『人は亡くなったら、お星さまになる。』
そう豪語するのは、民間で初めて宇宙葬ビジネスを確立させた株式会社 SPACE NTK代表の葛西智子氏だ。
宇宙産業と全く関わりのなかった一般人がSpaceXと契約を結び、宇宙葬を成功させたことで、世間を賑わせたのは記憶に新しい。
vol.2では、宇宙葬SOH(葬・想)サービスの詳細並びにSPACE NTKの企業DNAについて深掘りしています。
(本記事は、vol.1とvol.2の2部作構成になっております、この記事はvol.2です)
宇宙葬はなぜ低価格
ー 宇宙葬の費用はどのくらいかかりますか。
散骨の場合ですが、だいたい手のひら1杯分のサイズで55万円(消費税込み)。
猫や犬を供養するペット葬を活用する場合だと、1匹分でだいたい110万円から、多くても220万円くらいです。
そして人一人分だと、770万円くらいになりますね。
ー 普通の葬儀だとどのくらいの費用がかかるんですか。
規模にもよりますが、おおよそ安くても50万円前後はかかってきますね。
葬儀の費用もそうですが、やはり今はお墓を建てるのが高い。
東京の相場でも、だいたい800万円前後はかかっています。地方でも大体300 - 500万円程はかかります。
ーお墓を建てるのってそんなに高いんですね。知りませんでした。
今の若い人は知らないですよね。
土地を買って、そこに墓石を建てて、土を掘って。
そういった作業を全て含めるとトータルでそのぐらいの費用がかかります。
ー だったら宇宙葬の方がむしろ安いじゃないですか。
そういうことになります。
一度、宇宙に打ち上げてしまえば、宇宙(そら)を見上げると毎晩、故人に会うことができますし、墓の維持に必要な、月々にかかるランニングコストも必要なくなるわけです。
それに近年では、お墓を見てくれる人も年々減少しており、墓じまいも進んでいます。
これは日本だけでなく、世界でもこのような流れが進んでいるので、それだったら、お墓を作るのではなく、宇宙散骨をしていただく方が時代の流れを捉えているのです。
ー やはり宇宙葬いいですね。私は死ぬ時はお墓に入りたいと全く思わないので、共感できます。
宇宙葬は、場所も手入れも必要ない、御子息にご迷惑かける心配もない、おまけに費用も安くなるので、ぜひ活用してもらいたいです。
実際、宇宙葬に申し込んでいただける層も前向きな方が多く、「やっとお父さんも宇宙に行けるね」といった形で残されたご家族の方たちにも喜んでいただいております。
ー 「宇宙はみんなの憧れ」ですね。宇宙旅行を死んでから行くって逆転の発想も面白いです。
これからは生きている内に宇宙に行ける時代がやってくるので、宇宙葬活用のニーズも変わってくるとは思いますが、このボックスの中がご遺骨だけでいっぱいにならないのも宇宙葬の魅力の一つです。
ー というと、どういうことですか。
例えば、このボックスの中にご遺骨だけでなく、ご家族の方の髪の毛も一緒に入れて、家族で宇宙旅行してくださいとかもできるわけです。
自分の分身を宇宙に飛ばしたいと、髪の毛をその場で切って、ちょっと袋に入れてください、DNA宇宙飛行士になるんだって男性の方もいました。
宇宙SOHビジネスとは
ー 世の中には色んな人がいるんですね。これがSPACE NTKが仰っている宇宙SOHビジネスの『想』の部分ですね。
はい、そうです。
それこそ冒頭でも述べた通り、最初は宇宙葬、いわゆる『葬』の要素から事業は始まっています。
でもいざ事業が始まると、宇宙に自分の想いや分身を届けたいって人も結構いて、だったらみんなの想いをまとめて宇宙に飛ばしてしまえ。って形で葬をSOH(葬・想)に変更したのです。
ー それで宇宙SOH(葬・想)なのですね。ちなみに打ち上げメッセージの内容はどのようなものが多かったのですか。
メッセージカードの打ち上げで多かったのは、「早くコロナが収まりますように」とか「僕は宇宙飛行士になりたいのでお願いします」とか、あとは「結婚できますように」もいましたね。
