
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2026年10月20日(火)午前4時41分03秒に、火星衛星探査機「MMX」を搭載したH3ロケット10号機を種子島宇宙センターから打ち上げる予定である。
MMXは、火星の衛星「フォボス」から砂や岩石を採取し、地球へ持ち帰ることを目指す探査計画である。
本記事では、H3ロケット10号機の打ち上げ概要と飛行計画、MMXのミッション、打ち上げの視聴方法について解説する。
H3ロケット10号機の打ち上げについて
打ち上げ概要
H3ロケット10号機の打ち上げ概要は以下の通り。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 打ち上げ予定日時 | 2026年10月20日(火)4時41分03秒 |
| 打ち上げ場所 | 種子島宇宙センター 大型ロケット発射場 |
| 打ち上げ予備期間 | 2026年10月21日(水)~11月9日(月) |
| ロケット形態 | H3-24L |
| 搭載機 | 火星衛星探査機(MMX) |
※日時は日本標準時。2026年10月19日時点の情報。
今回の10号機には、第1段のメインエンジン「LE-9」を2基、固体ロケットブースター「SRB-3」を4本装着し、全長の大きい衛星フェアリングを採用する「H3-24L」形態が使用される。
24形態としては、2025年10月に新型宇宙ステーション補給機「HTV-X1」を打ち上げた7号機に続く2度目の飛行となり、ロングフェアリングの採用は今回が初めてである。
また、H3ロケットは2026年6月に6号機、8月に9号機の打ち上げに成功している。今回の10号機では、MMXを火星へ向かう軌道に投入することが主な目的となる。

10号機の飛行計画
H3ロケット10号機は、種子島宇宙センターの大型ロケット第2射点から打ち上げられ、太平洋上を東方向へ飛行する。
打ち上げから約1分56秒後と約1分58秒後に固体ロケットブースターを2本ずつ分離し、約3分17秒後に衛星フェアリングを分離。
その後、約4分59秒後に第1段を分離し、約5分12秒後に第2段エンジンの第1回燃焼を開始。約10分40秒後に燃焼を停止する。
第2段は一定時間の慣性飛行を経て、打ち上げから約1時間3分57秒後にエンジンの第2回燃焼を開始。
そして、約1時間11分12秒後には、MMXを所定の火星遷移軌道に分離する計画だ。
この飛行計画は10月20日に打ち上げる場合のものであり、打ち上げ日が変更された場合は、一部の飛行時刻も変更される。


火星衛星探査計画「MMX」とは
火星の衛星フォボスからサンプルを持ち帰る計画
MMX(Martian Moons eXploration)は、JAXAが主導する火星衛星探査計画である。
火星には「フォボス」と「ダイモス」という2つの衛星が存在する。MMXでは、これらの衛星を観測するとともに、フォボスに着陸して10g以上の砂や岩石を採取し、地球へ持ち帰ることを目指している。
この計画には、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」で培われたサンプルリターン技術が生かされる。成功すれば、人類初となる火星圏からのサンプルリターンが実現する。

なぜ火星の衛星を探査するのか
MMXの主な目的の一つは、火星の衛星がどのように形成されたのかを明らかにすることである。
フォボスやダイモスの起源については、小惑星が火星の重力によって捕獲されたとする説と、巨大天体が火星に衝突した際に飛び散った物質から形成されたとする説がある。
MMXでは、衛星の地形や組成を観測し、持ち帰ったサンプルを分析することで、これらの説の検証を進める。
また、持ち帰ったサンプルの分析を通じて、太陽系の形成過程や、生命の誕生に必要な水や有機物などが太陽系内をどのように移動してきたのかを解明する手がかりを得ることも期待されている。
2031年の地球帰還を目指す
MMXは、打ち上げから約1年後の2027年に火星圏へ到着する予定である。
到着後は、フォボスの近くを飛行しながら詳細な観測を行い、着陸地点の選定を進める。さらに、ドイツとフランスの宇宙機関が共同開発した小型ローバー「IDEFIX」を探査機本体に先駆けて着陸させ、フォボスの表面環境を調査する。得られたデータは、探査機本体の安全な着陸にも活用される計画だ。
その後、探査機本体による着陸とサンプル採取を行うほか、ダイモスの観測にも取り組む。
2030年には火星圏を離脱し、2031年に地球へ帰還する予定である。採取したサンプルは回収カプセルに収められ、オーストラリアで回収される計画だ。
H3ロケット10号機の打ち上げはどこで見られる?
JAXAがライブ中継を実施
JAXAは、H3ロケット10号機の打ち上げをYouTubeでライブ中継する予定である。
中継は10月20日午前3時45分頃から開始され、打ち上げから約75分後まで配信される予定となっている。
日本各地からロケットを観測できる可能性も
今回の打ち上げは夜明け前に行われるため、天候などの条件がそろえば、日本の広い範囲から飛行中のロケットを観測できる可能性がある。
これは、地上が暗い時間帯でも、高高度を飛行するロケットに太陽光が当たり、機体が明るく見えるためである。
JAXAによると、10月20日午前4時41分に打ち上げた場合、約5分30秒後から機体に太陽光が当たり、夜空に輝き始める見込みである。
JAXAの特設サイトでは、地域ごとにロケットが見える方角や仰角(地平線から見上げる角度)を確認できる。ロケットは比較的低い空に見えるため、地平線付近まで見渡せる場所での観測が推奨されている。
さいごに
H3ロケット10号機によるMMXの打ち上げは、日本の宇宙探査が火星圏へと活動領域を広げる重要なミッションである。
MMXでは、火星衛星の成り立ちを解明する科学的成果に加え、遠距離での探査機運用や天体への着陸、サンプル採取・帰還など、将来の宇宙探査につながる技術の獲得も期待される。
今回の打ち上げで注目されるのは、H3ロケットがMMXを予定された火星遷移軌道へ送り出せるかという点である。打ち上げの成功が、約5年間にわたる火星衛星探査の第一歩となる。
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