IMVが宇宙機向け試験所を開設へ|国内初、民間で複数の環境試験を一括提供
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2026年10月22日、IMV株式会社(以下、IMV)は、ヒューリック株式会社(以下、ヒューリック)と神奈川県川崎市に国内初となる民間運営の宇宙機専用試験施設を開設すると発表した。

本記事では、新施設の概要や、日本の宇宙機開発が抱える試験設備の課題について整理する。

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IMV、国内初の民間宇宙機専用ワンストップ試験所を開設へ

複数の環境試験を一括して提供

IMVは、1957年に設立された振動試験装置や計測機器などを手がける企業である。

試験装置の開発・製造・販売に加え、自動車や鉄道、航空宇宙、電子機器など幅広い産業を対象に、振動・衝撃・温度・真空・EMC(電磁両立性)などの受託試験事業を展開。

国内7か所に受託試験所を構え、これまでに累計2万件以上の試験に対応してきた。

今回新たに整備する施設は、国内初の、民間企業が運営し、人工衛星などの宇宙機に必要な複数の環境試験を一拠点で提供するワンストップ試験所となる。

複数の試験に対応できる設備を整備するとともに、外部機関との連携や試験条件の策定を含め、環境試験を一括して調整・提供する体制を構築する。複数の試験施設を利用する際に発生する日程調整や試験品の運搬負担を軽減することで、宇宙機開発の効率化を目指す。

2028年3月に竣工予定、川崎市の研究開発拠点内に整備

新施設は、不動産開発などを手がけるヒューリックが、神奈川県川崎市で開発を進める「(仮称)南渡田北地区北側開発計画」の研究棟Dに開設される。

施設の概要は以下の通り。

新施設が整備される南渡田地区を含む川崎臨海部は、2026年9月11日、国の「GX戦略地域」のうち「コンビナート等再生型」として全国で初めて認定され、新たな産業の創出・集積に向けた取り組みが進められている。

このうち、ヒューリックが開発を進める「(仮称)南渡田北地区北側開発計画」では、研究開発機能を持つ企業などの誘致を図り、研究開発から試作・実証、事業化までを一体的に支える拠点の整備に取り組んでいる。

また、神奈川県には人工衛星関連企業をはじめとする宇宙関連企業が集積しており、県も宇宙関連産業の集積や企業間の連携を促進している。

IMVは、こうした立地環境を生かし、宇宙機の開発に必要な試験・評価を提供することで、国内宇宙産業の成長を支える方針だ。

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日本の宇宙機開発が抱える試験設備の課題

打ち上げ前に必要となる環境試験とは

人工衛星やロケット、それらに搭載される機器は、打ち上げ時の強い振動や衝撃、宇宙空間の真空状態、極端な温度変化などにさらされる。

そのため、打ち上げ前には地上でこれらの環境を再現し、機器が正常に動作するか、破損しないかを確認する「環境試験」が必要となる。

代表的な環境試験には、以下のようなものがある。

人工衛星では、搭載するロケットや衛星の設計に応じて試験条件が設定され、所定の基準を満たすことが求められる。

試験設備不足と施設の分散が課題

国内の宇宙機開発では、近年需要が高まる100~300kg級の人工衛星に適した試験設備の不足と、試験施設が各地に分散していることが課題となっている。

国内には、50kg級の小型衛星向けの設備として福井県立工業技術センターや九州工業大学、1tを超える大型衛星向けの設備としてJAXA筑波宇宙センターがある。一方、その中間にあたる100~300kg級の人工衛星に適した試験環境は不足しているとされる。

また、試験設備が各地に点在しているため、試験の種類によっては異なる施設を利用する必要がある。これに伴い、施設ごとの日程調整や試験品の運搬に手間と費用がかかるほか、輸送中に機器が破損するリスクも生じる。

今回の新施設では、100~300kg級、特に200kg級の人工衛星を主な対象とし、複数の環境試験を一拠点で提供することで、こうした課題の解決を目指す。

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JAXA宇宙戦略基金を活用した試験拠点の整備と技術開発

2026年2月、IMVが代表機関として採択

今回の試験所整備は、JAXA宇宙戦略基金第2期の技術開発テーマ「宇宙機の環境試験の課題解決」の一環として実施される。IMVは2026年2月、同テーマの「各種環境試験(放射線試験を除く)の課題解決」において、代表機関として採択された。

本テーマは、宇宙機の需要増加に対応するため、試験設備の整備と試験・評価手法の改善を通じて、国内の宇宙機開発における試験機会の拡大や効率化を目指すものである。

具体的には、宇宙機の環境試験全体に要する期間・費用を25~50%削減することや、衛星の用途・大きさに応じた試験・評価基準について関係者間で共通理解を形成することなどを、技術開発テーマ全体の目標として掲げている。

IMVは、宇宙機の評価を専門とする部署を設置しており、人工衛星やロケット関連機器の振動・衝撃試験、衛星分離試験の計測などに対応してきた。また、試験データの解析や構造解析を専門とするチームも有している。

こうした宇宙機の試験実績と幅広い環境試験に対応できる技術力は、今回の事業が目指す試験機会の拡大や試験・評価手法の改善において、IMVの強みとなるだろう。

大学・企業と連携し、試験方法の効率化・最適化を目指す

IMVは、宇宙戦略基金事業の一環として、新施設の整備に加え、宇宙機の環境試験における試験方法の効率化・最適化にも取り組む。

研究開発にあたっては、大学や民間企業と連携し、各機関の専門技術を活用する。連携機関と主な担当分野は以下の通り。

  1. 大阪公立大学:振動・衝撃試験
  2. 熊本大学:振動・衝撃試験
  3. 九州工業大学:熱真空試験
  4. TOA株式会社:音響試験

こうした共同研究を通じて、試験の信頼性を確保しながら、試験に要する期間や費用の削減につながる評価手法の確立を目指す。

さいごに

今回の計画は、人工衛星の開発に欠かせない環境試験を、民間企業が一括して提供する拠点を整備するものである。

複数の試験を一拠点で実施できるようになれば、試験施設の確保や運搬に伴う負担が減り、人工衛星の開発期間の短縮やコスト削減につながる可能性がある。

2028年3月の建物竣工に向け、今後の整備計画や試験サービスの内容が注目される。

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参考

IMV プレスリリース

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