ispace最速で2025年1月に打ち上げ!ミッション2の内容とは?
©株式会社ispaceの画像を使用

2024年11月27日、株式会社ispaceは、同社の民間月面探査プログラムのミッション2『SMBC×HAKUTO-R VENTURE MOON』で打ち上げを予定している月着陸船「RESILIENCE」が無事、打ち上げ場のあるアメリカフロリダ州に輸送が完了したと発表した。

「RESILIENCE」にはいくつかの商業ミッション用荷物(ペイロード)が搭載されており、最速で2025年1月に打ち上げを予定している。本記事では同ミッションの詳細についてご紹介する。

ミッション1の結果おさらい

ispaceの民間月面探査プログラムにおいてミッション1が実施されたのは2022年。

最終的な月面着陸には至らなかったものの、月を周回する軌道に乗り、民間企業として初めて月面へ最終降下フェーズまで到達した。

月面軟着陸失敗の要因は「高度の誤認識」。想定外の高度変化をセンサー異常と捉えてしまったことが問題であった。

ミッション2について

目的と注目ポイント

ミッション2の目的は、ミッション1で得た成果を踏まえた、ランダーの設計・技術、および月面輸送サービス・月面データサービスの提供という事業モデルの更なる検証と強化である。

今回のミッション2で目指すのは、着陸地点から遠く離れた飛行経路上でも、クレーターのような起伏の激しい地形が無く平坦な場所であり、ローバーの動作環境条件にも適する「Mare Frigoris」(寒さ/氷の海、Sea of Cold)の中央付近だ。

月の「氷の海」
ミッション2着陸予定地 ©株式会社ispace

ミッションの注目ポイントは以下の3つ。

  • ミッション1を通して実証されたハードウェアを再度活用した月着陸船「RESILIENCE」による月面着陸
  • ispace欧州法人が開発したマイクロローバの初実証
  • 月のレゴリスを採取し、その所有権をNASAに譲渡する、NASAとの月資源商取引プログラム

まず、月着陸船「RESILIENCE」に関しては、ミッション1を通して実証されたハードウェアを再度活用。

ミッション1での不具合を修正するとともに、貴重なミッション・データや知見を踏まえて、必要なソフトウェアの改良や着陸シミュレーション範囲の拡大、着陸系センサーのフィールド試験の追加実施等を反映。打ち上げから月面着陸までの技術の成熟度向上と検証完了を目指す。

JAXA筑波宇宙センターで公開された、RESILIENCEランダーのフライトモデル
JAXA筑波宇宙センターで公開されたRESILIENCEランダーのフライトモデル ©株式会社ispace

次に、欧州法人が開発したマイクロローバ(月面探査車)は今回が初実証となる予定だ。このローバは独自に設計されたもので、展開機構を用いて月面へ着地し、自走して月面探査に挑む。

およそ5kgと小型で軽量かつ、躯体にはCFRP(炭素繊維複合材)を採用しており、打ち上げ時等の振動に耐える頑丈性を実現しているとのこと。

また、ローバ前方にはHDカメラが搭載されており、月面上での撮影が可能。さらに、タイヤがスリップしやすい、埋もれやすい等、特殊な月面のレゴリス環境でも安定した走行が出来るよう、車輪の形状も工夫されている。

ルクセンブルクのispace EUROPEで初公開されたTENACIOUS(テネシアス)ローバー
ルクセンブルクのispace EUROPEで初公開されたTENACIOUS(テネシアス)ローバー ©株式会社ispace

さいごに、同社は2020年にNASAによる月面で採取した月のレゴリス(砂)の販売に関する商取引プログラムに世界で初めて採択されており、今回月のレゴリスの採取に成功すれば、その所有権をNASAに販売することになっている。

搭載するペイロード

今回のミッション2でispaceが月面に運ぶ予定のペイロードは次の5点となっている。

  • 高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置
  • 株式会社ユーグレナの月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型のモジュール
  • 台湾の国立中央大学宇宙科学工学科が開発する深宇宙放射線プローブ
  • 株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
  • スウェーデンを拠点とするアーティスト ミカエル・ゲンバーグ氏が取り組む「ムーンハウスプロジェクト」

高砂熱学工業は、月面での水素・酸素の生成に世界初挑戦する。同社の月面用水分解装置は、地球の1/6という低重力下でも水の流れを安定させて作動させることが可能となっている。

電気分解に必要な水を地上から持参し、ランダーから供給される電力(太陽光発電)でその水を電気分解することにより、水素と酸素を生成。

水電解装置の運転操作や状態監視は、ランダーの通信設備を介して、東京日本橋にあるispaceのミッションコントロールセンター(管制室)から行う。

また、スウェーデンを拠点とするアーティストのミカエル・ゲンバーグ氏が取り組む「ムーンハウスプロジェクト」は、ミカエル氏が25年もの長きに亘って思い描き、望み続けた、芸術的かつ壮大な物語。

月面上にスウェーデン調に白く縁どられたムーンハウスと呼ばれる赤い小さな家を建てることが、新たな可能性や発想を創出するきっかけとなることが期待されている。

ムーンハウスは月面に展開された後、「TENACIOUS」に搭載されたカメラで撮影される予定だ。

ランダーに搭載されるこれらのペイロードはNASAの主導するアルテミス計画に貢献することが期待されている。

TENACIOUSローバーの前方に固定されたムーンハウス
TENACIOUSの前方に固定されたムーンハウス ©株式会社ispace

さいごに

いかがでしたか。

ispaceの代表取締役CEO & Founderである袴田武史氏は、以下のようにコメントしている。

ミッション2に挑むRESILIENCEランダーは、ミッション1で得たデータやノウハウが反映された「HAKUTO-R」プログラムの集大成となります。

ランダーにはお客様からお預かりしているペイロードが搭載されているのはもちろんのこと、多くのステークホルダーの皆様の期待もお預かりしています。様々な想いを乗せたランダーが、無事打ち上げの日を迎えるまで、引き続き最終調整を進めてまいります。

打ち上げ予定は2025年1月以降。今後のミッションに期待が高まる。

参考

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