スペースシフトらが開発!気象情報から撮影場所や最適な衛星を自動で判断する世界初のシステムとは
©Space Connect株式会社

2025年3月21日、株式会社スペースシフト、株式会社ハレックス、および株式会社Tellusは、「気象・災害情報」をトリガーに、衛星が自動で撮影が必要な場所を判断する「生成AIタスキング(撮影要求)システム」の実証実験を同年1月に行い、衛星画像データの取得に成功したことを発表した。

このシステムは、気象情報と連動した生成AI衛星自動タスキングシステムとしては世界初だという。

本記事では、同システムの仕組みや必要性、そしてどのようにこのシステムが生まれたのかご紹介する。

自動タスキングシステムの仕組み

スペースシフトらが今回発表したシステムは、気象情報の内容から生成AIアルゴリズムが自動的にAOI(関心領域)指定を行い、観測を飛躍的に効率化する画期的な仕組みである。

このシステムでは、気象・災害情報を取得してから衛星画像を撮影するまで、以下の4段階に分けられる。

  • 災害警報メールの受信
  • 情報抽出・観測が必要な場所(関心領域:AOI)の選定
  • データ探索・撮影条件の取得
  • 撮影要求(タスキング)・実行

まず、災害警報メールを受信した後、生成AIがメールの内容から観測が必要な場所(関心領域:AOI)などの情報を生成

その後、場所や日時を条件に、日本発の衛星データプラットフォームであるTellusを利用して過去データを検索し、撮影するための条件を取得。

それらの結果をもとに衛星に画像撮影を指示(タスキング)し、実行させる。

システムの有用性とプロジェクト背景

このシステムが必要な理由

現在、観測衛星データの利用ユーザは、自身で撮影が必要な場所・日時を判断し、複数の衛星データプロバイダーに見積もりを依頼。そして多種の衛星から最適な商用衛星を選択し、当該衛星による撮影、地上への送信、固有システムでのデータ処理が行われてから利用可能な衛星データを取得する。

そのため、衛星データが必要となってから実際に取得するまでには多くの時間、コスト、ノウハウが必要とされている。

しかし、特に大規模災害時においては迅速な衛星観測を行うことが非常に重要だ。

気象情報をもとに自動で撮影が必要な場所をピックアップし、さらに自動で衛星画像撮影、データの取得までできれば、いつ災害が起ころうと、衛星画像により迅速に被害状況を把握して救助に役立てたり、河川氾濫や土砂災害等さらなる災害を予測して被害拡大を抑えたりすることができる。

今回の実証は、その実現可能性を示しているのである。

異業種コラボによる価値創出の裏側

このプロジェクトは、スペースシフトが展開するビジネス共創プログラムSateLab(サテラボ)の一環として、同社とNTTデータグループ唯一の民間気象会社であるハレックスが2024年4月に締結した業務提携に基づき企画段階から緊密に連携して推進してきた。

ハレックスは2023年4月に地理情報システム(GIS)上で様々な気象データを活用できる次世代気象データAPI「HalexSmart!」をリリースしており、様々な顧客の課題を解決するための気象データラインナップ拡大を進めている。

また、スペースシフトは独自の衛星データ解析技術の活用分野拡大を目指しており、業務提携に向けて協議を重ねている。

その結果、特に防災分野および農業分野において、両社が保有するデータと解析技術が補完しあうことでより精度の高いデータを生成し、そして顧客がそのデータを活用できるソリューションを開発、提供することを目的とした研究開発を行うことで合意。

そして、今回の実証に向けてハレックスが気象情報の提供や専門的知見を提供し、スペースシフトがAmazon Web Services(AWS)が提供する生成AIサービス「Amazon Bedrock」を使用して実証実験システムを開発。

これにより、気象情報の内容から生成AIアルゴリズムが自動的にAOI(関心領域)指定を行い、観測を飛躍的に効率化する画期的な仕組みを実現している。

スペースシフトはアマゾンウェブサービス(AWS)が展開するオンラインストア「AWS Marketplace」で世界で初めてSAR画像を解析するサービスを公開するなど、AWSの活用を進めている。

また、Tellusは経済産業省の事業「多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発」の一環として開発を行っているオンデマンドタスキングシステムを提供。

自動で観測要求を整理して複数衛星のデータから最適な衛星を選択するシステムにより、ユーザーが使用する衛星を比較検討する時間を省き、即時性のある画像取得を実現しているのだ。

実証成果~2週間以内に3度の撮影を達成!

2025年1月から2月にかけて実施されたシステムの実証実験では、スペースシフトが開発した生成AIアルゴリズムにより、ハレックスから発信する積雪に関する気象警報アラート情報から観測場所を自動決定し、Tellusのオンデマンドタスキングシステムを通じて衛星への撮影要求までを行うことに成功。

1月20日には株式会社パスコの衛星「ASNARO」による富士山地域での初の撮影に成功し、その後も同衛星および株式会社アクセルスペースの「GRUS」と、2種類の光学衛星により日本各地での撮影を実現している。

また、今回の実証では担当者による確認を行っているため半自動で実施されたが、気象情報をトリガーとして衛星観測を行うまで完全に自動化することも可能だという。

左:本実証にてASNARO-1により撮像された富士山の画像(撮影日2025年1月20日)Credit:©NEC Corporation, Distributed by PASCO CORPORATIO 右:図2:本実証にてGRUSにより撮像された北海道根室市風蓮湖付近の画像(撮影日2025年2月2日)Credit:©Axelspace
左:本実証にてASNARO-1により撮像された富士山の画像(撮影日2025年1月20日)Credit:©NEC Corporation, Distributed by PASCO CORPORATIO
右:本実証にてGRUSにより撮像された北海道根室市風蓮湖付近の画像(撮影日2025年2月2日)Credit:©Axelspace
株式会社スペースシフトのPRTIMESより引用)

今後の展開

スペースシフト、ハレックス、Tellusは今回の実証実験の成功を踏まえ、今後は実用化に向けた取り組みを進めていくとのこと。

気象予測と連動した衛星観測の対象地域の拡大や、AI解析技術の高度化、気象情報以外のトリガー情報による実証を進め、防災・減災分野での実用的なソリューションとして展開していく予定だという。

同社らの取り組みにより、今後は衛星データがより一層、防災・減災などの社会課題に貢献するだろう。

さいごに

いかがでしたか。

衛星データ解析等の宇宙技術は、今後どのように社会実装していくかが非常に重要な課題であるだろう。

今回の取り組みのように、宇宙企業同士や異業種の企業との連携が促進されることで、社会に新たな価値が生まれていく。

今後もどのようなプロダクトが誕生し、どのように社会課題を解決していくのか、同社らの活躍に注目である。

また、スペースシフトは現在、複数のポジションで人材を募集している。同社での働き方に興味のある方は、ぜひこちらをチェックいただきたい。

スぺジョブ

参考

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