SpaceXがスターシップの5回目試験に成功 ~スーパーヘビー空中キャッチの理由とは
©SpaceXの画像を使用

2024年10月13日21時25分(日本時間)に、SpaceXの超巨大ロケット「Starship(スターシップ)」の5回目の打ち上げが実施された。

今回の打ち上げでは、71mもある下段のブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」を発射場に帰還させ、「Chopsticks」と名付けられたアームで捕獲することに成功。また、上段のスターシップ宇宙船も宇宙空間を飛行した後に大気圏に再突入し、インド洋に着水した。

本記事では、打ち上げテスト内容・結果詳細ならびに、スーパーヘビーブースターを空中で捕獲するメリットについて解説する。

スターシップとはどんなロケット?

SpaceXが開発している超大型ロケット「スターシップ」は、人や貨物を地球周回軌道や月、火星、さらにはその先まで運ぶために設計された、史上最大のロケットだ。

大きな特徴は以下の3つ。

  1. 史上最大の大きさと打ち上げ能力
  2. 捨てずに繰り返し使える完全再利用型
  3. 打ち上げスパンの短さ

まず、スターシップは、全長約121メートルを誇り、下段の「スーパーヘビー」ブースターと上段の「スターシップ」宇宙船から構成されている。

およそ100~150tものペイロードを運ぶ能力を持ち、最大100人の乗組員と貨物を輸送可能。月面基地の建設や火星探査のため、また地球上のどこでもを1時間以内で移動するための輸送手段として期待されている。

次に、従来の一般的なロケットは一度打ち上げられるとその多くの部分が使い捨てられて再び使うことはないが、「スターシップ」は再利用可能。機体を繰り返し使用することで打ち上げコストの大幅な削減を目指している

最後に、一度使用して返ってきた機体をすぐに点検・打ち上げ準備を完了させて再度打ち上げることが可能。飛行機のように着陸・打ち上げ(離陸)をスムーズに行うことで、高頻度に人や貨物を宇宙または地球上のどこかに輸送できるのだ。

スターシップ
スターシップ ©SpaceX

打ち上げテスト詳細と結果

4回目の打ち上げ結果

2024年6月に行われた4回目(前回)の打ち上げでは、「スターシップ」は初めてブースター「スーパーヘビー」、宇宙船「スターシップ」ともに地上への帰還に成功した。

下段の「スーパーヘビー」は「スターシップ」から切り離された後に、エンジンの逆噴射を行うことでメキシコ湾洋上に垂直に軟着陸。

上段の「スターシップ」も予定軌道に到達して宇宙空間を飛行した後に大気圏に再突入し、プラズマに覆われて耐熱タイルが剥がれるなどの損傷に見舞われながらも、無事インド洋に着水した。

Starship 4回目の打ち上げ映像 ©SpaceX

5回目のテスト内容と結果

5回目となった今回の打ち上げの大きなミッションは、やはり『スーパーヘビーブースターの空中キャッチ』だ。

洋上に着陸するのではなく発射場「Starbase」に帰還させ、発射台「Mechazilla(メカジラ)」に搭載された巨大なロボットアーム「Chopsticks」によって空中でブースターを捕獲する。

無謀のようにも思えるチャレンジであるが、SpaceXの副社長を務めるビル・ガーステンマイヤー氏は、「4回目のフライトでは0.5センチの精度で海に着陸したので、発射台に戻れる可能性は十分にあると思う」と述べていたという。

また、宇宙船「スターシップ」に関しては、前回同様に宇宙空間を飛行した後に大気圏に再突入し、インド洋に着水する予定であった。

結果、打ち上げテストは達成したとSpaceXは報告している。

発射後、「スーパーヘビー」に搭載された33個のラプターエンジンは綺麗に全て着火して上昇。

下段を切り離す前に上段「スターシップ」のエンジンに着火する『ホットステージング』にも成功し、「スーパーヘビー」は体勢を整えながらゆっくりと降下。そして、見事に空中で捕獲された。

©SpaceX

一方の宇宙船「スターシップ」も、「スーパーヘビー」を切り離した後に順調に飛行して、インド洋に着水成功。

大気圏突入時の熱などから受けるダメージは前回よりも軽く見え、Starlinkを通じて中継されていた機体の映像も前回より安定しているように感じられた。

また、着水後は爆発したものの、その様子が洋上のカメラにて中継されており、「スターシップ」もほぼ予定通りの場所に着水したことが示唆されていた。

©SpaceX

スーパーヘビーを空中で捕獲するメリット

今回の打ち上げでは、高い制御技術を必要とする『空中キャッチ』に1回目で成功して注目を集めたが、なぜ「スーパーヘビー」を射場破壊のリスクもあるこの方法で回収するのだろうか。

その大きな理由としては、以下の2つがあるだろう。

  1. 打ち上げコスト・重量の削減
  2. 打ち上げ頻度の向上に向けた整備時間の削減
着陸脚で着陸する際のイメージ(Falcon9ロケット)
着陸脚で着陸する際のイメージ(Falcon9ロケット)©SpaceX
空中捕獲されたスターシップ
空中捕獲されたスターシップ(©SpaceX のライブ中継より)

1つ目に、着陸脚を搭載するための費用や着陸脚分のロケット重量を削減できることである。

着陸脚分の重量が削減できれば、その分少ない燃料で飛行したり、輸送貨物に重量を割いたりすることが可能となる。

2つ目に、打ち上げ頻度の向上に向けて、整備時間の削減が可能であることが挙げられる。

SpaceXは「スターシップ」ロケットを宇宙を経由した地球から地球への旅客輸送にも利用することを考えており、そうすると、「スターシップ」は旅客機のように1日に複数回、飛行できるのが理想だろう。

「スターシップ」では、着陸脚ではなく発射台で空中捕獲することで、従来必要とされていた着陸脚の点検時間を削減できる。さらにブースターを発射台に即座に再配置できるため、次の打ち上げを1時間以内に行うことが可能とされているのだ。

さいごに

いかがでしたか。

今回のStarshipの打ち上げ成功とSuper Heavyの空中での捕獲は、宇宙輸送技術における重要なマイルストーンとなった。

空中での捕獲に成功したことにより、ロケットの整備効率が大幅に向上し、再利用のサイクルがさらに短縮される可能性が示された。

この技術を1回の試験で成功させたSpaceXの技術力には目を見張るものがある。6回目の打ち上げ試験にも期待したい。

参考

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