HAPSとは?仕組みや人工衛星との違い、NTNでの役割を解説
©Space Connect

HAPS(ハップス)は、高度約20kmの成層圏を飛行し、上空から通信を提供する「空飛ぶ基地局」である。人工衛星と地上基地局を補完する通信基盤として、NTN(非地上系ネットワーク)や6Gでの活用が期待されている。

本記事では、HAPSの仕組みや衛星通信との違い、衛星通信と組み合わせたNTNでの役割、実用化に向けた課題を解説する。

HAPSとは?~高度約20kmの「空飛ぶ基地局」

HAPS(High Altitude Platform Station;高高度プラットフォーム)は、国際電気通信連合(ITU)にて、「高度20~50kmに位置し、地球に対して一定の位置を保つ物体上の無線局」と定義されている。

現在開発が進むHAPSでは、通信機器を搭載した無人航空機や飛行船を主に高度約20kmの成層圏に滞空させ、地上の通信ネットワークとスマートフォンやIoT端末などを上空からつなぐ。地上の基地局と同じような役割を担うことから、「空飛ぶ基地局」とも呼ばれる。

高度約20kmは、旅客機が飛ぶ高度より高く、低軌道衛星が飛ぶ宇宙空間よりも大幅に地上に近い。地上付近と比べて雲や雨の影響を受けにくく、比較的風が穏やかな領域があるため、一定地域の上空で長期間運用する場所として適している。

高度約20kmの成層圏を飛行するHAPSが、地上局や都市、農村、海上、災害地域へ通信を提供する仕組みを示した図
HAPSとは?~高度約20kmの成層圏を飛行し、地上局や都市、山間部、海上などへ通信サービスを提供 ©Space Connect

HAPSのメリットの一つが、地上基地局を設置しにくい地域にも通信エリアを広げられることである。山間部や離島、海上などでは基地局の設置が難しいが、HAPSであれば上空から広い範囲へ電波を届けられる。

HAPSの機体には、翼による揚力を利用する飛行機型の「HTA型」と、ヘリウムなどの浮力を利用する飛行船型の「LTA型」があり、長期間の滞空を実現するための開発が進められている

HAPSと衛星通信は何が違う?

HAPSと人工衛星を使った通信の大きな違いは、通信設備が置かれる高度にある。

HAPSは主に高度約20kmの成層圏を飛行する。一方、低軌道衛星(LEO)は高度数百~約2,000km、静止衛星(GEO)は高度約3万6,000kmに位置する。

HAPSと衛星通信の違いを比較した表。地上基地局、HAPS、低軌道衛星(LEO)、静止衛星(GEO)について、高度と通信距離、遅延、伝搬損失、カバー範囲などの特徴を比較している。
HAPSと地上基地局、低軌道衛星(LEO)、静止衛星(GEO)の通信高度と主な特徴 ©Space Connect
地上基地局、HAPS、低軌道衛星、静止衛星による通信を比較した図。HAPSは高度約20km、低軌道衛星は約500〜2,000km、静止衛星は約36,000kmで通信し、それぞれ地上局と接続する。
地上基地局、HAPS、低軌道衛星、静止衛星による通信の違い ©Space Connect

HAPSは人工衛星より地上に近いため、通信距離が短く、遅延や電波の減衰を抑えやすい。また、上空から通信するため、地上基地局と比べて広い範囲で見通しを確保しやすいことも特徴である。

一方、人工衛星はHAPSより広い範囲をカバーできる。特にGEOは1機で広大な地域へ継続的に通信を提供でき、LEOは多数の衛星を連携させることで世界規模の通信網を構築できる。

このように、HAPS・LEO・GEOは高度によってそれぞれ異なる強みを持つ。いずれか一つで通信を担うのではなく、地上基地局も含めて組み合わせることで、それぞれの弱点を補完する通信網の構築が期待されている。

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HAPSと衛星通信で広がる「NTN」

HAPSは、人工衛星とともに「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)」を構成する通信基盤の一つである。

NTN(非地上系ネットワーク)とは

NTNとは、人工衛星やHAPSなど、地上以外にある通信設備を利用して通信エリアを広げるネットワークである。

現在の携帯電話網は地上基地局を中心に構築されているが、山間部や離島、海上などでは基地局の設置が難しい。そこで、NTNでは、HAPSやLEO、GEOなどを利用し、地上ネットワークではカバーしにくい地域まで通信エリアを拡張する。

GEO、LEO、HAPSはそれぞれ単独でもNTNを構成できる。一方、用途や地域に応じて複数の通信基盤を組み合わせることで、それぞれの特徴を生かした多層的な通信網の構築も期待されている。

HAPSと衛星を組み合わせたNTNの技術開発も進む

HAPSと衛星通信を組み合わせたNTNの構築に向け、日本でも複数の技術開発が進んでいる。

NICT、清原光学、アークエッジ・スペース、ソフトバンクの4者は、低軌道衛星とHAPSを光通信で結ぶ実証を進めている。関連技術では、NICTが2025年、衛星やHAPSに搭載可能な小型光通信端末を用い、地上の7.4km離れた地点間で2Tbit/sの空間光通信に世界で初めて成功した。

4者は今後、2026年度中に実証衛星「CubeSOTA」を打ち上げ、2027年には低軌道衛星とHAPS間で最大10Gbit/sの双方向光通信を実証する計画である。

Space Compass、NTTドコモ、NTT、スカパーJSATは、HAPSとスマートフォンを直接つなぐ通信や、HAPSと地上局を結ぶ通信技術の実証・高度化を進めている。この取り組みの一環として、Space CompassとNTTドコモは2025年、ケニア上空約20kmを飛行するHAPSを介し、スマートフォンとのLTEデータ通信に成功した。

将来的には衛星通信をバックホールとして組み込み、地上局を設置しにくい地域でも通信を提供できるNTNの構築を目指している。

このように、衛星とHAPSを結ぶ通信技術や、HAPSと端末・地上局をつなぐ通信技術の開発が進められており、衛星・HAPS・地上ネットワークを組み合わせたNTNの実現に向けた取り組みが広がっている。

HAPS実用化に向けた課題

HAPSを継続的な通信インフラとして利用するには、高度約20kmの成層圏で機体を長期間安定して運用する必要がある。

成層圏は空気が薄く、気温も低い。特に飛行機型HAPSでは、機体を軽量化しながら、昼間に太陽光で発電し、夜間の飛行に必要な電力を蓄える技術が求められる。

通信面では、飛行する機体から地上へ安定して電波を届ける技術や、他の無線システムとの電波干渉を抑える仕組みも必要となる。

さらに、長期間安全に飛行するための運航体制や、周波数・航空運用に関する制度整備も必要である。

こうした技術・制度面の課題を解決し、安定した長期運用を実現できるかが、HAPSの本格的な商用化に向けた焦点となる。

さいごに

HAPSは、高度約20kmの成層圏から通信を提供することで、地上基地局と人工衛星の間を補完する新たな通信基盤である。

今後は、HAPS単体の通信性能向上に加え、LEOやGEOなどの衛星通信と組み合わせたNTNの構築が進むことで、地上・海上・上空まで通信エリアを広げられる可能性がある。

一方で、本格的な商用化には、成層圏での長期運用や安定通信、制度整備といった課題も残る。今後、こうした課題をどこまで解決し、地上・成層圏・宇宙をつなぐ通信インフラとして定着していくかが注目される。

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参考

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