世界中の大学生が火星探査機を開発し、4つのミッションの達成度を競い合うUniversity Rover Challenge(URC)2024の決勝大会が5月29日から6月1日まで開催される。
今回は、102チームの応募があった予選を勝ち抜いた38チームが10か国から出場。その中で、2006年の発足以降、史上初となる日本チームの決勝進出が決定した。
本記事では、URCと、決勝に出場する2つの日本チームについてご紹介します。
目次
URCとは
University Rover Challenge (URC) は、大学生・大学院生を対象とした世界最高峰のロボット工学コンテストだ。
次世代の火星探査車の設計と製作を課題としており、毎年およそ100を超えるチームが予選に出場。そのうち、書類とビデオによる審査を突破した約36チームが、決勝戦に出場できる。
決勝戦は、火星に近い環境とされておりNASAも訓練のために利用している米国ユタ州南部の砂漠で毎年夏に開催。
以下の4つのミッションが課せられ、その合計得点によって優勝チームが決定する。
- 科学ミッション:サンプルを採取し、生命の存在を調査
- デリバリーミッション:起伏のある地形を越えて様々な物体を運送
- 機器整備ミッション:ロボットアームを使用して模擬着陸船の操作・メンテナンスを実施
- 自律ナビゲーションミッション:目的の場所へ自動で移動
URC2024の決勝戦に2つの日本のチームが初出場!
URC2024では、採点結果が拮抗したことにより例年から2枠の出場枠が拡大され、合計38のチームが予選を突破。
日本の学生を主体とする2つのチームが、日本で初めて世界大会への切符を手にした。
ここからは、その2つのチームについて紹介する。
KARURA Project
KARURA Projectは日本とアメリカの学生が合同で国際的な宇宙開発に挑むチーム。
2022年9月に発足して以来、URCへの出場を目指して活動しており、今回は日本チームとしてだけでなく、国際チームとしてURCの予選を初めて突破した。
そんなKARURA Projectの大きな特徴は、やはり国際色の豊かさである。
日本の学生がアメリカのテキサスA&M大学の学生と合同でチームを組織しており、日米の拠点を中心に日本・アメリカ・インドの学生が60名ほど集まって国際的な開発を展開。
日本国内では長野・東京・富山など複数の拠点を持っているという。
このように様々な地域からメンバーが集まるKARURA Projectでは、連携を取りながら以下の3つのチームにわかれて、メンバーそれぞれの得意分野を宇宙と組み合わせて開発。
- エンジニア:探査機(ローバー)のハードウェア・ソフトウェアを開発する
- サイエンス:火星で生命を探すミッションに取り組む
- ビジネス :アウトリーチ・国際連携を行う
それぞれの国や地域から得意な技術や知見を持ち寄り、協力して人類が見ることのできる宇宙をより遠くへ広げていく、国境を超えた宇宙開発を目指しているのだ。
他にも、株式会社ダイモンが開発する超小型月面探査車「YAOKI」を使った宇宙教育合宿にて、教育活動を通じて宇宙のリーダー育成を実施。
そこでは、「KARURA mission」として研究分野の一部を小中学生と一緒に考えるアイデアソンなどを行っており、これまでに、御殿場・君津・淡路で開催された合宿に参加してきたという。
学生の頃からこのような活動に参加することで、将来は実際に世界を繋ぐ開発を遂行する人材になることが多くのメンバーの夢でもあり、そのような人材を輩出し続けることがKARURAのビジョン。
また、今までの日本になかった、大型の探査ローバーの開発を主軸とする学生団体として、今後も宇宙開発に夢を持つ後進の学生が世界を目指す場所であり続けたいと考えているとのことだ。
ARES Project
ARES Projectは、東北大学、慶應義塾大学の学生を中心に、全国から40名ほどの学生が集まった火星探査機開発チームである。
日本に学生がローバー開発を経験できる場がほとんど存在しないという背景のもと、日本で学生が惑星探査ロボット開発を経験できる場を作り出し、将来の宇宙開発を担う日本の若者に新たな環境を提供するために2022年3月に日本初となる学生による火星探査機開発チームとして発足した。
目標とするのは、以下の5つ。
- 世界最高峰のローバー大会へ出場し、上位入賞する
- 日本の学生宇宙開発において、探査ローバー開発という新しい分野を開拓する
- 日本の学生の技術力を高め、未来の宇宙開発に貢献する
- チームでの活動を実際に火星や月で活躍するローバーに役立てる
- 探査ローバーの技術を応用し、地球の環境問題を解決する
URCでの上位入賞を目指すのはもちろん、かつて生命が存在した可能性が議論されている火星を探査するロボットの開発によって地球の成り立ちや生命の起源の解明に貢献し、それを通じて将来の地球環境保護への道筋を立てる手がかりを見つけることを目指している。
また、ローバーの自動運転技術の開発や精密な作業を実現するロボットアームの技術を、惑星探査だけでなく、災害救助ロボットや自動運搬ロボットなどとして地上における幅広い領域に還元していくことも狙いの1つ。
さらに、ローバー開発を通した未来の宇宙開発を担う人材の育成も目指しており、ARES Projectが先陣を切って日本から世界に挑戦することで日本の学生にローバー開発の意義と面白さを伝えて宇宙開発における新たな選択肢を生み出し、日本の宇宙開発の底上げに貢献していくという。
URC2024のスポンサーには日産自動車も
さいごに、URC2024にスポンサーとして参加する、日産先進技術センター ・シリコンバレー(NATC-SV)についても紹介しておこう。
NATC-SV は、カリフォルニア州サンタクララに拠点を持つ、日産自動車株式会社の人工知能と次世代モビリティソリューションの研究施設。
ロボット工学の研究をコンピュータ、データ、社会科学等を組み合わせて行っている。
NATC-SVの副社長兼グローバルディレクターであるマールテン・シールハウス博士は以下のように述べているという。
「宇宙探査に興味を持つ世界中の才能ある若い STEM 人材が集まるURCを後援できて嬉しい。URCに参加する優れた人材が将来のインターン生や社員となることを期待している。」
日産先進技術センター ・シリコンバレー 副社長兼グローバルディレクター マールテン・シールハウス博士
日産自動車の長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」では、先進の運転支援技術や知能化技術をより多くのお客さまに提供し、その価値をより高めていくことを目指しており、2026年までに高速道路や自動車専用道路での自動運転技術を250万台以上に搭載して販売するという目標を掲げている。
また、2030年までに19車種のEVを含む27車種の電動車を投入し、2030年代早期からは主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とすることも目指しているのだ。
さいごに
いかがでしたか。
今回紹介した日本の2つのチームは、世界大会の出場に向けてクラウドファンディングを実施している。
出場には、移動費やローバーの輸送費等、数百万円以上が必要になるとのこと。
コンテストの入賞だけでなく、それ以上の目標を目指す両チームをぜひ応援してみてはいかがだろうか。
興味のある方は以下のリンクからご覧いただきたい。
世界で羽ばたく私たちの技術力!日本の学生が火星に挑む!! #KARURA
世界レベルの火星探査機を日本から〜ARES Project~