IDDK、日本で民間初となる宇宙バイオ実験サービスの実証実験へ
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2024年9月13日、株式会社IDDKは、日本で民間初となる「人工衛星を利用した宇宙バイオ実験プラットフォーム」の開発に向けて、2024年度末に世界に先駆けた実証実験を実施することを発表した。

同サービスは宇宙バイオ実験を一気通貫で代行するサービスである。人工衛星内に実験装置を搭載して打ち上げて、宇宙実験を行った後に衛星ごと地球に帰還させるという流れで行われる。

本記事では、同サービスの詳細や今回の実験のポイント等について紹介している。

IDDKとMID

IDDKは、光学技術と半導体技術の融合により従来の顕微鏡とは全く異なる原理の革新的な顕微観察技術MID(マイクロイメージングデバイス)を開発した企業である。

このMIDは、半導体のマイクロチップの上に観察対象を乗せるだけで顕微観察ができるという、驚きの装置だ。

その手軽さから、「いつでも」「どこでも」「だれでも」使える「顕微観察技術」と称されており、社名の由来にもなっている。

同社は設立後、MIDの技術を開発してまずは地上向けの商品を製造。

その後、MIDの宇宙展開の構想を開始し、現在は「宇宙バイオ実験サービス」の事業化に向けて、実験装置の開発など準備を進めている。

ワンチップ顕微観察
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※MIDを開発できた理由やMIDの有用性等を紹介!IDDKについて詳しくはこちら▼

【宇宙×バイオの新領域】IDDKの顕微観察技術がビジネスの覇権を握る!? / 顕微観察がなぜこれから熱いのか / MIDは日本で生まれたイノベーション ©Space Connect

宇宙バイオ実験プラットフォームとは

IDDKの宇宙バイオ実験サービスは、MIDをコア技術とした全自動の宇宙バイオ実験装置(Micro Bio Space LAB:MBS-LAB)を搭載した衛星内で実施。

あらかじめ作成した実験レシピ(プロトコル)を使用して自動で実験を行い、宇宙での取得データを地上へ伝送する。

MBS-LABのサイズは、最小で10㎝四方サイズ以下

顕微観察と培養チャンバー、制御マイコンを駆使したバイオ実験を行うことができ、実験の内容に合わせてオプションラインナップから組み合わせを選択することでより幅広い実験に対応可能である。

MBS-LABについて
MBS-LABについて ©株式会社IDDK

サービスでは、実験装置の設計開発など準備から、衛星の打ち上げ、宇宙実験、地上でのサンプル回収までをワンストップで請け負う。

2025年度からサービスを開始する予定で、「いつでも」「どこでも」「だれでも」使える顕微観察技術MIDを微小重力などの特殊環境の「宇宙でも」あらゆる顧客にたいしてサービスを提供。

実現すれば、民間主導では日本初となる、人工衛星を利用した宇宙バイオ実験プラットフォームである。

宇宙バイオ実験プラットフォームについて
宇宙バイオ実験プラットフォームについて ©株式会社IDDK

様々な分野に貢献!実施予定の実験も

宇宙でのバイオ実験は、新薬の開発だけでなく、老化研究や長寿研究、有人宇宙開発のための研究など、様々な分野に貢献する。

実際に、この宇宙バイオ実験プラットフォームを用いて以下のような実験が行われる予定となっている。

宇宙でのミドリムシ培養実験

有人宇宙開発において、食料源や酸素供給源(光合成をおこなうため)としての可能性が期待されているミドリムシの宇宙培養実験である。

もともとは、宇宙実験を可能とする小型衛星を開発する株式源会社ElevationSpaceと、食用として利用可能なミドリムシの屋外での大量培養を世界で初めて成功させた株式会社ユーグレナが、共創を開始したもの。

この計画に、小型ポンプ分野のパイオニアである高砂電気工業とIDDKが加わり、条件であった200g以下という小型・軽量を達成し、ミドリムシ培養実験のための装置を開発した。

