
2026年11月5日(木)・6日(金)、東京大学 大講堂(安田講堂)とオンラインで「宇宙×不動産カンファレンス2026(SPACE REALTY CONFERENCE 2026、以下SRC2026)」が開催される。
本記事では、運営を担う株式会社WHERE(以下、WHERE)の代表取締役CEO・阿久津岳生氏への取材を交え、イベントの概要と注目ポイントを紹介する。
SRC2026とは
SRC2026は、衛星データやAIを不動産ビジネスにどう生かし、新たな事業につなげるかを議論するカンファレンスである。「宇宙ビジネスと不動産ビジネスの新たな融合。5000年続いた不動産産業を、宇宙とAIで変革する」をテーマに掲げる。

初開催のSRC2025には1,350名が申し込み、宇宙・不動産を中心に業界の垣根を越えた人々が集った。主催者が公表したアンケートでは回答者の約95%が「次回も参加したい」と回答。
2回目となる今年は、会場を東京大学 大講堂(安田講堂)に移し、会期を2日間に拡大する。


運営を担うWHEREは、このテーマに事業として取り組む企業だ。同社が開発・提供する不動産ツール「WHERE」は、衛星データとAIを活用して土地や物件の探索を支援。三井不動産、三菱地所、福岡地所などに導入され、2026年6月時点で導入社数は200社を突破している。
こうした実務での活用を踏まえ、SRC2026では、実際の不動産取引につながったデータ活用や、導入現場での工夫も取り上げる。
さらに、元JAXA宇宙飛行士の古川聡氏らによる講演、月面ビジネスの事業性を問う議論、大学発スタートアップ対抗「U-1 STARTUP」なども予定。宇宙ビジネスの次の市場を探るとともに、新産業の創出に挑む大学発企業の技術や事業構想にも触れられる。

SRC2026は無料で参加でき、会場での講演や討論のほか、企業によるブース出展、登壇者・スポンサー・参加者が交流する公式アフターパーティー「Gravity Night」も予定されている。
カンファレンスはオンライン視聴にも対応し、1日だけ、または一部のセッションのみの参加も可能。新規事業や他社との連携に向けた情報収集など、目的に応じて参加するセッションを選ぶことができる。

SRC2026の注目セッション
セッションの企画にあたり、阿久津氏が重視するのは、専門的な内容を専門外の参加者にも理解できる形で伝えることだ。一方、「エンタメだけで終わらせない」とも語り、わかりやすさと議論の中身の両立を目指している。
衛星データとAIが、不動産取引につながるまで
「宇宙データが動かすリアルな不動産取引〜最新取引事例を読み解く〜」では、衛星データとAIの活用が実際の売買や賃貸取引につながった最新事例を取り上げる。不動産の「見えない価値」を可視化する技術が、取引の現場でどう生かされているのかを掘り下げる。
WHEREのCOO・西村仁氏らが登壇し、成功事例の裏側にある試行錯誤や、取引の実現につながった工夫を語る予定だ。
衛星データとAIは、不動産業界にどのような影響を与え、事業者の競争力にどうつながるのか。現場を知る登壇者の「生の声」や「本音」を通じて、不動産ビジネスにおける宇宙データ活用の可能性を探る。
元JAXA宇宙飛行士・古川聡氏とJAXA幹部が語る、宇宙利用の可能性
11月5日のオープニングでは、元JAXA宇宙飛行士で杏林大学医学部特任教授の古川聡氏が、基調講演「宇宙の視点 新たな可能性」に登壇する。
古川氏は国際宇宙ステーション(ISS)に2度長期滞在し、累計366日超を宇宙で過ごした。滞在中には、微小重力環境を利用した実験や有人月探査に向けた技術実証などに携わっており、今回の講演では、こうした経験を持つ古川氏が宇宙の新たな可能性について語る。
続くVISION SPEECHでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促進部長の岩本裕之氏が「暮らしの中の宇宙ビジネス ~私たちの生活を支える宇宙利用~」をテーマに講演。
宇宙での実体験と、私たちの暮らしを支える宇宙利用という2つの視点から、宇宙技術の可能性について理解を深める機会となるだろう。「月面師たち」で、月面ビジネスの事業性に踏み込む
月面ビジネスは、本当に成り立つのか。特別セッション「月面師たち〜誰が月の土地を動かすのか〜」では、月面開発や宇宙法の専門的な議論に、地上のビジネスを評価する視点も加える。
小説『地面師たち』の著者・新庄耕氏が進行役を務め、宇宙法を専門とするTMI総合法律事務所の新谷美保子氏、アクティビスト投資家の田端信太郎氏らが登壇する予定だ。
阿久津氏は、田端氏に、月面ビジネスが実際に成り立つのかを辛口で問いかける役割を期待しているという。専門家の構想や説明に、投資家がどのような疑問を投げかけるのか。技術や法律とともに、事業としての現実性に踏み込む議論が見どころとなる。
初開催の「U-1 STARTUP」にも注目
11月6日には、大学発スタートアップによる大学対抗ピッチ大会「U-1 STARTUP」の決勝戦が初開催される。
経済産業省の調査によると、国内の大学発ベンチャーは2025年10月時点で6,220社に達している。本大会は、こうした大学発スタートアップの技術や事業の可能性に注目し、企業や投資家との新たな接点を生み出すことを目指す企画だ。
「未来のインフラをつくる」をテーマに、AI、宇宙・エネルギー、不動産の3領域を軸として選考を実施。予選を通過した8大学のスタートアップ8社が決勝戦に臨む。

大学発スタートアップの成長性について、阿久津氏は次のように語る。
大学発スタートアップは、一般的なスタートアップと比較して倒産リスクが54%低く、IPO(新規株式公開)に至る可能性が108倍に上るというデータもあります。
そうした成長が期待される大学発スタートアップが一堂に会するのが、U-1 STARTUPです。
株式会社WHERE 代表取締役CEO 阿久津岳生氏
企業や投資家にとっては、各社の技術や事業構想を一度に知り、将来の事業連携先や投資先となり得る企業と出会える機会となる。
また、大学対抗という形式も本大会の特徴である。阿久津氏は取材の中で、箱根駅伝や大学野球のように、大学対抗にすることで多くの人が応援しやすくなる点に着目したと説明した。
出身大学やゆかりのある大学に注目したり、各社の発表を聞いて応援したい企業を見つけたりと、大学対抗ならではの楽しみ方がある。大学発スタートアップの挑戦をより身近に感じ、その成長を応援するきっかけとなりそうだ。さいごに
SRC2026が目指すのは、「宇宙×不動産」という新たな市場の創出である。
主催するWHERE代表の阿久津氏は、カンファレンスに込めた思いをこう語る。
不動産取引は約5000年にわたり、人脈に頼る構造が続いてきました。そこに宇宙とAIの技術を掛け合わせ、この構造を大きく変えていきたい。私たちが目指しているのは、『宇宙×不動産』という新しい市場をつくることです
株式会社WHERE 代表取締役CEO 阿久津岳生氏
不動産・宇宙業界に加え、地図・データ解析、金融・保険など、幅広い分野の企業や専門家が集まるSRC2026。業界の垣根を越えた交流から、どのような新しい事業や連携が生まれるのか注目したい。

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