2024年12月24日、JAXA認定の宇宙ベンチャーである株式会社天地人は、宇宙ビッグデータを活用したWebGISサービス「天地人コンパス」に新たなデータとして「夜間光」を追加したことを発表した。
本記事では、「天地人コンパス」や、「夜間光」データの活用方法等について詳しくご紹介する。
目次
天地人コンパスの概要と特徴
「天地人コンパス」は、地球観測衛星のビッグデータを始めとする様々なデータ(宇宙ビッグデータ)を基に、解析、可視化、データ提供を行うWebGISサービス。
メンテナンスが必要な場所や、ビジネスを進めるために最適な土地を宇宙から見つけることができる。主な特徴は次の通り。
- 20種類以上の地理空間情報
- 最高10年分の衛星データ
- 宇宙ビッグデータとAIを活用した独自のアルゴリズム
具体的には、衛星から撮影した画像データをはじめ、降水量などの気象情報や、3Dマップに代表される地形情報、赤外線によって観測される地表面温度など、様々な衛星データを世界中のあらゆる場所で取得可能。
また、顧客が所有する地上データや、実績データなどを「天地人コンパス」のデータと組み合わせることで、AIアルゴリズムが進化し、複合的な分析を実現する。
これにより、客観的で正確な判断が可能となり、圧倒的なスピードと低価格で目的地を探すことができるのだ。
「天地人コンパス」でできること
「天地人コンパス」の活用例
天地人コンパスでは、インフラメンテナンスや農業、都市開発など、様々な目的に合わせてカスタマイズが可能。
ここでは、その具体的な例として2つご紹介する。
① 気候変動に応じた新たな栽培場所の調査
1つ目に、気候変動に応じた新たな栽培場所の調査が可能だ。
『条件分析機能』と『類似度分析機能』を活用することで、例えば2015年と2020年。地表面温度を比較し、温暖化の影響を視覚的に分析。
こうした技術を活用して、地球規模の気候変動に伴って移り変わる栽培適地を可視化し、より精度の高い判断をサポートできるのだ。
② 海外でのビジネス展開
2つ目に、農業、エネルギー、脱炭素、都市開発など、国際的なビジネス展開にも対応する。
「世界中の気象情報&環境情報閲覧機能」を利用することで、国境を越えて土地を評価。
世界中の気象データを閲覧できるため、各国の気象機関からその都度情報を入手する必要がなくなるのである。
プロジェクトに応じたコンサルサービスも
天地人は、顧客が抱える課題に合わせたデータ提供だけでなく、宇宙ビッグデータを活用した研究調査や事業開発を支援するコンサルティングサービスも提供している。
顧客に要望に合わせて、先行研究や技術動向、衛星データ、国内外の研究論文等を調査を実施し。その結果をもとに勉強会やアイデア創出ワークショップを開催。
さらに、事業化に向けた社内提案のアドバイス、事業化後の専門家アドバイスや販促・PRパートナーマッチングまでも支援。
「どのように活用すればよいかわからない」といった課題を持つ事業者でも、伴走型のサポートを受けることで、実際の事業に役立てることができるのだ。
「天地人コンパス」を活用した独自のサービスも開発
天地人では、この「天地人コンパス」を顧客向けに提供するだけでなく、同サービスをコア事業として社会課題を解決するため、下図のように様々なサービスを開発している。
これらのサービスは、「天地人コンパス」をベースに、現代社会が直面する課題解決に貢献している。これにより、宇宙ビッグデータの利活用はさらに広がり、様々な産業において新たな価値を生み出している。
「夜間光」データについて
衛星の夜間光データで経済活動を可視化!?
今回、天地人は「天地人コンパス」に新しく「夜間光」データを追加した。
このデータは夜間に地球を撮影し、光の分布を詳細に可視化したもの。都市部や空港、繁華街など、人々が集まるエリアの経済活動を視覚的に捉えることができる。
特に注目すべきは、ロックダウンの影響で経済活動が停滞していた2021年と、経済回復が進んだ2024年5月のデータを比較できる点である。これにより、社会経済活動の変化を直感的に把握し、都市や地域の成長を分析する新たな視点が提供される。
夜間光データは、従来の地理情報や衛星画像とは異なり、光の強弱から経済の動きやエネルギー消費の実態を捉えるユニークな情報源である。例えば、都市部の光の変化を分析することで、新規開発エリアの進行状況や人々の生活パターンの変化を推測することが可能となる。
多彩な活用シーン
夜間光データは、幅広い分野での活用が期待されている。その具体例には以下のようなものがあるだろう。
- 都市計画の策定: 光の分布データを活用し、交通網の整備や新規商業施設の設置計画に役立てる。
- 災害時の人流把握: 夜間における避難状況を可視化し、迅速な復旧支援を行うための基盤データを提供する。
- エネルギー効率の最適化: 電力消費の集中エリアを特定し、無駄なエネルギー使用の削減に繋げる。
- 観光資源の評価: 夜景やライトアップイベントの影響をデータで可視化し、地域活性化に寄与する。
- 環境モニタリング: 人為的な光の影響を測定し、自然環境への影響を評価する。
また、「天地人コンパス」ではデータを重ねて表示し、データごとの透過具合を調節できる。
例えば「冬の路面凍結リスク」と「夜間光」を重ね合わせた分析も可能。
同社エンジニアの高瀬 賢二 氏は、「路面凍結リスクが高い山間部にぽつんと光が重なっている場合、『このエリアでは何が行われているのだろう?』といった普段考えたこともないような新たな発見が得られる」と語る。
夜間光データ活用の展望
高瀬氏は、夜間光データについて以下のように述べている。
私たちが日常生活で目にする地図とは一風変わった世界が見えるデータに仕上がっており、宇宙は基本的に「暗い」ということを再認識できる新鮮さがあると思います。
空から「光」を眺めることで、経済活動や都市の広がり具合といった新たな切り口から、人類の営みを垣間見ることができます。
株式会社天地人 エンジニア 高瀬 賢二 氏
今後は、光の色彩表現や元となる人工衛星データの加工方法を調節してみると、さらに違った見え方になるため、試行錯誤してブラッシュアップして行きたいとのこと。
「天地人コンパス」に「夜間光」データが加わったことにより、同データの現代社会が抱える課題解決へのさらなる貢献が期待されるのだ。
さいごに
いかがでしたか。
「天地人コンパス」は、単なる地図ツールではなく、宇宙ビッグデータを活用した新たな可能性を秘めたプラットフォームだ。
「夜間光」データが持つ光の分布データの可視化は、都市計画やエネルギー効率の最適化だけでなく、環境モニタリングや観光資源の評価など、私たちの生活や社会に直結する分野でも大きな価値を発揮する。
「天地人コンパス」にはフリープランがあり、どなたでも無料で使用することができる。
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