この装置は、2025年以降にElevationSpaceの衛星に搭載され、実験に使用される計画だ。

魚のウロコを用いた宇宙疾患治療薬の開発

宇宙環境での諸症状を予防・治療する薬の開発に向けた「魚のウロコ」の宇宙実験も、同社の宇宙バイオ実験プラットフォームを用いて行われる予定だ。

魚のウロコは、人間の骨と同じように体を支えたり、保護したりする役割を持っており、細胞を作る細胞と壊す細胞が共存するため、宇宙環境が骨に与える影響を評価可能だという。

この実験では、体内時計が人間のものと非常に類似しているゼブラフィッシュのウロコを用いて、宇宙環境による体内時計の障害に対してメラトニンが効果あるのかを検証。

3年後の2027年に実験を行う予定である。

宇宙バイオ実験装置の実証実験

今回の実証実験は、世界に先駆けて人工衛星を用いた宇宙バイオ実験プラットフォームの実証を行うものだ。

顕微撮影や流体操作を行う全自動実験装置MBS-LABを衛星に搭載し、宇宙(高度300~500㎞の低軌道)で装置の駆動実験を実施して地上に帰還する。

使用する衛星はATMOS Space Cargo GmbH(ドイツ)の人工衛星だ。

衛星に搭載する筐体
衛星に搭載する筐体 ©株式会社IDDK
ドイツ ATMOS社の人工衛星のイメージ動画 ©ATMOS Space Cargo GmbH

宇宙バイオ実験で未来をみんなで創る

今回の実証実験ではクラウドファンディングで得た資金が実際に実証に関する費用に充てられる。

宇宙実験は国際宇宙ステーション(ISS)という限られた場所でしか実施できていないが、ISSが2030年に退役することが決定している現在、人工衛星を用いて宇宙でバイオ実験を行い、地球にサンプルを持ち帰るシステムの開発が世界中で加速しているのだ。

IDDKは、日本独自の人工衛星を用いた宇宙バイオ実験のプラットフォームを構築して、世界に先駆けて運用を成功させることを目指している。

日本独自の宇宙バイオ実験サービスができれば、ISSや他国のサービスに頼らずに宇宙実験が気軽にできる場が整い、日本の研究を加速させることができるだろう。

衛星がある場所のような微小重力環境でしか起こらない現象が、新薬の開発や新しい物質の生成、新しい現象の発見や新素材・原材料の開発等を導く可能性があるのだ。

さらに、宇宙では筋肉の衰えや、骨密度の低下など、老化的現象が加速度的に進むため、老化研究に最適である可能性もあり、老化の抑止、健康長寿の実現に貢献できる可能性がある。

同社のクラウドファンディングの支援をすることで、そのような未来を一緒に実現できるのだ。

クラウドファンディング イメージ画像
©株式会社IDDK

さいごに

いかがでしたか。

IDDKの代表取締役CEOである上野宗一郎氏は、今回発表のプレスリリースの中で以下のようにコメントしている。

宇宙バイオ実験プラットフォームは、研究者や企業、政府機関など様々な方に活用頂きたいと考えておりますが、なかでも教育分野で活用できればと考えています。

「宇宙を使う」経験は、きっと将来宇宙で活躍する力になります。日本の子供たちに、そのような経験を提供できればと考えております。

このような試みをより多くの人に知ってもらい、支えて頂きたいとの想いからクラウドファンディングの実施をすることにしました。より多くの人が宇宙を使えるようにご支援を賜ることができれば幸甚です。

株式会社IDDK 代表取締役CEO 上野宗一郎氏(PRTIMESより)

同社の新しい技術は、現在の社会課題を解決して人々の生活を豊かにしていくだけではなく、将来にも繋げていくことができるのだろう。

クラウドファンディングのリターンには、キーホルダーやオリジナルTシャツ、MIDを使用した地上で使えるプロダクトなど様々ある。

興味のある方は以下のリンクよりご覧いただきたい。

IDDK クラウドファンディングページ

参考

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