また少し変わっていますが、子供の乳歯を宇宙に飛ばしたいと言った人も1人いました。
ー 打ち上げるものって、どんなものでも問題ないのですか。
危険物でなければ基本的に問題ないかと思います。
ちゃんとロケット会社の方にこういうのも打ち上げて大丈夫ですかと確認していて、了承をいただければ、打ち上げることが可能です。
ー なるほど、ちなみに宇宙SOHをするにあたって、法的な観点での留意事項はありますか。
私も当初はそれが気になっていたので、宇宙法を勉強されて、仕事にしている方に色々伺っていたのですが、少なくともSPACE NTKの打ち上げ方法であれば、一切宇宙法には触れないから問題ないということを言われています。
今は宇宙法は、あってないようなものなので。
ただ、これからは変わるかもしれないとは言われました。実際に地球上で色々な国が勢力争いを繰り広げていますが、宇宙はまだ水面下に潜んでいる状態です。
月や火星に行く話が具体的に進んでいる中で、色々な国の利権争いが勃発する可能性があり、これからの法律はやや不透明ですね。
ー なるほど、ありがとうございます。他に宇宙SOHをする上で意外だったなと思ったことはありますか。
そうですね。
日本でのロケットの打ち上げ数の少なさからアメリカのものを活用しているのですが、やはり軍事基地からの打ち上げとなると、軍事に関わる規則等に引っかからないよう色々な書類が必要になります。
人が基地内に入るだけでも顔写真を何回も撮られます。
書類の作成は本当に大変ですが、ちゃんと真っ当なことをして世のため人のために打ち上げるんだっていうことを伝えれば問題はありません。
ー なるほど。どういった形であれ、色々な人が宇宙と携われる仕組みを作った葛西さんはやはり偉大です。
ありがとうございます。
今までは宇宙に触れるまでのハードルも異様に高く、宇宙に関わる人はまず勉強しないといけない。体力的にも、ちゃんとやらなくちゃいけない。そういう人でなければまず関わることすらできない。
そのような風潮があったのですが、そんなことはないということを伝えたいですね。
それこそ、極論、自分の髪の毛を入れるだけでも宇宙と何らかの接点を持つことができるわけなので。
ー ちなみにNTKの宇宙SOHと同じようなビジネスをされている競合っているんですか。
はい、実はいることにはいます。
ただ、他の会社が提供する宇宙葬は本当に少量のご遺骨だけです。
人一人分のご遺骨の打ち上げが可能で、オリジナルの人工衛星も造っている。このような観点では、世界中探してもSPACE NTKだけです。それは、もうイーロンマスクさんのおかげなのですが。
ご遺骨だけのボックスでの打ち上げも世界初になるかと思います。
ー なるほど、もちろん今後も続けていく予定ですよね。
はい、当然です。
第一回の打ち上げに成功したこともあり、SpaceXの方からも継続的にやってもらいたいと言われているので、次の打ち上げに向けて現在は準備中です。
なのでこの記事を見て、宇宙葬をやりたいとかメッセージを打ち上げたい等、要望があれば気軽に自社のHPまで問い合わせいただければと思います。
ご遺骨を手軽に打ち上げるとはいかないものの、宇宙にメッセージ、手紙、写真を届けたい等でしたら、1万6500円程で承ってるので、気軽に考えていただければと思います。
もちろん、証明書も発行します。
ー 興味ある人はぜひですね。ちなみに宇宙SOHで打ち上げるロケットの見学とかってできるんですか。
別途費用はかかりますが、もちろん打ち上げ見学ツアーも組んでいます。
初回の打ち上げは10人程でした。
実際に打ち上げた場所は、アメリカフロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地の中から打ち上げました。
間近で見ることができるのは大体3、4人ですが、ツアーに参加した人も見学できるスペースがあります。
そこからでも、打ち上がった瞬間の熱と音はものすごいものがあるので、これは現地で直接味わってもらいたいです。
