今回の記事は、SPACETIDE代表理事兼CEOの石田 真康さんに皆さんが疑問に思っている宇宙ビジネスについて色々取材してきたので、そのインタビュー記事になっております。
今のNew Spaceで石田さんより宇宙ビジネスに詳しい人はまずいないです。
そんな石田さんから
- 注目の宇宙ベンチャー企業ってどこ?
- 今の宇宙産業の現状は?
- 宇宙産業はこれからどうなるの?
この3つの観点で皆様にお伝えしたいと思っております。
それでは、SPACETIDE石田真康の独断劇場をお楽しみください。
目次
注目の宇宙ベンチャー企業はここだ!!!
今、世界で最も熱い宇宙ベンチャー企業はどこ?
ー 今の宇宙ビジネスで注目している技術やベンチャー企業について教えていただけますか?
石田 氏:
世界的に見たら、多分誰しも注目する企業は一つ共通の会社があって、それはやっぱりspaceXですよね。
彼らが2000年ぐらいに創業して20年経って、この10年は見方によっては、まさにspaceXの一人勝ちの時代です。
もちろん、宇宙ビジネス全体の盛り上がりは当然ある。ただ産業が広がって多くのプレイヤーが参入してはいるものの圧倒的な勝ち方をしているという意味でいくとやはりspaceX。
打ち上げで言ったら圧倒的にシェアが強くなってきたし、人を宇宙に連れて行く宇宙旅行みたいなものをすでに実現しているし、衛星通信に関しては圧倒的なトップランナーになっている。
そう言う意味では、幾つかの分野で圧倒的に1位として走っているspaceXがやはり次に何を仕掛けてくるのかそれがやっぱり業界全体の大きなトレンドを決めています。
そもそもspaceXのやっていることって一個一個が後から見てみると全て繋がっているんですよね。
最初にロケットを作りました
↓
それが有人化されました
↓
そのロケットの競争力を使って、衛星を沢山打ち上げています
↓
そして、その衛星が既存の通信サービスを支えている
このような流れです。
そこにある種の企業戦略としての美しさがあって、結局、彼らの仕掛けることが業界に大きな影響を与えているのは事実なので、やはりそこは見ておかないと業界の次の変化というものが捉えられなくなります。
あるいは、そこに対してどう差別化するかという方針の取り方をする企業も今増えてきていますよね。
日本で注目の宇宙ベンチャー企業はどこ?
ー やはり、spaceXは避けては通れないですよね・・・では、日本の宇宙ベンチャー企業で注目している企業はどこですか。
石田 氏:
日本の宇宙ベンチャー企業だとやっぱり資金調達額的にもアストロスケールさん、ispaceさん、Synspectiveさんですね。宇宙ベンチャー企業といっても、三社三様やっていることは、全然違います。
まず1つ目のアストロスケールは、宇宙ゴミの会社で始まりましたが、今や軌道上サービスの会社になっています。
アストロスケールは、宇宙を持続的な環境で使っていこうという文脈で、本当に世界的なオピニオンリーダーとして活躍している企業なんです。
日本発の企業であそこまで世界のコミュニティの中に入ってかつそのコミュニティをリードしているというのはやはりなかなか無いんですよね。
これは別に宇宙の業界を除いてもなかなかない例だから、やはりアストロスケールさんの取り組みというのは、動き方も含めて、多くの方にとって学びになることだとは思います。
ー なるほど、2つ目にあげた月面探査のispaceはどのようにお考えですか。
石田 氏 :
