Synspective、Airbusと戦略提携|SAR衛星データを欧州市場へ展開

日本の小型SAR衛星企業であるSynspectiveは2026年2月10日、欧州の大手宇宙企業Airbus Defence and Space(以下、Airbus)と提携したことを発表した。

本提携により、Synspectiveは、Airbusのポートフォリオに自社のSAR衛星※1データを提供する。日本の民間宇宙企業がグローバル市場の中で本格的に位置づけられていく事例として注目される。

本稿では、提携の概要とその戦略的意義を整理する。

Synspective×Airbus 提携概要

今回の提携では、両社はデータフレームワーク契約を締結することにより、Synspectiveが開発・運用するSAR衛星※1「StriX」シリーズによって取得される観測データを、Airbusが持つ販売ネットワークや地球観測データサービスに組み込む。Airbusは欧州を中心とする顧客に対し、同データを自社の衛星画像とあわせて提供していく。

※1 SAR衛星(合成開口レーダー衛星)とは…

地表に電波を照射し、その反射を解析して画像を作る観測衛星。光を使わないため夜間や雲の多い天候でも観測でき、天候に左右されにくく継続的な監視が可能で、地形変化や災害監視、船舶監視などに活用されている。

Airbusはこれまで、光学衛星およびSAR衛星によるコンステレーションを自社で運用してきた。これらの衛星データは、同社の地球観測サービスや販売網を通じて顧客に提供されている。

今回、Synspectiveの衛星データが加わることで、Airbusの顧客はStriXシリーズが持つ最高分解能25cmの高精細なSARデータにもアクセス可能となる。これにより、観測の再訪頻度向上や、カバーエリアの拡張が期待される。
特に、Synspectiveの衛星が採用する傾斜軌道を活用することで、海洋安全保障や天然資源管理、グローバル・ロジスティクスにおいて重要性の高い赤道地域のモニタリング能力の強化が見込まれる。

さらに、両社は顧客ニーズを満たす共同ソリューションの開発や機能拡張についても検討を進めていくとしている。

左:株式会社Synspective 代表取締役CEO 新井元行氏、右:Airbus Defence and Space, Head of Space Digital, Eric Even氏
左:株式会社Synspective 代表取締役CEO 新井元行氏、右:Airbus Defence and Space, Head of Space Digital, Eric Even氏 (Synspectiveのリリースから引用)

Airbusとの提携が持つ戦略的意義

ここからは、本提携がSynspectiveにとってどのような戦略的意味を持つのかについて考察する。

Synspectiveにとっての戦略的意義

Synspectiveのように衛星コンステレーションを構築・拡大していく企業にとって、取得したデータを継続的に販売できる市場基盤の確立は、事業の成否を左右する要素の1つであり、極めて重要である。
衛星運用数が増えれば取得データ量も増大するが、販売先が十分に確保できなければ投資回収は難しい。

今回の提携により、欧州における安定的な販売チャネルを確保できれば、海外売上比率の向上や長期契約の獲得につながる可能性があり、同社のデータビジネスの収益安定性を高める効果が期待される。

パートナーがAirbusである理由

欧州は、安全保障や国境監視、災害対応といった公共用途で衛星データの活用が制度的に進んでいる地域であり、政府・防衛機関を中心に安定した需要が存在する市場である。

その中でAirbusは、宇宙・防衛分野において長年にわたり地球観測衛星の運用とデータ販売を手がけており、欧州各国の政府機関や防衛関連組織に対して継続的にデータを提供してきた実績を持つ。既存の調達網と顧客基盤を兼ね備えた、同地域を代表する販売事業者の一つだ。

Synspectiveが単独で欧州市場に参入し、こうした公的顧客との関係を一から構築するには、多大な時間とコストを要する。Airbusと連携することで、すでに確立された販売チャネルと信頼関係を活用できる点は、大きな参入メリットといえる。

また、同地域にはフィンランドのICEYEのような競争力の高いSAR事業者も存在する。ICEYEは日本のIHIと協力関係を築き、事業展開を進めている。その中でSynspectiveがAirbusとの連携により販売チャネルを確保することは、競争環境に対応するうえで重要な布石といえるだろう。

さいごに

SynspectiveとAirbusの提携は、日本の宇宙スタートアップが単独で海外市場に挑む段階から、グローバル企業と連携して市場を開拓する段階へ移行しつつあることを示している。

衛星ビジネスにおいて重要なのは、打ち上げや開発だけではなく、取得したデータをいかに継続的に販売できるかという点である。その意味で、今回の提携は事業モデルの成熟を示す一歩といえる。今後、Synspectiveが欧州市場でどの程度の実案件を獲得できるかは、日本の民間衛星企業が世界市場で存在感を高められるかどうかを測る指標の一つになるだろう。

また、本稿で紹介した企業を含め、日本の宇宙関連企業では人材採用が進んでいる。業界への参画に関心のある方は、宇宙分野特化の転職マッチングサービス「スぺジョブ」をぜひご確認いただきたい。

スペジョブが航空宇宙産業に特化した人材サービスであることを説明した図

参考

SynspectiveとAirbus Defence and Space、SAR衛星データの供給に関する戦略的提携を発表(Synspective, 2026-02-12閲覧)

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