YAOKIも搭載!世界初の民間月面着陸に成功したIntuitive Machines のミッション2に注目
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株式会社ダイモンが開発する月面探査車「YAOKI」を搭載したIntuitive Machines社の月面着陸船「Nova-C」の打ち上げが、2025年2月27日9時16分(日本時間)に実施された。

Intuitive Machinesは、2024年2月に民間として世界初となる月面軟着陸に成功した企業である。

本記事ではIntuitive Machinesの概要や、今回のミッション内容についてご紹介する。

Intuitive Machinesとは

事業概要

Intuitive Machinesは「月」を軸としたサービスを開発する企業である。同社は月面活動の商業化を目指しており、主には月輸送サービス月のデータ伝送サービス月のインフラ整備の3つの事業を行っている。

Intuitive Machinesの事業
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初の月面着陸ミッションで民間世界初を達成

2024年2月に実施されたIntuitive Machinesの初の月面着陸ミッション「IM-1」は、Intuitive MachinesがNASAと共同で進める3つの月面ミッションのうちの第1弾であり、NASAの商業月面ペイロードサービス(CLPS)およびアルテミス計画の一環として、NASAの科学観測機器6基を月の南極地域へ輸送することを目的としていた。

ミッションの結果、月面着陸船「Nova-C(愛称:Odysseus)」は、月の南極地域に位置する「マラパート・A・クレーター」付近への着陸に成功。

この成功により、アメリカとしては50年以上ぶりの月面着陸、さらに民間企業としては世界初となる月面軟着陸を達成。さらに、同社の液体メタンおよび液体酸素を使用する推進システムは、深宇宙での運用を通じて実証され、飛行実績を確立。

Intuitive Machinesは、初めての月面着陸ミッションでこれらの重要な成果を達成した。

しかし、全てが順風満帆というわけではない。着陸時には高度測定データを使用できないトラブルが発生し、Odysseusは降下の際に地表からの高度を実際よりも高く認識していたため予定よりも速い下降速度・水平速度となり、最終的に横転した状態で着陸。

それでも、太陽光発電やデータの送受信にも成功し、搭載した観測機器の科学データや画像を地球に送信した。

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YAOKIも搭載!IM-2での月面ミッション

IM-2 ミッション概要

Intuitive Machinesの2回目となる月面着陸ミッション「IM-2」は、人類が月でどのように生活し、活動できるかを探る重要なミッションとなる。将来的に月やさらなる宇宙探査を進めるうえで、持続可能なインフラの構築には水資源の確保が不可欠だ。IM-2は、その水資源の存在可能性の調査に貢献する。

今回のミッションで使用される着陸船は、IM-1でのOdysseusと同じNova-Cの「Athena」。Odysseusの設計をベースにしながらも、光(レーザー)を用いた高精度な距離測定技術であるLiDARを統合し、機械学習やAIを活用した高度な自律着陸システムを搭載するなど、大幅な改良が施されている。

着陸地点は、月の南極から約160kmの距離に位置する「ムートン山」に設定された。着陸後はおよそ10日間にわたって月面移動や資源探査、地下物質の分析などの技術実証を行う予定である。

Athenaは、通信事業を展開している「Nokia」の産業研究機関(Nokia Bell Labs)が開発する4G/LTE通信システムを活用し、月面でのミッションを遂行する探査機とのデータ通信を円滑に行う。さらに、地球外のデータセンターとしては世界初となるLonestar社の「Freedom」にデータを保存し、新たな通信・データ管理の技術も試みられる。

また、ミッション開始5日後には株式会社ダイモンの小型月面探査車「YAOKI」を展開し、探査エリアをさらに拡大していく予定だ。

水検出技術も?月面ミッションに注目

Athenaは月面にて安定状態を確立した後、以下3つのミッションを展開する。

  • PRIME-1(NASA)
  • Micro Nova Hopper(Intuitive Machines)
  • MAPP(Lunar Outpost)

PRIME-1(NASA)

NASAのPRIME-1(Polar Resource Ice Mining Experiment-1)は、着陸地点の月面をTRIDENTドリルによって掘削し、表土を月面に運び、MSOLO質量分析計を使用して揮発性物質の存在を調べる実験である。

TRIDENTドリルは、月面の土壌つまりレゴリスを地表ら約1m下まで抽出し、MSOLO質量分析計はその採集したサンプルから放出されたガスの水分やその他の成分の組成を分析。加えて、地下土壌の温度情報や月南極域における土壌の機械的特性についても調査する。

これにより、月の環境と地下資源をより深く理解し、有人月面探査に役立てる方針だ。

Micro Nova Hopper(Intuitive Machines)

Intuitive Machinesの月面探査機「Micro Nova Hopper(愛称:Grace)」は、最大10kgの科学ペイロードを搭載可能。ホップ移動を行い、初期着陸地点から最大25kmの範囲まで月面を探査できる。

この探査機で特に注目すべき点は、太陽光が当たることのない永久影領域に進入し、かつ脱出可能であることだ。

IM-2においても、着陸地点から約400m離れている恒久的に影に覆われた小さなクレーターの探査を計画。太陽光が一度も当たったことのないクレーターの探査は世界初であり、このミッションにより、月の永久影領域の環境や水資源調査の促進が期待されている。

また、GraceにはNokia Bell Labsの月面通信システムLunar Surface Communications System(LSCS)が搭載されており、Athenaと通信を接続。これにより、探査で得られたデータを伝送する。

MAPP(Lunar Outpost)

Lunar Putpostの自律型の月面探査車「MAPP」は、GPS不要のナビゲーションシステムを搭載している。視覚データとセンサーを活用して障害物を回避しながら自律的に移動するため、過酷な月面環境でも安定した探査が可能だ。

さらに、特殊設計のホイールを採用しており、険しい地形でも高精度に移動可能。これまで到達できなかった地域への探査が期待されている。

また、MAPPにはLSCSが搭載されており、Micro Nova Hopper同様、探査で得られたデータはAthenaに伝送される。

MAPPは地球外で運用される商業ローバーとしては世界初。月面での資源探査と商業活動の先駆けとなる重要な一歩を踏み出し、今後の宇宙開発の新たな時代を切り開いていくだろう。

他にも様々な技術を実証!

IM-2では、上記でご紹介した3つ以外にも、様々な技術が実証される予定だ。

例えば、Columbia Sportswearは独自のアウトドア技術を活用して、-133℃から121℃という過酷な宇宙環境からAthenaを保護する。

また、複数のペイロードを目的の場所まで輸送するライドシェアミッションも実施される予定だ。

©Intuitive Machines

さいごに

いかがでしたか。

IM-2は、単なる月面着陸の成功を超え、月面での持続可能な探査や資源利用の可能性を広げる重要なミッションとなる。

このミッションでは、NASAのPRIME-1をはじめ、Micro Nova Hopper、Lunar OutpostのMAPPなど、月面での探査技術を向上させる最新のシステムが導入される。また、Nokiaの4G/LTE通信システムやLonestar社の地球外データセンターなど、将来の月面インフラ構築に不可欠な技術も試験される予定だ。

特に、株式会社ダイモンが開発した小型月面探査車「YAOKI」の展開は、日本の民間企業が月探査に本格的に関与する大きな一歩となる。YAOKIが実際に月面でどのような成果を挙げるのか、そして将来的な月面探査への貢献がどのように発展するのか、注目が集まる。

IM-2ミッションは、人類が月で活動する未来を現実のものとするための基盤づくりを進めるものであり、成功すれば今後の月面探査の可能性を大きく広げるだろう。今後の打ち上げと月面での運用に期待が高まる。

参考

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