2022年8月6日~11日、ユタ州立大学(米国)にて開催される「Small Satellite Conference 2022」に、東大発ベンチャー Pale Blueが出展することが発表された(ブース番号:49)。このSmall Satellite Conference(小型衛星会議)は、小型衛星分野に特化した世界最大級のカンファレンスである。
展示ブースでは、世界で初めて宇宙実証予定の水を用いた小型人工衛星用推進機(水エンジン)や、初披露となる「100㎏級衛星」のモデルが展示される。また、8月10日には、代表の浅川純氏が、水統合式推進機の打ち上げ前試験結果について技術発表を行う予定だ。
この記事では、Pale Blueの開発している水エンジンがなぜ注目されているのかについて紹介する。
株式会社Pale Blueとは
2020年に創業したPale Blueは、地球の周りとその向こうで持続可能な宇宙開発を実現しようとする日本の宇宙ベンチャー企業だ。その最初のステップとして、安全無毒である水を推進剤とした持続可能な小型衛星用推進機の技術革新および社会実装に取り組んでいる。小型衛星実用化の課題となっている推進機に技術革新を起こすことで、次世代の宇宙モビリティ・インフラ構築を実現し、科学技術の発展に貢献する。
水エンジンのここがすごい!
現在、多くの人工衛星では、ヒドラジンのような有毒な推進剤や、キセノンやクリプトンといった希少ガスが使用され続けている。ヒドラジンは再点火など高い制御性や、安定性、正確な推力が得られることから軌道調整用として高く評価されてきた。しかしその一方で人体への毒性が高く、取り扱いが難しい。また、キセノンやクリプトンは性能は高いが入手費用が高額となる。
このような課題を解決するべく様々なエンジン推進剤が研究されている。その一つが水エンジンだ。水を使用した推進剤は安全性が高く、低価格。また、水は地球上でもっとも豊富な資源のため持続可能性も高い。その上で、Pale Blueの開発した水エンジンは性能の良さも兼ね備えている。
Pale Blueは、様々な人工衛星エンジンのニーズに合わせて3種類の水エンジン
- 高推力の水蒸気式推進機
- 燃費が良い水プラズマ推進機
- 上記2つを組み合わせた高推力&高燃費の水統合式推進機
を提供。水統合式推進機は、2022年JAXA革新的衛星3号機により世界初の宇宙実証を予定している。
カンファレンスでの展示内容と技術発表
「Small Satellite Conference 2022」でのPale Blueの展示ブースでは、今回初披露となる「100㎏級衛星」の模型を展示。さらに、世界初の宇宙実証が予定されている水統合式推進機、小型衛星向けの水蒸気式推進機を手に取って見ることができる。
技術発表では、水統合式推進機における打ち上げ前試験結果について、代表取締役である浅川氏が執筆した論文に基づいて発表を行う。
浅川氏は、
2020年4月に創業して以降、COVID-19の影響もあり、Small Satellite Conferenceはオンライン開催が続いていましたが、ようやく念願の現地参加ができるようになりました。世界最大級の小型衛星会議において、企業展示と技術発表の両方を行うことで、グローバルでの市場展開を更に加速させてまいります。
とコメントしている。
参考:
Pale Blue HP
Small Satellite Conference 公式WEBサイト
東大発宇宙ベンチャー、8/6-11米国で世界初宇宙実証予定の水エンジン展示