
2026年10月15日、株式会社アクセルスペース(以下、アクセルスペース)は、ASPINA シナノケンシ株式会社(以下、ASPINA)と共同開発した人工衛星向けリアクションホイールを、小型衛星「GRUS-3」で軌道上実証する予定であると発表した。
今回の実証は、同社が展開する軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」の初ミッションとなる。
本記事では、実証するリアクションホイールの特徴や開発背景、AL Labの事業概要、今後の計画について解説する。
アクセルスペースのAL Lab、初の軌道上ミッションへ
AxelLiner Laboratory(AL Lab)とは
AxelLiner Laboratory(AL Lab)は、アクセルスペースが2024年7月に発表した、宇宙用機器の軌道上実証サービスである。
顧客向けに小型衛星の開発から打ち上げ・運用までを支援する「AxelLiner」のサービスの一つで、アクセルスペースが開発する100kg級小型衛星の機器搭載スペースを分割し、企業などが実証したい部品や装置を搭載する仕組みとなっている。
実証対象は、人工衛星の基本機能を担う部品や、観測装置などのミッション機器。利用企業は、独自に衛星全体を開発することなく、アクセルスペースの小型衛星を利用して、自社製品の性能や信頼性を宇宙空間で検証できる。

ASPINAと共同開発したリアクションホイールを搭載
AL Labの初ミッションとなる本実証では、アクセルスペースとASPINAが共同開発した100kg級人工衛星向けのリアクションホイールの性能を検証する。
リアクションホイールは、内部の円盤を回転させ、その反作用を利用して人工衛星の向きを調整する「姿勢制御機器」である。例えば、地球観測衛星では、観測対象にカメラを向けたり、撮影中の姿勢を安定させたりする役割を担う。

ASPINAは、自動車や医療機器、産業機器などの分野で培った精密モータ技術を生かし、2020年からアクセルスペースと100kg級人工衛星向けリアクションホイールの共同開発に取り組んできた。
従来の宇宙用リアクションホイールは高額で納期も長い傾向にあることから、両社は小型衛星に適した品質を確保しながら、受注から出荷まで2〜3か月という短納期を目指して開発を進めている。
今回の実証では、アクセルスペースの小型衛星「GRUS-3」に共同開発したリアクションホイールを搭載しており、信頼性、姿勢制御性能、環境特性を検証。
実証で取得したデータはASPINAに提供され、今後の開発や製品化に活用される予定だ。

使用するGRUS-3に不具合も、軌道上実証は可能
今回の実証に使用する「GRUS-3」は、アクセルスペースが地球観測データ提供事業「AxelGlobe」向けに開発した次世代小型衛星で、2026年7月7日(日本時間)に計7機が打ち上げられた。
しかし、初期運用の過程で、今回のリアクションホイールを搭載した1機を含む計4機に、撮影した大量の画像データを地上へ送信する高速通信系統の不具合が確認された。
一方、衛星による撮影や低速通信系統は正常に機能しており、リアクションホイールの軌道上実証についても、正常に動作する低速通信系統を利用することで実施可能としている。具体的な実証開始時期は未定で、決定次第、改めて公表される予定だ。
軌道上実証サービス拡大に向けた取り組み
アクセルスペースは、ASPINAとの実証以外にも、AL Labを通じた宇宙用機器の軌道上実証に向けて、企業や研究機関との連携を進めている。
2025年12月には、小型衛星向け推進機を開発する株式会社Pale Blueと、ホールスラスタの軌道上実証に関する契約を締結。しかし、実証に使用する衛星に技術上の課題が生じたことから、2026年10月にPale Blue側が契約解除を申し入れ、両社で協議を開始した。
一方、2026年6月には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とAL Labのサービス提供契約を締結した。JAXAが進める宇宙機向け電気推進技術の研究と軌道上実験を支援するもので、2026年度から約4年間のサービス提供を計画している。
さらに、アクセルスペースは実証機会の拡大に向けて、専用の実証衛星以外の活用も検討している。今回の実証では、地球観測データ提供事業「AxelGlobe」向けに開発したGRUS-3の余剰スペースを活用。今後はこうした別の目的で運用する自社衛星の余剰スペースも活用し、軌道上実証の機会を増やすことを目指している。
さいごに
宇宙用機器の製品化には、地上での性能試験に加え、実際の宇宙環境での動作実績が重要となる。一方、機器の実証だけを目的に衛星を開発・打ち上げることは、企業にとって大きな負担となる。こうした課題に対し、AL Labがどこまで実証の機会を広げられるかが重要となる。
今回の取り組みは、ASPINAにとって共同開発したリアクションホイールの実用化を進める機会であると同時に、アクセルスペースにとっても軌道上実証サービスの実績を積み重ねる第一歩だ。
今後は、今回の実証で得られるデータが製品開発にどう生かされるのかに加え、AL Labが宇宙用機器の開発企業に対して、継続的かつ柔軟な実証機会を提供できるかにも注目したい。
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