宇宙での実験結果を地球に!ElevationSpace、課題乗り越えカプセルの回収試験に成功

2025年4月2日、株式会社ElevationSpaceは、宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」に搭載される回収カプセルについて、福島県南相馬市沖の海域で実施した高空落下試験に成功したことを発表した。

本記事では、宇宙から帰還したカプセル回収の仕組みや前回の課題をクリアした今回の回収試験の詳細について解説する。

ElevationSpaceが描く、ポストISS時代の輸送サービス

ElevationSpaceが開発を進める宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」は、国際宇宙ステーション(ISS)が提供してきた機能の一部を、より小型かつ無人で代替することができる革新的なプラットフォームだ。

ISSはこれまで、基礎科学から産業利用に至るまで、無重力環境を活かした多くの研究・実験の場として機能してきた。 新薬の開発、骨や筋肉の変化メカニズムの解明、新素材の生成、さらには製品ブランディングに至るまで、活用の幅は広い。

しかし、ISSにはいくつかの課題もある。 実験スペースや宇宙飛行士のスケジュールには限りがあり、実験の機会自体が非常に限られる。プロジェクト開始から成果の取得まで、数年単位の長期化も珍しくない。

さらに、ISSは構造寿命などの関係から2030年末での運用終了が決定しており、宇宙環境を継続的に利用できる場の確保が急務となっている。

こうした課題を解決する存在として、注目を集めているのが「ELS-R」である。

「ELS-R」は日本初の宇宙輸送サービスであり、無重力環境を活かした実験や製造を無人の小型衛星で行い、その成果を回収カプセルによって地球に持ち帰ることを可能にする

ISSに代わる“ポストISS時代”の宇宙利用を担う、次世代のインフラとして期待されているのだ。

落下、減速、浮上、回収 一連のプロセスを完全実証

宇宙から届いたカプセルはどのように回収されるのか

宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」は、宇宙で実証・実験を行った後、高推力のハイブリッドスラスタによって地球低軌道を離脱し、大気圏に再突入する。この“地球帰還”は、宇宙から物資を持ち帰るために欠かせない工程だ。

大気圏再突入後、衛星本体から分離されたカプセルは、熱に耐える構造で大気圏を突破。適切な高度に到達すると、自動的にパラシュートを展開し、速度を落としながら海上へと降下する。

ELS-Rのサービスの流れ
ELS-Rのサービスの流れ ©株式会社ElevationSpace

海面に着水した後は、カプセルが沈まないようにフローテーションバッグ(浮き輪)を展開し、自ら位置情報を発信。

これを地上で受信した回収チームが、洋上を探索し、カプセルを船で回収する。

この一連の流れには、「軌道離脱」「再突入」「回収」という三つの重要な技術的チャレンジが詰まっている。

ElevationSpaceは、そのなかでも再突入する回収カプセルの構造設計や、パラシュートを展開し速度を下げて降下する「回収」技術を重要度の高い技術課題として位置付けてきた。

実験の概要と結果

今回実施された『再突入カプセル投下・回収試験 』は、上記3つの重要な技術的チャレンジにおける「回収」技術の試験である。

同試験は昨年9月に実施された前回の試験において残された課題を克服するための再挑戦でもあった。

両試験の目的は共通しており、大気圏再突入後の回収プロセスにおいて、以下の項目がすべて正常に機能するかを確認することであった。

  1. 降下中にパラシュートを放出し、パラシュートによる減速を行う
  2. カプセル飛行中・着水時の飛行環境データを取得する
  3. 着水後にフローテーションバッグ(浮き輪)やカプセルの位置を示すシーマーカーなど洋上回収に必要な装備が機能し、カプセルの回収を実現する

前回の試験では、カプセルの海上着水、回収には達成したが、「1. 降下中にパラシュートを放出し、減速する」目標についてはカプセルの一部が期待通りに機能しなかったため、達成することができていなかった。

そのため同社は今回の試験に向けて課題部分の修正に努めてきた。

シーマーカーが作動した地点へ向かう回収船
シーマーカーが作動した地点へ向かう回収船 ©株式会社ElevationSpace

そして今回は、前回生じた課題点を含め、1、2、3すべての項目について正常に動作することが確認された。

ElevationSpace 代表取締役CEOの小林 稜平 氏は、この成果を次のように語っている。

今回の成功は、開発上の大きなマイルストーンをクリアすると同時に、当社の課題解決力が証明されたという意味で価値の高い成果だといえます。

また、CTOの藤田 和央 氏は次のようにコメントした。

カプセルがパラシュートを放出し、パラシュートによって最終減速し、着水してフローテーションバッグにより浮遊し、位置情報を発信し、これを受信してカプセルを探索し、回収船によって回収する、という一連の手順が検証できました。これにより技術実証機「あおば」の打ち上げに向けて大きく前進しました。引き続き打ち上げに向けた準備を進めて参ります。」

パラシュートが開き、降下するカプセル
パラシュートが開き、降下するカプセル ©株式会社ElevationSpace

緊迫した試験の全貌公開!ショートムービーに注目

なお、試験の一部始終を記録したドキュメント映像がElevationSpaceのYouTubeチャンネルで公開されている。

カプセルが大空から降下し、パラシュートが見事に展開、海面に着水する様子は、映像ならではの迫力と臨場感があり、圧巻である。

文字だけでは伝わらない緊張感と技術のすごさを、ぜひその目でご覧いただきたい。

ELS-R初号機「あおば」、2026年に宇宙へ

今回実験が行われた「ELS-R」の初号機「あおば」は、2018年にドイツ・ミュンヘン近郊にて設立された宇宙ベンチャーIsar Aerospaceのロケットによって、2026年後半に宇宙に打ち上げられる予定だ。

「あおば」の重量は約200kg、大きさは約1m四方で、打ち上げ後は地球低軌道上で約半年間の実証・実験を実施。その後、回収ペイロードを搭載した再突入カプセルの地球への帰還、海上での回収を予定している。

回収ペイロードについては、実証したコンポーネントや素材を地球に帰還させ、顧客の元に返すことで、宇宙空間特有の微小重力、真空、熱といった環境がペイロードに与えた影響を直接観察することができ、地上の設備で詳細に解析することも可能となる。

実験・実証の詳細は、下図の通りとなっている。

「あおば」の実験・実証内容
「あおば」の実験・実証内容 ©Space Connect株式会社

さいごに

いかがでしたか。

再突入から洋上回収までの一連の動作を実証した今回の試験は、宇宙から物を持ち帰るサービス実現に向けた大きな前進となった。

2026年後半には、初号機「あおば」の打ち上げも予定されている。 今後、ELS-Rがどのように活用され、宇宙利用の選択肢を広げていくのか。引き続き注目していきたい。

また、株式会社ElevationSpaceは現在、今後の事業拡大に向けて全ポジションで採用を強化している。

国内唯一の「大気圏再突入・回収技術」獲得を目指す同社の仕事に興味のある方は、ぜひこちらをチェックいただきたい。

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参考

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