
宇宙開発が拡大・商業化する中で、その基盤を支えるシステム開発企業の存在は欠かせない。
その一部を担ってきたのが宇宙システム開発株式会社(SSD:Space Systems Development Corporation)である。同社はソフトウェア技術を武器に、宇宙開発を「宇宙機による無人活動」と「宇宙で人が行う有人活動」の両面からサポートし、多くの実績を持つ企業だ。
本記事では、同社の取り組みと魅力についてご紹介する。
目次
宇宙システム開発株式会社(SSD)とは
宇宙関連企業や団体が集積する東京都中央区・日本橋に本社を構える宇宙システム開発株式会社(SSD)は、人工衛星の運用から宇宙飛行士の実験まで、“見えない基盤”で宇宙ミッションの成功を支える企業である。
同社の創業は2005年。宇宙に興味を持つ仲間が集まり、宇宙開拓をあらゆる側面から推進・支援するために設立された。
それ以降、「人類の宇宙進出への貢献」を軸に、宇宙機に搭載されるシステムのソフトウェア開発や国際宇宙ステーション(ISS)での実験支援、さらには宇宙産業の人材支援など、様々なプロジェクトに取り組んできた。
そんな同社の強みは、宇宙で行われるミッションを確実かつ安全に遂行するためのシステム技術にある。
宇宙空間という過酷な環境下で、計画通りにミッションを完了させるためには、地上からの緻密な支援と制御が不可欠だ。宇宙システム開発(SSD)はその一端を担っており、トップレベルの技術力を有している。
さらには、宇宙開発の現場で培った技術・ノウハウを、地上の課題解決にも応用する取り組みも実施。例えば、防災計画策定を支援するシミュレータや、大規模災害時や事故の時に重傷度・緊急度による傷病者の振り分けを行うデジタルトリアージシステムなどを開発している。
宇宙システム開発株式会社(SSD)の宇宙事業
宇宙ミッションを成功させるために不可欠な存在として、高い技術力を発揮してきた宇宙システム開発株式会社(SSD)。
では、具体的にどのような領域でその力が活かされているのだろうか。
ここからは、同社の宇宙事業における代表的な取り組みを、3つの領域に分けてご紹介する。

宇宙機の頭脳をつくる ―宇宙機関連ソフトウェア開発
宇宙システム開発(SSD)が最も得意とする分野のひとつが、人工衛星をはじめとする宇宙機システム向けソフトウェアの企画提案・設計・開発である。軌道・姿勢計算ソフトウェアや衛星追跡管制システム、船舶自動識別装置用計画ツールといった宇宙機の“運用の頭脳”となるシステムだ。
これらは、宇宙空間での観測や通信、あるいはスペースデブリの回避などといった重要な判断に直結するものであり、ミッションの成否を左右する中核的な役割を担う。
特に、自社開発の「SDL(Spacecraft Dynamics Library)」は、こうした衛星の軌道・姿勢計算を支える高性能ライブラリとなっている。Javaで構築されており、OSに依存せず汎用的に使えるのも特長だ。
また、「BISMOPS(Building Infrastructure for Spacecraft Mission Operation Planning System)」は、宇宙機がいつ・どこで・何をするかといったミッション運用計画を柔軟かつ効率的に設計するための土台。ミッションシステムはほぼ衛星ごとに新規開発が必要であるが、BISMOPSを使用すれば衛星固有の機能のみを付加することでシステムを容易に構築することが可能となる。
これらの同社のシステムは、実際に、JAXAをはじめとする様々な宇宙関連企業に幅広く利用されている。宇宙システム開発(SSD)はソフトウェア技術を武器に、“ミッション成功のための前提条件”をつくっているのだ。
宇宙での暮らしを支える ―環境制御・生命維持システム関連
次に、環境制御・生命維持システム(ECLSS)関連である。
Starshipなど巨大ロケットや民間月面着陸船の開発が進んでおり、「月面基地」や「火星移住」がもはやSFではなく現実の計画となっている現在。空気をつくり、水を再生し、適切な温度と湿度を保ち続けるといった地球では当たり前の状況を宇宙空間で実現するための基盤となるのが、環境制御・生命維持システム(ECLSS)だ。
宇宙システム開発株式会社(SSD)は、環境制御・生命維持システム分野における先進的なソフトウェア開発と地上実験支援の両面で、その開発を支えている。
自社で開発したシミュレーションソフト「SICLE(サイクル)」は、水の再生、酸素の生成、二酸化炭素の除去・分解といった循環プロセスを再現することが可能。
SICLEは、青森県六ヶ所村にある閉鎖型生態系実験施設での研究成果を基にした技術の知見や、米国ユタ州の砂漠での火星居住模擬実験に参加した知見をもとに構築されたもので、JAXAや宇宙関連企業での解析等にて利用された実績もある。
