人工衛星ビジネスが熱い
急成長する宇宙ビジネスの中でも、特に注目度が高いのが、人工衛星による通信事業だ。電気自動車テスラ等で有名なイーロン・マスクが経営する宇宙企業SpaceXは、Starlinkというサービスを提供している。
Starlinkは数千機の人工衛星で連携(コンステレーション)することで、地球全体に人工衛星通信網を常時提供することを目指している。初めて聞くとSFの世界の話のように思えるが、既に2600機以上もの人工衛星による通信網を築いており、32ヵ国、50万人ものユーザーがいるのだ。
価格はスタンダードアンテナで初期費用499ドル+月99ドル。50万人が使ったとすると、既に約2.5億ドルの初期費用と、月5000万ドルの売上となる。(より高額なプレミアムプランも用意されており、これ以上の売上となる可能性もある)なお、この通信網の完成には、10年間で総額100億ドルに及ぶとされている。
実は電波の届いてない地域は多い
人工衛星による通信サービスの出発点は、まだインターネットに繋がってない人にインターネットを繋ぐこと。地球上では未だ数十億人もの人々が、インターネットの繋がらない地域に居住しており、情報格差が生じている。
これまで通り、インターネットケーブルを這わしたり、一定の距離間隔で基地局を設置していても、途方もない時間と費用が必要となる。どうせ時間とお金をかけるなら、人工衛星通信網を作ろうということだ。
人工衛星だからできる大きなメリット
これまで通りの地上での通信網と比較して、人工衛星通信網は以下のようなメリットがある。
- 山や海など、地上通信網の設置が難しい場所でも通信できる
- 飛行機内など地上通信網では届かない高度でも通信できる
- 海外旅行など国境を越えても同じ通信サービスを使い続けられる
- 地上での地震等の災害時も影響を受けにくい
通信サービスの競争は始まっている
これだけ可能性のある人工衛星通信網ビジネスに取り組むのは、当然SpaceXのみではない。Amazonや、ソフトバンクが出資するOne web、NTTとスカパーJSATも参入を発表した。
AmazonはProject Kuiperと名付け人工衛星通信網を構築する計画だ。この通信網を築くために5年で83回のロケット打ち上げにより、3236機の人工衛星の過半数の打ち上げを計画している。
なお、本プロジェクトの為に、こんな求人情報もあるので、宇宙産業への転職を検討している方は、ぜひチェックしていただきたい。
https://www.amazon.jobs/jp/teams/projectkuiper
最後に
今後、世界中でさらに多くの企業がこのサービスに参入し、各社が大量の人工衛星を製造し打ち上げることが予測される。
日本の製造業がその需要を獲得できるのか。また日本のロケット会社やスペースポートが打ち上げを受注できるのか。今後のビジネスチャンスとして非常に大きい分野となっているのは間違い無いだろう。
参考:
Elon Musk reportedly extends timeline for potential Starlink IPO
With Block 5, SpaceX to increase launch cadence and lower prices