スペースデータ、世界初の宇宙ステーション開発プラットフォームOSを公開
©Space Connect株式会社

2024年11月11日、株式会社スペースデータは、宇宙ステーションの共同開発が可能なオープンプラットフォーム「Space Station OS」をGitHubで公開した。本記事では、この画期的なOSS(オープンソースソフトウェア)の概要とその背景について紹介する。

Space Station OSについて

OSの概要

「Space Station OS」は、宇宙ステーションの設計や運用に必要なソフトウェアやシミュレーション環境を提供するオープンソースプラットフォームである。

ROSを活用した宇宙ステーション制御ソフトウェアとしては世界初であり、異なる企業や国が開発した宇宙ステーション間で共通に動作する点が最大の特徴である。

この共通プラットフォームにより、宇宙ステーションの開発・管理・運用が容易になり、国際的な共同プロジェクトへの柔軟な対応が可能となる。また、GitHub上で公開されたソフトウェアとシミュレーション環境を活用し、世界中の開発者との共同開発が実現することで、宇宙の民主化がさらに加速することが期待されている。

©株式会社スペースデータ

OS開発の背景と狙い

「Space Station OS」を開発する背景には、近年の民間宇宙ステーション開発の動きがある。

米SpaceX社を筆頭に、ロケット打ち上げ数が増加するにつれ、宇宙輸送がより安価で高頻度となり、宇宙空間でのビジネスチャンスも広がりつつある。

例えば、2030年には国際宇宙ステーション(ISS)の退役が予定されており、それを見据えて、世界各国で民間企業による宇宙ステーションの設計・開発が急速に進行している。

日本でも、ElevationSpace社やDigitalBlast社といったISSに代わるソリューション提供を目指す企業が登場してきている。

スペースデータ社は、こうした宇宙開発の加速に貢献するべく、異なる企業や国が開発する宇宙ステーション同士の相互運用性を確保し、「宇宙のOS」としての役割を果たすことを目指して、共通動作するソフトウェアをオープンソースで推進している。

また今後はAIによる自動化やロボット技術、省人化を進めるデジタルツインの活用などを取り入れ、地上産業とも連携しやすい宇宙ステーションの設計・商業化を目指しており、将来的には、人類全体が協力してスペースコロニー(宇宙居住施設)を築く未来を実現するといったところまでがスペースデータ社が抱えている展望である。

宇宙ステーションの開発企業
商業宇宙ステーションや有人宇宙船の例 ©株式会社スペースデータ

Space Station OSの特徴

基本的な機能

「Space Station OS」は、宇宙ステーションに必要な各種制御システム(熱制御、姿勢制御、電力供給、通信、生命維持など)を統合し、システム全体の最適化を図るためのソフトウェアで構成されている。

宇宙空間は、地球には当たり前にある空気や水がなく、温度も昼間は120度、夜には-150度に達する厳しい環境である。また、強力な宇宙放射線や無重力状態といった過酷な条件により、宇宙ステーションは人工的に地球に近い環境を再現し、人が安全で快適に生活できるように設計される必要がある。

「Space Station OS」では、キャビン内部の形状、重力、風、光などの環境要素を実データに基づきシミュレートする機能も搭載しており、機内での実験や宇宙エンターテインメント、コンテンツ開発、製品開発、科学研究など多岐にわたる利用が期待されている。

宇宙ステーションの機能
宇宙ステーションの設計 ©株式会社スペースデータ

技術的な特徴

① ROS 2の活用

「Space Station OS」は、ロボット開発に広く利用されるROS 2(Robot Operating System 2)を基盤としている。従来、宇宙開発では特定のミッションに合わせてハードウェアからソフトウェアまでをゼロから開発する必要があり、得られた知見が限られた内部に留まるため、高い開発コストと参入障壁が課題であった。

今回、ROS 2を基盤にしたOSを開発することで、設計・開発プロセスの自動化とコードの再利用が可能になり、結果として開発コストの大幅な削減と信頼性の向上が期待されている。

ロボット産業もかつては専門家によるフルスクラッチ開発が一般的であったが、ROSの普及により開発コストが削減され、技術者人口が増加し、信頼性が向上した。宇宙開発も、ROS 2を基盤とした「Space Station OS」により、技術や知識の民主化が大きく進むことが期待されている。

ROSとSpace Station OS
ROSを基盤としたプラットフォーム構築 ©株式会社スペースデータ

② ソフトウェアディファインドアプローチ

宇宙空間ではハードウェアの交換が難しいため、ソフトウェアによる機能追加や変更が可能な柔軟なアプローチが必要とされる。

そのため、「Space Station OS」では、データ管理をソフトウェアで一元化するソフトウェアディファインドアプローチ(SDS)[※1]方式を採用している。

これにより、電力、通信、熱制御といった基本機能がモジュールとして提供され、ソフトウェアやハードウェアの拡張が容易なアーキテクチャが実現。各国や企業が開発した機器が互換性を持ってスムーズに連携し、協力しやすい環境が構築されることが期待されている。

[※1] データ管理をソフトウェアで一元化し、効率的で柔軟な運用を可能にするアプローチ。従来はハードウェアに依存していた管理をソフトウェアに移し、コスト削減やバックアップの自動化が実現しやすくなる。

さいごに

いかがでしたか。

宇宙産業はこれまで官主導で進められてきたこともあり閉鎖的な産業であったが、「宇宙のOS」の登場により、世界中の開発者と協力し、国境を越えた宇宙開発が可能となる。

インターネットの民主化がLinuxの普及によって進んだように、宇宙の民主化の時代も到来しつつあるのではないだろうか。

スペースデータ社は現在、急拡大に伴い多くのポジションで人材を募集している。興味のある方はぜひこちらからご相談いただきたい。

スぺジョブ説明画像
©Space Connect株式会社

参考

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