SAR衛星を開発「QPSホールディングス(QPS研究所)」の成長戦略と将来性
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2026年1月14日、小型SAR衛星の開発・運用事業を行う株式会社QPSホールディングスは、2026年5月期第2四半期の決算説明資料を公開した。

同社は九州大学発の宇宙ベンチャーとして、事業会社であるQPS研究所が2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場した。2025年12月には、QPS研究所を中核子会社とする持株会社QPSホールディングスを設立し、グループ経営体制へ移行することで、経営体制の強化を進めている。

本記事では、同社の決算資料をもとに、成長戦略と将来性について解説する。

前回の収益性と成長戦略の記事はこちら▲

QPSホールディングス PROFILE

QPSホールディングスグループは、福岡市に本社を置き、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の研究開発から運用、観測データの販売までを一貫して手がける日本の宇宙企業である。

高解像度SAR衛星による観測データを収益の中核とし、災害対応、インフラ監視、安全保障など幅広い分野での活用を視野に事業を展開。衛星・地上システム・データ提供を自社で統合的に開発・運用する点を強みとし、技術力と市場対応力の両立を図っている。

また、2025年12月には事業拡大を見据えて持株会社体制へ移行し、グループ全体の経営管理や資本戦略の柔軟性を高めることで、持続的な成長と事業拡大を目指している。

QPSの成長戦略と将来性

QPSホールディングスが予測する2026年5月期の通期業績は下図の通りである。

QPSホールディングス 2026/5期 通期業績予想 (株式会社QPSホール
QPSホールディングス 2026/5期 通期業績予想 (株式会社QPSホールディングスの資料を基にSpace Connectが作成)

2026年5月期 第2四半期の決算内容

同社が発表した 2026年5月期 第2四半期(2Q)決算では、投資フェーズにありながらも、収益面で着実な進展が見られる内容となった。

第2四半期まで(累計, QPS研究所単体)の純利益は約2億2,700万円の赤字となったが、前年同期の約17億2,800万円の赤字から約15億円の増益を達成。営業損益でも赤字が続いているものの、補助金収益や営業外収益を含めた通期における最終純利益(連結)では黒字を見込んでおり、事業の収益性が徐々に改善していることが伺える。

一方、売上高(累計, QPS研究所単体)は約9億1,500万円となり、前年同期比ではやや減少。ただし、これは大型案件の進捗タイミングや売上計上時期の影響が大きく、同社としては重要案件を中心に計画どおり事業が進んでいる状況といえる。

なお、減価償却費などを加味した EBITDAは約5億3,400万円とプラスを維持しており、事業基盤そのものは堅調に推移している。

総じて今回の決算では、営業損益は投資段階として想定内である一方、事業収益の拡大が期待でき、将来の収益化に向けた土台が着実に整いつつある決算内容となった。

事業の進捗状況

同社の中核事業である 小型SAR衛星コンステレーション構築は、2025年に入って大きく前進している。

2025年中に新たに6機の小型SAR衛星を打ち上げ、稼働衛星が合計9機体制に拡大。2025年12月末時点では、定常運用中の衛星が6機、初期運用段階にある衛星が2機、調整中の衛星が1機となっており、観測能力の底上げが着実に進んでいる。

段階的なコンステレーション構築により、観測頻度や取得可能なデータ量が増加し、準リアルタイム観測サービスの実現に向けた体制が強化されている。

財務状況・資金調達の状況

衛星事業は長期的な投資を必要とするビジネスであり、安定した資金調達体制の構築が不可欠である。

今回、同社は2026年1月30日に総額62億円規模のシンジケートローン契約を締結予定であり、衛星コンステレーション構築を加速させるための資金基盤を確保した。これにより、短期的な資金繰りリスクを抑えつつ、中長期的な事業投資を継続できる体制が整っている。

また、宇宙戦略基金(JAXA等)による補助金約8億3,500万円を営業外収益として計上しており、公的支援を活用した事業推進も進んでいる。

補助金と民間資金を組み合わせることで、資本効率を意識した投資が可能となっており、長期投資型の宇宙ビジネスにおいて重要なポイントといえるだろう。

将来性

同社は中長期的な成長戦略として、衛星コンステレーションの本格構築を明確に掲げている。

運用衛星数の増加に伴い、取得できるデータ量と観測機会が拡大することで、国内外の民間企業や政府機関向けのデータ提供が加速する可能性がある。特に、全天候・昼夜を問わず観測できるSARデータは、光学衛星では代替できない分野での需要が高く、今後も安定した需要拡大が期待される。

また、現時点では防衛省をはじめとする官公庁向け案件や開発・調査研究分野が収益を下支えしており、これが投資フェーズにおける重要な安定要因となっている。こうした官公庁案件は単発にとどまらず、実証・開発から運用・データ提供へと段階的に広がるケースも多く、将来的には継続的な収益源へと発展する可能性がある。

さいごに

QPSホールディングスは、小型SAR衛星のコンステレーション構築という明確な中長期戦略のもと、投資フェーズにありながらも着実に事業基盤を強化している段階にある。

運用衛星数の拡大や安定した資金調達、公的支援の活用により、SAR衛星データ事業のスケールアップに向けた環境は着実に整備されている。

今後は、コンステレーションの本格稼働に伴うデータ販売の拡大や、官公庁案件から民間需要への広がりがどの段階で顕在化するかが重要な注目点となるだろう。

また、同社は現在、複数のポジションで人材を募集している。興味のある方はこちらからご確認いただきたい。

スペジョブが航空宇宙産業に特化した人材サービスであることを説明した図
©Space Connect

参考

株式会社QPSホールディングス 2026/5期 2Q決算説明資料 株式会社QPS研究所分(株式会社QPSホールディングス, 2026-01-14閲覧)

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