さらに宇宙システム開発株式会社(SSD)は、ソフトウェアの開発にとどまらず、実際の環境制御・生命維持システム(ECLSS)の地上装置の開発支援も行い、装置性能の評価、改善提案まで手掛けている。
宇宙空間で「人が生きる」ことを可能にする。そんな根本的かつ壮大な課題に同社は挑んでいるのだ。
宇宙飛行士をサポート ―ISS 日本実験棟「きぼう」の実験運用支援
さいごに、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」で行われる宇宙実験の運用支援である。
宇宙飛行士をサポートし、連携して宇宙での実験を成功に導く、重要な業務である。主な業務内容は2つ。宇宙飛行士や地上管制要員の行動計画を支える実験手順書の作成と、宇宙飛行士の実験作業のリアルタイム支援だ。
ISS「きぼう」での実験は、限られた時間のなかでスムーズかつ正確に作業を進める必要がある。そこで同社は、実験の目的と内容を正確に理解し、装置や機材を誰が、いつ、どのように操作して作業を進めるかを詳細に記述した手順書を作成。宇宙飛行士が確実に実験を遂行できるよう設計している。
さらに、実験中はコマンドやテレメトリ(データ)の送受信を通じて地上から宇宙飛行士をサポート。実験内容によっては宇宙飛行士と遠隔で連携しながら装置を動かすこともある。
このように、ISS「きぼう」での実験において、宇宙システム開発株式会社(SSD)は単なる補助的存在ではなく、実験の進行をリアルタイムで管理・調整する「もうひとつの手」としての重要な役割も担っているのだ。
宇宙ミッションの確実な遂行を支える存在
宇宙システム開発株式会社(SSD)の魅力は、宇宙ミッションの確実な遂行を支える技術力と、実績に裏打ちされた信頼性があることだろう。
同社が取り組んできたのは、人工衛星の軌道や姿勢を正確に導き、計画通りにミッションを完了させるためのソフトウェア開発やシミュレーション技術、そして、宇宙飛行士による有人実験を支える運用設計と地上支援といった、「宇宙開発における中核機能」の部分だ。
こうした取り組みには、次のような特長がある。
- 計画通りに動かす“確実性”を追求した開発
- 着実な現場支援に強み
- 応用に向けた視野の広がり
1つ目に、宇宙システム開発株式会社(SSD)が扱う宇宙機運用ソフトウェアは、衛星のミッション達成に直結し、一つのミスも許されない領域だ。同社はそうした技術を一手に担い、確実性を優先に開発・運用を行ってきた。
2つ目に、国際宇宙ステーション「きぼう」における実験支援業務における機器の操作やトラブル対応といった“最前線”の支援は、単なる技術力にとどまらず、現場を理解し、細部に目を配る総合的な運用力が求められる領域である。
3つ目に、宇宙技術を地上の課題解決に応用する視野の広がりである。災害時の被害想定や応急対応を支援するシミュレーションツールの開発などは、宇宙開発で培ったモデル構築力や解析力の延長線上にあるものであり、技術の社会実装という点でも意義が大きい。
そして、宇宙システム開発(SSD)のもう一つの魅力が「未来を見据えた自主的な探求」にも力を入れている点だ。
たとえば、社員が自らテーマを提案し、会社がその活動を支援する「社内研究会制度」では、宇宙輸送、環境制御・生命維持システム(ECLSS)、ロボティクスといったテーマで研究活動が行われている。こうした制度からも、同社が現場の確実性を追求するだけでなく、次世代の宇宙技術への挑戦を大切にしていることがうかがえる。
宇宙開発に不可欠な領域で価値を発揮し続けている宇宙システム開発株式会社。次の時代の宇宙開発においても、その存在感はますます高まっていくだろう。
さいごに
いかがでしたか。
宇宙機や宇宙飛行士の活躍の裏には、それを支える“見えない力”がある。宇宙システム開発株式会社(SSD)は、まさにその基盤を担う存在として、着実に、そして確実に宇宙開発を支えてきた。
軌道や姿勢の制御、ミッション運用の計画、環境制御システムの開発、そして宇宙飛行士の地上支援――いずれもミスが許されない分野で実績を重ねてきた同社の仕事は、宇宙開発の「成功の条件」をつくる仕事と言っても過言ではない。
これから宇宙ビジネスがさらに拡大していくなかで、同社のような企業の重要性はますます高まっていくだろう。ロマンと現実の狭間で、“確実に動く宇宙”を支える存在として、同社の今後の活躍に注目したい。
また、宇宙システム開発株式会社(SSD)では現在、複数のポジションで人材を募集している。 宇宙業界での経験は問わず、理系知識やシステム開発経験を活かしたい方に門戸が開かれている。
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