ー それこそ直接現地に行ってロケットでお葬式をするのは、次世代の葬送スタイルですよね。
はい、最初の宇宙葬儀プロデュースを終了して思ったことは、やはりロケットが打ち上がる際に適切な葬送ができるなと感じました。
それこそ、空を見上げて、行っちゃったねって。
そうすると、ケジメがつくんですよ。これまで30年間葬儀のプロデュースをしてきましたが。宇宙葬を通じて、最期の見送りをしたときは、これまでとは違った形で感慨深いものがありました。
やはりこのプロジェクトを進めてきて正解だったなと思いました。
ー ありがとうございます。ちなみにツアーの場合、アメリカに行かないといけないんですよね。
はい、そうです。
ただ、SpaceX社がYoutubeにて打ち上げの瞬間を配信してくれています。なので、ツアーに行けなくても配信を見てもらえれば問題ないです。
最初の打ち上げは、日本時間では真夜中でしたが。
SpaceX社の素晴らしいところは、衛星が軌道に乗るところまでをしっかり映してくれるところです。
なので、宇宙空間に実際行ったことを映像を通じて実感することができます。
本当に詳細までわかるので、お客様にも十分満足してもらえるはずです。
ー 実際、一回目の打ち上げは大盛況で終わったということですね。
はい、クレームは一切頂いていないですね。
逆に「今日も夜空で見ました」とか、「葛西さん、もう少ししたら日本の上空に来ますよ」と教えてもらったりしてるくらいです。
そのくらい打ち上がった後もみなさんチェックして、それぞれの想いを宇宙に馳せています。
ー いいですね、それこそ私が亡くなった時は宇宙葬を使いたいものです。
まだ考えるのは早いですが、是非是非。
手軽な価格帯に設定しているので、トータルで見ると他の葬儀より割安になってます。
SPACE NTKの今後の展望
ー 最後に一つだけお聞きしたいのですが、SPACE NTKのこれからの展望について教えていただけますか。
はい。
最初は、日本でしか大々的に実施していなかったのですが、第一弾の打ち上げが成功したことで、世界中でもこの宇宙葬というものが伝わる、共有できるというのがわかりました。
なので今後は、アメリカそれからヨーロッパ、世界に向けて少しずつ事業を拡大していこうと思います。
世界中の人が宇宙散骨といったら日本のSPACE NTKだ。そこにお願いしよう。といった世論形成をまずは実現したいですね。それと宇宙葬をする前にそれこそ宇宙葬の下見ツアーじゃないですけども、アメリカのSpace Perspectiveという気球型宇宙旅行サービスを提供している会社と連携して、『天国の下見ツアー』といったツアーも開始していく予定です。
すでに2026年と2027年の8回分 × 8人、計64席分の席を確保しております。
宇宙に大切なものを届ける、そして実際に自分も宇宙に行く。
この両方をSPACE NTKの基盤として、どんどん進めていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願い致します。
人生のラストステージは、地球でも宇宙でもNTKにお任せください
SPACE NTK 代表 葛西智子
さいごに
いかがでしたか。
葬儀と聞くと堅苦しい、どこか厳かなイメージが先行する行事ですが、葛西氏がプロデュースする葬儀のあり方とは「最期の瞬間だからこそ派手に美しく、そして煌びやかに。」
話を重ねる中でこのような哲学を感じました。
墓じまいなどのニーズが高まっている中、時間や場所に縛られず、墓をも必要としない宇宙葬は、葬送の儀の歴史に新たな一ページを刻んだと言えるだろう。
宇宙SOH(葬・想)はまだまだ知る人ぞ知るサービスですが、これからの未来においては、誰もが知るべく自然葬の中の一つとして必要となってくることでしょう。
月で散骨を実施する月面葬のサービスも始まり、ますます盛り上がりを見せる宇宙葬。
あなたも新たな葬送スタイルとして、宇宙葬を選択肢の1つとして検討してみては。
参考: