らず、現地で食料を生産する技術の重要性は高まると考えられる。テラファームが進める研究開発は、現在は地球上の農業課題への対応を主眼としながら、将来的には宇宙での持続的な食料生産を支える技術につながる可能性がある。
さいごに
今回の資金調達により、テラファームは大学との共同研究や農家との連携を通じた技術検証を加速させる。
同社の代表取締役 上田翔太氏は以下のように語る。
今回の資金調達を通じ、植物の根幹である光合成の革新と農業ロボットの社会実装を両輪で加速してまいります。地球の農業課題を解決することが、宇宙農業という人類の夢を手繰り寄せる最短経路だと確信しています。東京大学・千葉大学をはじめとするパートナーの皆様、そして「宇宙農業の実現」という想いに共鳴してくださった株主の皆様と力を合わせ、地球から宇宙へ、食の基盤を創造します。
今後は、研究開発の成果をどのように現場で活用できる形へ落とし込んでいくのかが注目される。
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参考
宇宙農業の実現を目指す株式会社テラファームがシードラウンドで約1億円の資金調達を実施(テラファーム, 2026-06-20閲覧)










