
2026年3月13日、宇宙デブリ除去などの軌道上サービスを手掛ける株式会社アストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)は、2026年4月期第3四半期(Q3)決算を発表した。
本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。
目次
アストロスケールの概要
アストロスケールホールディングスは、宇宙空間に存在するスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去や、人工衛星の軌道上サービスを開発する宇宙企業である。
低軌道では衛星コンステレーションの増加により宇宙ごみ問題が深刻化しており、将来的には宇宙交通管理やデブリ除去などの宇宙インフラサービスの需要拡大が予想されている。
アストロスケールはこうした課題に対応するため、以下の4つを主な事業としている。
- デブリ除去ミッション
- 衛星の軌道離脱サービス
- 衛星点検
- 燃料補給や修理
同社は日本、英国、米国、フランス、イスラエルなどに拠点を持ち、政府機関や宇宙機関と連携しながら宇宙サービス市場の開拓を進めている。
アストロスケールの決算内容|2026年4月期Q3
アストロスケールが発表した2026年4月期Q3決算は下図の通りである。

2026年4月期Q3の決算内容
2026年4月期第3四半期(Q3)では、政府ミッションを中心としたプロジェクト進行により売上収益が拡大した。
第3四半期累計のプロジェクト収益は83億円(前年同期比125%増)となり、売上収益も44億円(前年同期比194%増)と大きく伸長した。政府補助金収入は39億円となっている。
また、売上総利益は前年同期の約40億円の赤字から6,000万円の黒字に改善しており、営業利益も赤字ではあるものの前年同期比で改善した。研究開発費は静止衛星向けに軌道上サービスを提供するLEXI-P衛星の製造コストを資産計上した影響などにより前年同期比で減少している。
財務状況と受注残高
アストロスケールでは現在も研究開発投資が続いており、短期的には利益よりも技術実証やミッション開発を優先するフェーズにある。
2025年5月には海外募集による約106億円の資本調達を実施しており、資本基盤は強化された。また、戦略的に約30億円の借入金返済を行ったことなどにより、現金及び現金同等物は前期末比で減少している。
一方で、有形固定資産はLEXI-P衛星の製造コストの資産計上により増加しているほか、ミッション関連ソフトウェアなどの資産計上も進んでいる。
また、受注残高は受注済残高と受注内定案件を合わせて約411億円となっており、政府案件を中心に将来の売上につながるプロジェクトが積み上がっている。
受注残高に含まれる主な案件としては、以下の5つだ。
- ELSA-Mフェーズ3・4
- ISSA-J1フェーズ2・3
- ADRAS-J2
- CAT-IODフェーズ
- REFLEX-J
宇宙ビジネスは契約から収益計上まで数年を要するケースが多く、アストロスケールでも平均案件期間は約3.2年となっている。
同社は今後も政府案件を中心にプロジェクトを積み上げながら、軌道上サービス市場の拡大を目指すとしている。

アストロスケールの事業進捗
修理・改修サービスを新たに開拓
アストロスケールは、宇宙デブリ除去に加え、衛星の修理・改修を行う軌道上サービス分野の開拓を進めている。
同社の英国子会社は欧州宇宙機関(ESA)から、衛星の修理・改修サービス「IRUS(In-Orbit Refurbishment and Upgrading Service)」の設計研究を受注した。契約金額は約39.9万ユーロ(約7,200万円)で、劣化した衛星システムの修理や改修による衛星寿命延長の実現可能性を調査する。
また、初めてNASAとも研究契約を締結した。NASAが計画する次世代宇宙望遠鏡「Habitable Worlds Observatory」では、長期運用を前提に軌道上での修理・整備の可能性が検討されており、同社はその技術検討に参加している。
これらの取り組みは、宇宙機を修理・改修しながら運用する新しい宇宙インフラサービスの確立につながるものと期待されている。
研究開発投資は継続
アストロスケールはこれまでも研究開発投資を積極的に行っているが、今後も継続するとのこと。今回の資料では、特許の取得が紹介された。
同社の技術では、衛星自身のリアクションホイールなどの姿勢制御機器を活用することで燃料消費を抑えながら、軌道上サービスを提供する対象物と回転同期することが可能となり、軌道上サービス(OOS)のコスト削減につながると期待されている。
この技術により、除去可能なデブリ対象の拡大や、将来的な修理・改修サービスへの展開も見込まれている。
LEXI-Pの契約遅れが続く
決算資料では、静止衛星向けに軌道上サービスを提供するLEXI-Pミッションの契約締結が当初想定よりも時間を要していることが説明された。
現在、対象となる衛星の状態について顧客側で最終調査が行われており、その影響で契約締結までに時間がかかっているという。ただし、契約金額や契約期間など主要な条件については概ね合意済みとされている。
また、同社はLEXI-Pを含む軌道上サービスについて、約20社の顧客と初期的な対話を進めており、5社とは事前協議、2社とは契約交渉の段階にあることも明らかにした。
こうした状況から、LEXI-Pの契約締結は時間を要しているものの、軌道上サービスに対する市場の関心は拡大していることが示された。
実証機を続々と打上げ予定
アストロスケールは今後、複数の実証ミッションを通じて軌道上サービスの技術実証を進めていく計画である。
宇宙デブリ除去や衛星サービスの実用化には、宇宙空間での実証ミッションが重要なステップとなる。
同社は2027年以降、APS-R、ISSA-J1、ELSA-M、ADRAS-J2、LEXI-Pなどの実証機を順次打ち上げる計画を示しており、軌道上サービスの実用化に向けた技術開発を進めるとしている。
さらに、COSMICやREFLEX-Jといった将来ミッションも予定されているほか、防衛関連案件やOrpheus、CAT-IODなどの非公開プロジェクトも進行しているという。
さいごに
今回の決算では、売上収益やプロジェクト収益の拡大に加え、受注残高の積み上がりや複数の実証ミッション計画など、軌道上サービス事業の進展が示された。
一方で、LEXI-Pの契約遅れなど、商業サービスの本格展開にはまだ課題も残る。しかし、約411億円の受注残高や複数の政府案件を背景に、同社の事業は中長期的な成長段階にある。
今後、予定されている実証ミッションの成果や新規契約の獲得が、軌道上サービス市場の拡大にどのようにつながるのか、引き続き注目される。
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