
2026年1月13日、三菱商事株式会社(以下、三菱商事)は、米Starlab Space LLC社(以下、Starlab Space)へ追加出資を実行したことを発表した。
これにより、三菱商事は取締役を派遣してStarlab Spaceの経営に参画するとともに、Starlab Spaceが開発する商業宇宙ステーション実験区画の使用権を獲得した。
本記事では、Starlab Spaceの事業概要と、三菱商事が同社に追加出資した背景や狙いについて整理する。
目次
Starlab Spaceについて
Starlab Spaceは、国際宇宙ステーション(ISS)の退役後を見据え、地球低軌道における新たな研究・商業活動の場となる商業宇宙ステーションの開発・運営を目指す米国企業である。2024年1月に、米国の宇宙インフラ関連企業であるVoyager Technologiesと、欧州航空宇宙大手Airbusの合弁会社として設立された。
現在は三菱商事に加え、カナダの宇宙企業であるMDA Spaceが参画。その他、米国のデータ解析企業Palantir、防衛・宇宙大手のNorthrop Grummanなど、ISSや宇宙・防衛分野に関わってきた複数のプレイヤーが関与している。
同社の商業宇宙ステーション「Starlab」は、NASA が推進する商業宇宙ステーション計画(Commercial LEO Destinations)に選定され、現在もNASAの資金・技術支援を受けながら開発が進められている3計画の一つ。2025年2月には、NASAが設定する主要な開発マイルストンに関する審査を完了したことが公表されている。
運用や実験管理に「AIを活用」することを前提に設計されている点が特徴であり、地上と宇宙の間でやり取りされる膨大なデータをAIで処理・活用することで、実験支援や運用効率の向上を図っている。
三菱商事がStarlab Spaceに出資した理由
今回の発表で注目すべき点は、三菱商事 が Starlab Space に対し、取締役派遣による経営参画と、商業宇宙ステーションにおける実験区画の使用権獲得を行っている点にある。
ISS退役後に向けた宇宙利用の場の確保が必要
背景にあるのは、国際宇宙ステーション(ISS)の退役である。日本は2008年以降、「きぼう」日本実験棟を通じて、ISSを利用した有人宇宙実験を継続してきた。一方でISSは2030年代に退役する見込みであり、ISS後も研究開発を継続するための新たな宇宙利用の場が必要となっている。
また、日本はISS向け補給機「HTV」の後継として、新型宇宙ステーション補給機HTV-Xを開発しており、ISS退役後には商業宇宙ステーションへの適用も想定している。HTV-Xの開発には三菱重工業と三菱電機が中核として関与しており、日本はISS後を見据えた有人宇宙活動の技術基盤を維持している。
なぜStarlab Spaceなのか
ISS退役後も有人環境を活用した研究開発を継続するためには、商業宇宙ステーションへのアクセス確保が不可欠である。しかし、日本単独で有人宇宙ステーションを開発・運用するハードルは高く、民間主導で有人運用を前提とした計画は限られている。
その中で Starlab Space は、NASA が進めるISS後の低軌道活動の民間移行方針のもと、具体的な開発計画と事業体制を構築している数少ない商業宇宙ステーション計画の一つだ。
ISS退役後も日本の研究機関や民間企業が宇宙空間で研究開発を行える環境を早期に確保する上で、Starlab Spaceは実行可能性の高い連携先として位置付けられる。
実験区画の獲得で期待されること
三菱商事は、商業宇宙ステーションにおける実験区画の使用権を獲得したことで、ISS退役後も日本の研究機関や民間企業が有人環境を活用した研究開発を継続できる基盤を確保した。これにより、微小重力環境を生かした創薬研究やナノ医療、新材料開発、宇宙環境を活用した次世代半導体製造や宇宙用コンピュータ開発などへの貢献が期待される。
同社は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める日本の有人宇宙活動の発展に寄与するとともに、自社が持つ新規事業創出の経験と産業との接点を生かし、さまざまな産業が新しい「商業宇宙ステーション」を活用できる事業機会を提供していくとしている。
さいごに
三菱商事は、Starlabへの出資により、商業宇宙ステーションにおける実験区画の使用権を獲得し、ISS退役後も日本の研究機関や民間企業が有人環境を活用した研究開発を継続できる基盤を確保した。また、同社グループである三菱重工業や三菱電機が開発するHTV-Xとの協調も期待されるだろう。
有人宇宙活動は、官主導から民間企業が主体的に関与するフェーズへと移行しつつある。ISS後を見据えた商業宇宙ステーションへの関与は、三菱商事に限った動きではない。国内では、三井物産が米Axiom Spaceへ出資しており、日本の商社が複数の商業宇宙ステーション計画に関与し始めている。
ISS退役を見据え、民間企業が主体となって地上産業と宇宙環境を結び付けようとする動きが進みつつある。こうした取り組みが、今後どのような形で具体化していくのか注目だ。
参考
米Starlab Space社 商業宇宙ステーション事業への追加出資および実験区画獲得について(三菱商事, 2026-01-15閲覧)








