国内初の海外資本によるロケット打上げ!jtSPACEが北海道大樹町から宇宙へ
©Space Connect

台湾のロケット開発企業TiSPACEの日本法人であるjtSPACE株式会社は、2025年7月6日に、北海道大樹町の民間宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」からハイブリッドロケット「VP01」の打上げを予定している。

本記事では、TiSPACEおよびjtSPACEの事業について紹介するとともに、今回の打上げの注目ポイントを解説する。

jtSPACEについて

jtSPACEの事業概要

jtSPACE株式会社は、台湾のロケット開発企業であるTiSPACEグループの日本法人として、2023年に設立されたスタートアップである。

北海道石狩市に本社を置き、TiSPACEグループ独自のハイブリッドロケット推進技術を基盤に、ロケットの開発・製造から打上げまでを一貫して手がける宇宙輸送システムを開発している。

親会社であるTiSPACEは、世界各地から24時間体制で対応できる“オンデマンド型”宇宙輸送サービスの実現を目指す、台湾発の宇宙新興企業。

小型衛星の商業打ち上げ市場を主要ターゲットとし、目的地(軌道)や打上げスケジュールの要件に応じて柔軟に対応できる輸送体制を構築している。

TiSPACEはこのサービスの実現に向け、国外に法人を設立し、ロケットの開発および打上げ試験を各地で進めている。

現在、台湾では国内での打上げ実現に関する法整備の遅れのため、自国内での打上げが困難な状況が続いており、この課題を克服するための事業展開の一環として、jtSPACEの活動が位置付けられている。

TiSPACEグループ 過去の打上げ実績

TiSPACEグループはこれまで、jtSPACE以外にもアメリカのFormosan SpaceやオーストラリアのAtSPACEなどを設立し、国際展開を進めてきた。

中でもAtSPACEは、オーストラリアにて3機のロケット打上げ試験を試みた。

1度目の打上げは2021年。使用されたのは、地球を周回する軌道には到達しない弾道飛行型のサブオービタルロケット「Hapith-Ⅰ」である。民間企業のロケット打上げ試験として注目を集めたが、発射直後に機体が燃焼し、宇宙への到達には至らなかった。

その後、2022年には2機のロケットが準備され、燃料充填まで進んだが、いずれも打上げ直前に燃料漏れが発生。発射は中止される結果となった。

一連の試験は技術的課題を残しつつも、TiSPACEグループは将来的な商業打上げ体制の確立に向けて、グローバルに運用ノウハウを積み上げている。

大樹町・北海道スペースポートでの打上げ試験に注目

試験目的と注目ポイント

TiSPACEグループの日本法人であるjtSPACEは2025年7月6日に、北海道大樹町に位置する民間宇宙港「北海道スペースポート」から、自社で開発したサブオービタルロケット「VP01」の打上げ試験を実施する。

この打上げの目的は、「VP01」を高度約100㎞に到達させてロケットの各性能を確認し、将来の衛星打上げロケット開発に必要なデータを取得することにある。

注目ポイントは以下の2つ。

HOSPOで4年ぶり!高度100㎞級の商業打上げ

注目すべきポイントの1つ目は、北海道スペースポート(HOSPO)から高度100km級の宇宙空間を目指すロケットの打上げが、約4年ぶりに行われるという点だ。

前回この高度への到達に成功したのは、インターステラテクノロジズ(IST)によって2021年7月に打ち上げられた「MOMO6号機」である。

MOMOシリーズは「VP01」と同様に、地球を周回する軌道には到達しない弾道飛行型のサブオービタルロケット。6号機では宇宙空間の境界とされる高度100km近くまで到達し、注目を集めた。

しかし、それ以降、HOSPOは商業宇宙港として整備が進められた一方で、宇宙空間への到達を目指す民間ロケットの打上げは実施されていない。今回の「VP01」の打上げは、HOSPOにとって久々の節目となる。

この打上げは、HOSPOが民間ロケットの実運用に対応できる宇宙港として、実績を積み上げるための重要な一歩となるだろう。

jtSPACEのサブオービタル型ハイブリッドロケット「VP01」の打上げを実施する北海道スペースポートの将来イメージ ©SPACE COTAN株式会社
北海道スペースポートの将来イメージ ©SPACE COTAN株式会社

国内初の海外資本によるロケット打上げ

2つ目は、今回の打上げ試験が、国内初の“海外資本によるロケット打上げ”であるという点だ。

海外資本による日本でのロケット打上げは、日本にとって新たな経済機会を生み出すとともに、宇宙産業の国際競争力を高める重要なステップとなる。

具体的には、日本での打上げ機会が増加することで、打上げ関連のインフラ整備や地上支援業務、法的コンサルティング、宿泊・交通といった地域経済への波及効果が期待される。さらに、海外企業と国内企業の技術・ノウハウの交流が進むことで、日本の宇宙産業全体の国際競争力強化にもつながる。

しかしその一方で、海外企業が日本でロケットを打ち上げる際には、安全基準、電波利用、ロケットの輸送といった事項において日本の法制度を正確に理解し、クリアするという高いハードルが存在する。

今回の打上げは、海外宇宙企業がそのハードルを乗り越え、日本を“アジアの打上げ拠点”として活用する可能性を示すモデルケースとなり得る。今後、自国外でのロケット打上げを目指す海外企業が日本に注目する契機となるだろう。

打上げ概要

今回の打上げ試験の概要は以下の通り。

当日は、打上げの様子を見られるよう、HOSPOの滑走路が開放されるとのこと。詳細はHOSPOの公式ウェブサイトをご確認いただきたい。

  • 打上げ予定日 :2025年7月6日(日)
  • 打上げ予定時間帯:6:00-7:30、10:50-12:00、16:00-17:00のうちいずれの時間帯(日本標準時)
  • 打上げ予備日 :7月12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日)、26日(土)、27日(日)
  • 打上げ場所 :北海道スペースポート Launch Complex 1 - Launch Pad 12(LC1-LP12)
  • 打上げ方位角 :東南東
  • 打上げ目的 :高度100km以上の宇宙空間到達、ロケットの全システムの動作検証
jtSPACEが開発する2段式サブオービタルロケット「VP01」のイメージ
2段式サブオービタルロケット「VP01」のイメージ (全長12m、直径0.6m、重量1.4t, SPACE COTAN株式会社の PRTIMESから引用)

さいごに

「VP01」 の打上げ試験が成功すれば、jtSPACEはIST、スペースワンに続き、“宇宙への到達を果たした、日本国内3社目の民間ロケット開発企業”として名を刻むことになる。

同社にとって、今回の挑戦は、台湾国外の宇宙インフラを活用し、国際展開を進めていく上での重要な第一歩となるだろう。

また同時に、HOSPOという民間開放型の宇宙港が活用されることで、日本がアジアにおける打上げ拠点としての地位を確立していく可能性も高まっていく。

jtSPACEの挑戦が、日本を“アジアにおけるロケット打上げのハブ”へと押し上げる一歩となるか、注目が集まっている。

参考

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