ispaceはまた全然違ったアプローチだと思っています。月にフォーカスはしており、強みとしては、やっぱり元々民間発の月面探査チームHAKUTOというのを立ち上げた経緯もあって、多くのスポンサーとかファンがいますよね。
ただ実は面白い話、ああいう形でビジネスを回しながらもそのビジネスに色々な企業さんがスポンサーとして入ったりしてる会社は、ある種のファンて言葉を使わないんですよね。
ispaceはCREWって確か言ってるはずですけど、CREWの方々が自分たちの夢とか思いを乗っけてもらえるプログラムを企業が提供する。あれはあれで、やはり希有な形なんですよね。
それこそ今まさに月に向かっているispaceもやっぱり多くの方にとって学びがある。
ー なるほど、面白い。最後のSynspectiveについても詳しく教えてください。
最後のSynspectiveは、小型のレーダー衛星の会社です。
日本には他にQPS研究所といった会社もありますが、レーダー衛星はやはり非常に可能性があります。
実は、世界的に小型のレーダー衛星で良い製品が作れる人達って数が限られているし、レーダー衛星は、光学の衛星に比べてまだまだ世界全体のデータ量が足りなかったりします。
レーダー衛星のデータ解析は難しいからこそ、その解析のサービスに可能性があって、今後、盛り上がりを見せてくると思います。
そこに偶然って言ったら変かもしれないですが、日本にポテンシャルを秘めた会社が2社もいる。
総括すると、今挙げた宇宙ベンチャー企業は、それぞれの特徴があり、技術を持っていて、注目を集めている。
やはりこれらの分野は日本の一つの大きな特徴として政府もすごい注目していますし、彼らのようなトップランナーがどこまで突き抜けて成長してくれるかによって、次の世代のスタートアップとか次の次の世代のスタートアップがより大きな夢を見られるかどうかがかかってくると思います。
僕は何かそういうトップランナー達がまずは大きく成功してもらうというのが今の日本の宇宙業界にとって、一番大事かなと思っております。
今の宇宙産業の現状って?
日本の宇宙産業の課題はどこか
ー今、現時点で日本の宇宙産業の課題、すなわち一番ネックになっている部分ってどういうところですか。
石田 氏 :
僕はもう政府の様にさせて頂いているから、分かりますけど、いっぱいありますよね。。。
自国の需要が少ないというのは明確にあって、これはやっぱり国の宇宙予算が少ない。
例えばアメリカ、ヨーロッパと比較するとやはり予算の桁が一個違うよねというのがあります。
やはり予算が限られている中で、色々なことをやってきた経緯もあるので、今でも一個一個のことに対してかけられる予算が少ない。
例えば、新しい企業や技術が出てきた時に、政府が援助しようといった柔軟な対応ができるだけの潤沢な予算がありますかと言われるとなかなか無かったりするんですよね。
なのでやはり多くの企業にとって、事業をやって行こうとした時にまずは自国の政府向けにビジネスをするのが、この宇宙業界では結局、黄金の方程式なわけです。
ただ黄金の方程式の一個目のところが、うまく回りにくかったというのはこれまでの課題でした。
しかし、ここ数年ですごい政府の方も考え方が変わってきていて、日本の宇宙予算って2年前までが大体、過去10年ぐらいずっと3500億円だったんですけれども、この2年でグッと伸びて今年は5200億円になっています。
つまり2年で約1.5倍ぐらいになったんですよね。
恐らく今後も、宇宙の日本における重要性というのは高まってくる一方だと思うので、そういった中で民間企業にとって日本政府も、事業の出口になるし、それを基点としながら世界の事業も取ることもできる。
