
2026年10月16日、株式会社アークエッジ・スペース(以下、アークエッジ・スペース)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める月測位関連の2案件に参画することを発表した。
本記事では、各案件の概要と月測位システムの仕組みについて解説する。
月を周回する衛星などから送られる信号を利用して、月面や月周辺での位置を把握する技術。地球上で利用されているGPSと同様の仕組み。
アークエッジ・スペース、JAXAの月測位受信機2案件に参画
アークエッジ・スペースが参画することが決定した月測位関連の案件は以下の2つである。
① 日米欧の月測位衛星に対応する実証受信機を開発
1つ目は、一般競争入札で落札した「LunaNet LANS実証受信機の開発」である。日本・米国・欧州が計画する月測位衛星からの信号を受信し、月面での位置を計算する受信機を開発する。
具体的には、日本の月測位衛星システム「LNSS」の実証衛星に加え、NASA(米航空宇宙局)およびESA(欧州宇宙機関)が計画する月測位衛星から送信される共通の測位信号「AFS(Augmented Forward Signal)」を受信。
受信機は、信号から測位に必要な情報を取り出し、月面の標高情報と組み合わせることで、リアルタイムに位置を計算する機能を備える。

開発の目的は、日米欧の異なる月測位衛星からの信号を共通の受信機で利用できることを確認し、これらの衛星を組み合わせた際の測位精度を検証することである。
発表に掲載されたJAXA担当者のコメントによると、日米欧のシステム間の相互運用性と、共同で構成するLANSによる月測位精度について、世界初の実証を目指す。
開発期間は2026年9月から2029年6月まで。JAXAが計画する月南極域でのLANS実証ミッションに向けて開発が進められる。
② 有人与圧ローバに搭載する受信機の概念設計
2つ目は、企画競争で契約相手方に選定された「有人与圧ローバ搭載用LANS受信機の概念設計」である。
有人与圧ローバとは、宇宙飛行士が宇宙服を着用せずに車内で生活しながら、月面を長距離移動できる探査車のことだ。
本案件では、将来の有人与圧ローバへの搭載を想定した月測位受信機の概念設計を行う。

具体的には、受信機の重量や消費電力、排熱などを考慮した基本構成に加え、ローバ本体との接続方法や、受信機の性能を確認するための試験・検証計画を検討。
また、開発に必要な費用やスケジュール、想定されるリスクを整理するとともに、実機開発に向けて技術的な検証が必要となる項目を洗い出し、課題と対応策を具体化する。
実施期間は2026年9月から2027年3月まで。将来の実機開発への移行を見据え、受信機の基本構成や開発計画を具体化していく。

月測位サービス「LANS」とは
月面での位置把握を支える国際的な測位サービス
今回の2案件に共通する「LANS(Lunar Augmented Navigation Service)」は、月面や月周辺で位置を把握するための衛星測位サービスである。
LANSは、NASA、ESA、JAXAなどが連携して進める国際的な枠組み「LunaNet」の一部に位置づけられている。LunaNetは月面や月周辺で通信・測位などのサービスを共通の規格で利用できるようにする構想であり、LANSはそのうち測位を担うサービスである。

LANSでは、日米欧などが開発する月測位衛星からの共通の信号を利用し、月面や月周辺の受信機が自身の位置や時刻を求められる仕組みの構築を目指している。
実現すれば、月面探査車の走行支援や宇宙飛行士の活動、月面基地の建設、資源探査など、幅広い月面活動を支えることが期待される。
日本の月測位衛星システム「LNSS」との関係
LANSを構成する衛星システムの一つとして、日本が開発を進めているのが「LNSS(Lunar Navigation Satellite System)」である。
LNSSは、月周回軌道から測位信号を送信する日本の衛星システムである。NASAやESAが計画する月測位衛星と共通の信号を送信し、国際的な月測位サービス「LANS」を共同で構築することを目指している。
アークエッジ・スペースは、2024年11月にJAXAの宇宙戦略基金「月測位システム技術」の実施機関として採択されており、同事業では、100kg級の超小型衛星を活用したLNSS実証衛星や、衛星自身の位置・時刻を高精度に求めるための主要システムの開発に取り組んでいる。
さらに、2026年7月8日には、100kg級の月測位実証衛星の製造拠点として東京都江東区新木場に「新木場ラボ」を整備し、実証衛星の製造フェーズに移行したことを発表している。
今回の2案件への参画は、月測位信号を送る衛星側の技術に加え、その信号を月面で受信・利用する技術へと開発領域を広げる取り組みとなる。
さいごに
アークエッジ・スペースが参画する今回の2案件は、月測位サービスの国際的な実証と、将来の有人月面探査での利用を見据えた取り組みである。
同社はこれまで月測位信号を送信するLNSS実証衛星の開発を進めてきたが、今回の案件を通じて、信号を受信する機器の開発にも領域を広げ、衛星から受信機まで、月測位に必要な技術を幅広く手がけることとなる。
今後は、2029年6月までの開発が予定される実証受信機の進捗に加え、有人与圧ローバ向け受信機の概念設計が、その後の実機開発にどのようにつながるかが注目される。
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