
民間企業による月面輸送ビジネスを目指す株式会社ispace(以下、ispace)は、現在、複数の月面ミッションを段階的に進めている。
本記事では、ispaceによるこれまでと今後のミッションについて、概要や打ち上げスケジュールを整理する。
目次
直近の打ち上げ予定
ispaceによる次の打ち上げ予定は、Mission3(TEAM DRAPER Commercial Mission 1)である。2027年の打ち上げが計画されており、NASAの商業月面輸送プログラム(CLPS)に関連する商業ミッションとして実施される予定となっている。
このミッションでは、最大約300kgのペイロードを輸送可能なAPEX 1.0ランダーが使用され、月の裏側の南極付近への着陸が計画されている。複数の顧客機器の輸送に加え、将来のミッションに向けた通信基盤の整備も視野に入れた計画であり、ispaceの月面輸送事業において重要なステップとなる。

ispaceの打ち上げスケジュール
ispaceの打ち上げスケジュールと、各ミッションの概要は以下の通りである。

Mission1
Mission1は、ispaceにとって初の月面着陸を目指した実証ミッションである。月周回軌道への投入までは成功したが、着陸フェーズにおいて高度推定に関する問題が発生し、最終的に軟着陸は達成されなかった。
一方で、深宇宙航行、通信、運用など多くの技術的成果が得られたことから、Mission1は月面輸送技術の基盤を構築する重要な実証ミッションとなり、後続のMission2以降へと知見が引き継がれた。
- 打ち上げ日:2022年12月11日
- 打ち上げ時刻:07:38 UTC/16:38 JST
- ロケット:Falcon 9
- 打ち上げ場所:ケープカナベラル SLC-40
Mission2
Mission2は、Mission1で確認された課題を踏まえ、改良型ランダーによる月面着陸を目指して実施されたミッションである。Mission1の運用データをもとに、航法やシステム面の見直しが行われ、より確実な着陸の実現が期待されていた。
しかし、Mission2においても最終的な月面軟着陸の達成には至らず、計画どおりの成果を得ることはできなかった。結果として、ispaceの月面着陸挑戦は次のミッションへ持ち越される形となった。
- 打ち上げ日:2025年1月15日
- 打ち上げ時刻:06:11:39 UTC/15:11:39 JST
- ロケット:Falcon 9
- 打ち上げ場所:ケネディ宇宙センター LC-39A
Mission3
Mission3は、チャールズ・スターク・ドレイパー研究所が主導するチーム“Team Draper”のCommercial Mission 1として実施される計画である。NASAの商業月面輸送プログラム(CLPS)のTask Order CP-12に採択されており、複数の顧客の機器を月面へ輸送する商業ミッションとして位置付けられている。
使用されるランダーはAPEX 1.0で、最大約300kgのペイロード輸送能力を持つ。着陸地点は、将来の資源探査や月面活動の拠点候補として注目されている月の裏側の南極付近が予定されている。
また、このミッションでは月周回軌道にリレー通信衛星を展開する構想が示されており、ミッション3以降の顧客に向けたデータサービス提供を見据えた通信インフラの実証も計画されている。ペイロード顧客との契約総額は現時点で約127億円であり、複数の国や機関が参加する国際的なプロジェクトとなっている。
- ランダ―製造国:アメリカ
- 打ち上げ予定:2027年〜
Mission4
Mission4は、新型の「Series 3 Lander」が使用される計画で、従来のランダーより大型化され、より多くの機器を輸送できる設計となっている。燃料を含めた重量は約4トン規模となり、ペイロード搭載能力も数百kg規模が想定されている。
資金面では、日本のSBIR制度による最大約120億円規模の補助金を活用し、開発費の一部が確保されている点も特徴である。
搭載予定のペイロードとしては、東京科学大学による月周回衛星関連の機器や、台湾国家宇宙センター(TASA)による観測機器などが検討されており、国際的な研究プロジェクトとしての側面も持つ。
- ランダ―製造国:日本
- 打ち上げ予定:2028年〜
Mission5
APEX 1.0ランダーによるミッションが予定されている。現時点で詳細情報は公開されていない。
- ランダ―製造国:アメリカ
- 打ち上げ予定:2029年〜
Mission6
Mission6は、日本の宇宙戦略基金(SSFF2)に採択されたプロジェクトとして開発が進められている。上限約200億円規模の支援が想定されており、月極域への高精度着陸を目指す計画となっている。
使用される機体は、Mission4と同じく「Series 3 Lander」で、数百kg規模のペイロードを月面へ輸送できる能力を持つ。
また、欧州宇宙機関(ESA)が進めるMAGPIEプロジェクトの一部としても位置付けられており、フェーズ2の予算として合計約119億円規模が確保される見込みである。
月面輸送サービスを継続的に実施する体制の中で、より高度な探査や国際プロジェクトへの参加を視野に入れた段階のミッションとなる。
- ランダ―製造国:日本
- 打ち上げ予定:2029年〜
さいごに
今後、各国による月面探査や資源利用の動きが進めば、物資輸送の需要は拡大していく。ispaceは複数のミッションを段階的に、同時進行で進めており、打ち上げと着陸を重ねながら技術と運用体制を磨いていく設計である。こうした戦略を通じて、日本発の民間企業が月面市場に参入し、事業基盤を築いていけるのかが問われている。
本記事ではispaceの各ミッションにおける打ち上げスケジュールをご紹介したが、こうした段階的な開発を進める中で、打ち上げ時期が変動する可能性は常に存在する。
特に月面ミッションでは、軌道条件、天候など、複数の要因が影響する。また、安全性や信頼性を確保するために試験を追加する判断が行われることもある。そのため、延期そのものを短絡的に評価するのではなく、技術を着実に積み上げる過程として捉える視点が求められる。
打ち上げ時期だけでなく、準備段階で何が確認され、どの課題が解消されたのかを見ることが、企業の実力を測る上でより重要である。
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