これが好循環になって、宇宙産業が回る。それがまさに理想の形だと思います。
日本でも黄金の方程式というものが整っていくと、新しい活動をしている方々の取り組みというところのベースラインが整う。
ベースラインが整うと、安心して新しいことにチャレンジできるという風にこれが今の日本の産業を盛り上げていく上で非常に重要なことだと思います。
今、宇宙産業が伸びている国はどこか
ー宇宙と聞くと、アメリカとソ連すなわちロシアが強いってイメージが先行していて、その後に日本が台頭していると思っているのですが、これから宇宙産業の影響力が強くなる国ってありますか。
石田 氏 :
もちろん、いっぱいありますよね。宇宙先進国って言葉は、最近もう使わなくなりましたけど一時期よく使われてましたよね。
例えば宇宙ステーションに参加をしている国々です。アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、もちろん日本も。
やはり50年、それ以上の宇宙開発の歴史があるので、ここは引き続き重要な国であることは変わらない。
ただやはり昨今宇宙開発に非常に力を入れてるニュープレイヤーは、中国とインドですよね。
特に中国は全方位的に政府が予算をつけて宇宙開発を進めてますし、実は民間の宇宙産業というのも今、急速に育っている。
インドも同じで、従来政府が全部宇宙開発をやってきたんですけれども、2年前ぐらいですかね、政策を大きく変えて民間の宇宙産業を育てることになったのです。
現在インドは、舵を切って非常に新しく、革新的な企業が生まれてきている。
他にもオーストラリアとか、ヨーロッパだったらルクセンブルク、あるいは英国、中東の国も非常に宇宙に積極的ですよね。
とにかく国単位でもニュープレイヤーが宇宙に今こぞって、参加してきています。
ただ面白いことに、こういったニュープレイヤーは、長年、国の宇宙機関がやってきた技術基盤というものが必ずしもないので、どちらかというと、産業としての宇宙を作ろうしています。
すなわち、色々な企業を誘致しましょうとか新しく出てきている企業をもっと援助しましょうというようなアプローチが加速しているんですよね。
それに対して、歴史がある宇宙先進国は、国が宇宙の技術を持っていたりするので、その技術をいかに民間が事業として活用していくのか、といった流れです。
まぁ、宇宙が盛り上がっているといっても、各国で戦い方が違うし、色合いも違う。
従来宇宙をずっとやってきた限られた国の周辺に新しい国々って言うのが、今、二重三重に増えてきているので、非常に多極化が進んでいる時代ですよね。
ーなるほど、世界的に見たら非常に好循環ですね。
石田 氏 :
確かに好循環かもしれませんが、裏を返せば、物凄く競争が厳しくなっているんですよね。だから、世界中の国の宇宙の計画とか、スタートアップの成長計画というのは、全部足し合わせると多分、産業全体の予測値より数倍大きいという事です。
要するにやっぱり5年10年スパンで見たら、勝ち負けがはっきりつく時代でもあるのかなと僕は思います。
ーシビアな現実ですが、面白いですね。
石田 氏 :
大きな変化のタイミングにあるというか、もう変化が起きていて、10年20年経っていますけど、この変化が恐らく今後も続いていくので、10年後、20年後の世界を予測するということは、難しい時代になっているんだと思います。
ただ、こういう変化の時代が好きな人にとってはとっても楽しい時代なのだと思います。
さいごに
SPACETIDEの今後の展望とは!?
