2024年1月12日、株式会社amulapoが、人材アセットプランニング株式会社と宇宙飛行士訓練を活用した企業研修プログラムを開発したと発表した。
アナログの月面模擬環境と最新のARグラスやVRゴーグルを利用した世界初の訓練プログラムを通し、チームビルディングを培うという。
本記事では宇宙飛行士訓練が人材育成に役立つ理由や、企業研修に同プログラムを取り入れるメリットについて紹介する。
amulapoとは
amulapoは月面探査車の開発エンジニアの経験を持つ代表の田中克明氏をはじめ、宇宙開発の知見を持つ若いメンバーらが率いる企業。
宇宙体験のコンテンツをxR、ロボット、AIなどのICT技術を用いて制作する他、衛星が取得した宇宙環境の情報を用いた惑星のバーチャル化並びにそれを用いた教育、プロモーション利用などの販売実績がある。
また、鳥取砂丘を利用したデジタルツインかつアナログツインとなる月面模擬環境の造成にも取り組んでおり、1月10日にはその環境を利用した研究支援サービスの本格的な開始を発表した。
さらに、教育や人材育成、研究者の異分野交流の場づくりなど、宇宙と社会を相互に発展させるような事業にも取り組んでいる。
宇宙飛行士試験を活用した研修プログラムについて
amulapoが今回新たに発表したのが、鳥取砂丘を舞台にAR/VR等のデジタル技術を用いて行う「月面仮想宇宙飛行士訓練」。
月面さながらの過酷な環境でのリアルな宇宙飛行士訓練を取り入れることによるチームビルディングを目的とした、企業のリーダー層やチームメンバー向けの実践的な研修である。
このプログラムは宇宙飛行士に直接指導を行う宇宙飛行士インストラクターが、実際に宇宙飛行士が受ける訓練を基に研修内容を作成した。
研修の内容は、以下の4つ。
- 思考訓練:NASAが開発した合意形成ゲームで月面での生存に必要な道具の優先度を決める
- 船外帰還訓練:2つのチームに分かれ、音声コミュニケーションだけを頼りに、遠隔でのミッションを実施する
- ローバー操縦訓練:月面(砂丘実験エリア)に設置されているローバーを遠隔操縦し、ミッションをこなす
- 船外探査訓練:チーム内で役割分担し、遠隔でのコミュニケーションを頼りにミッションを遂行する
参加者は宇宙飛行士となり、2泊3日で上記のロールプレイを実施。また、各プログラムの後にチームで振り返り、得た気づきを職場で活かすためのディスカッションを行うという。
なぜ宇宙飛行士の訓練が人材育成に役立つのか
宇宙飛行士には知識や技術、身体的能力だけではなく、宇宙空間という厳しい環境で共同生活し、様々なミッションを成功させるためのチームワークとコミュニケーションが求められる。
チームの一員として共同作業を遂行できる能力や協調性、異なる文化・価値観に対する敬意、優れたコミュニケーション能力に加えて、精神的肉体的ストレス環境下での適切な判断力と行動力が必要だ。
これら宇宙での任務に必要な資質は、現代のビジネスの場でも不可欠であり、企業が抱える複雑な課題への対応や国際的な競争に勝つために非常に重視されているという。
月面仮想宇宙飛行士訓練では、これらの資質を養うことで企業の人材育成、特にチームビルディングにおける課題を解決。
リーダーシップやコミュニケーション力などの個々の能力だけでなく、
- 心理的安全性や相互理解の向上
- 共有するゴールの明確化とチームワークの強化
- 状況認識力の向上と適切な情報共有、迅速な対応と円滑な連携の促進
などをもたらし、チーム全体のパフォーマンスを向上させるのだ。
「月面仮想宇宙飛行士訓練」を取り入れるメリット
企業研修で「月面仮想宇宙飛行士訓練」を取り入れるメリットは次の4つ。
- 宇宙というテーマに皆がロマンを感じ、前向きに「研修を受けたい」という気持ちで挑むことができる。
- 普段の職場とは異なる環境での活動や議論によって新しいアイデアや視点を生み出し、集中して目標に取り組むことで創造的な解決策が生まれる。
- やらされ感ではなく、内発的に「気づき」を得て、普段の仕事を謙虚に振り替えられる。
- 極限状態を演出した研修の中で未知なる素の自分を発見し、またメンバーの新たな一面を知ることでチームの絆を醸成できる。
月面と非常に近いと言われている鳥取砂丘と、最新のARグラスやVRゴーグル技術により、月面と近い過酷な環境で研修を行うことで集中力は高まり、深い没入感で必要な能力を養うことができるとのことだ。
さいごに
いかがでしたか。
これまでのプログラム参加者からは、以下のような声が得られているとのこと。
・本当に宇宙飛行士という未知なる経験ができてよかった。研修に参加したメンバー全員との出会いが素晴らしく、人と関わりを改めて意識した経験・勉強ができて、感動した。
・人生で3本の指に入る記憶に残るような体験だった。
・あるチームメンバーの見方が180°変わった。
・今までであれば話せなかったようなことも、職場に帰って話せると思う。
研修料金には助成金も活用でき、研修料の最大2/3を国が負担してくれるという。
プログラムの詳細については、こちらのページからお問い合わせ可能だ。
これまで子どもを対象とした宇宙教育プログラムはよく見かけてきたが、大人を対象とした体験型の学習コンテンツというのはあまりなかったのではないだろうか。
人材育成の新たな方法として、また、宇宙と社会の双方を発展させる取り組みとして、非常に興味深い。