ー非常にわかりやすい説明ありがとうございました。少し話は変わりますが、SPACETIDEは今、アジア最大級の規模を持っている宇宙カンファレンス団体として、地位を確立している認識ですが、今後の展望を教えていただいてもよろしいでしょうか。
石田 氏 :
はい。一つはもっと開かれた宇宙産業になると良いなと個人的には思ってます。
開かれたってどういう意味かというと、世界中の宇宙のイベントとか、コミュニティってなんかこう宇宙宇宙しているんですよ。
要するに宇宙の人ばっかりいるんですよね、当たり前ですが。笑
けど日本で今起きていることと言うのは、従来宇宙をやっていなかった色々な企業さんが宇宙業界に入ってきているということ。
それこそ自動車メーカーさんがいたりとか、航空会社さんがいたりとか、商社さんがいたりとか、電機メーカーさんがいたりとか。
まさに色々な方々が宇宙をやる時代になってきていて、開かれた宇宙産業になりつつあると思うんですけども、意外と世界も含めて必ずしもそうではなかったりする。
GAFAとかは宇宙に凄く興味持っていますけどね。
だからこれからの宇宙産業を大きくするためには、宇宙宇宙しているだけだと、やはり閉鎖的になってしまうし、ビジネスの機会も失ってしまう。
なので、ですね、もっと色々な産業が入ってきてですね、 どこまでが宇宙産業かがよくわからない。
これが理想の宇宙産業だと思います。
そういうコミュニティを日本はもちろんですけど、アジアとかアジア太平洋地域、ひいては本当にグローバルで作れると良いなという風にSPACETIDEでは思っています。
それが僕らの今の大きな挑戦です。これから宇宙ビジネスに興味を持つ方々が益々増えることを願っています。
何かをしてみたい人に一言
ー本当に魅力的な挑戦だと思います。最後にですが、この記事を読んでいるこれから何か挑戦したい人達に一言いただければと思います。
石田 氏 :
はい。まずはどんな形であれ何かに踏み込んで、始めてみることが一番早いのかなと思います。
僕自身宇宙の活動を始めるきっかけになったのは、ispaceさんが元々やっていたHAKUTOでプロボノメンバー、いわゆるボランティアメンバーで参加した2012年からです。
今年でちょうどプロボノに参加してから、すなわち宇宙活動を始めてから丸10年なんですけど、週末のボランティアで始めて、海外とか行きながら色々なものに触れてきました。
これがきっかけで宇宙業界で何かをやりたいなって、何となく魂が宿った瞬間があったので、SPACE TIDEを始めました。
要するに、何か漠然とした宇宙に対する興味というものから、何か動いてみたらいい。
そうすると段々形になっていくと思うので、形になったら起業したって良いし、そういうことをやっている、企業さんには行ったりした方いいと思います。
そういう風に何かステップバイステップ出来るような機会というのがここ10年ですごい増えたと思うので、やってみるべきです。
とにかく考えているだけだと、イメージしているだけだと、ウェブを見ているだけだと前には進まないので、とりあえず何か触れてみる。
すると自分がそれが好きかどうかが分かる。好きだったらやってみる。このようなプロセスで物事に挑戦するのが良いのではないでしょうか。
補足
SPACETIDEについて
SPACETIDEは2015年に作った非営利団体。
SPACETIDEのミッションは宇宙ビジネスの新しい潮流をつくるということ。
主な活動として、宇宙ビジネスカンファレンスSPACETIDEを開催。2015年に初開催してから、今年の2022年7月で7回目になっており、今や国際色豊かなアジア最大級規模の宇宙イベントになっている。
代表理事 兼 CEOの石田 真康について
石田 真康
共同設立者 代表理事 兼 CEO
一般社団法人SPACETIDEの共同創業者 兼 代表理事 兼 CEOとして、宇宙ビジネスの発展と拡大を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE]の主宰など産業横断的な活動を実施。
グローバルコンサルティングファームA.T. Kearneyにて宇宙業界、自動車業界を中心に15年超の経営コンサルティング経験。
内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会 委員として宇宙産業振興を支援。日経産業新聞および日経デジタルで「WAVE」を2018年より連載中。また著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。2003年 東京大学工学部卒。
SPACE TIDE 2022 YEAR-ENDについて
SPACETIDEが主催するSPACETIDE 2022 YEAR-ENDという宇宙業界の大忘年会が12月16日午後16時から東京で開催されます。
コンセプトとしては、カジュアルな宇宙イベントです。
普段のSPACE TIDEは、頑張ってディスカッションしよう、何かそこから生み出そうというイベントですが、今回のは、年末だし振り返りとお疲れ様会みたいな感じでやろうというのがYEAR-ENDのイベント。
ただ机に座って考えているだけでは何も生まれません。
石田さんがおっしゃていたように是非、新しいことを始める第一歩として、SPACE TIDE YEAR ENDは気楽に参加できるので、是非参加してみてください。
申し込みは↓の画像をクリック
参考:
石田さん注目のベンチャー企業一覧