2024年8月27日、株式会社Solafuneは、社会課題を解決する革新的技術の研究開発促進や実用化を支援する国の取り組み「SBIR推進プログラム」の公募に採択されたことを発表した。
事業内容は、「超解像度化モデルを使用した高解像度の衛星データによる森林モニタリング」である。
本記事では、当事業の概要ならびに、開発における同社の強みについてご紹介する。
Solafuneとは
データ解析コンテストで得た知見で技術開発
Solafuneは、様々な衛星データ解析技術を主に世界各国の政府に提供している企業だ。
これらの技術開発を行う上で、同社は面白い仕組みを採用している。
それが、世界110か国以上で利用されている衛星データ解析プラットフォーム「Solafune」である。
この会社と同名のプラットフォームでは、衛星データ解析のオンライン競技を開催。
このオンライン競技は、以下のような仕組みになっている。
- データセットをオンラインで無料公開
- 世界中から解析結果を収集して自動評価によりスコアリング
- 上位の技術に賞金を渡す形でライセンスを買い取る
これまで、同社は19,000以上のアルゴリズムを買い取り自社のAIサービスに活用。
結果がランキング化されるだけでなく、「アルゴリズムのここを変えたら良かった」「このオープンソースによって精度が上がった」等の知見も大量に集まるようになっている。
そして、それらの知見やアルゴリズム、アイデア等は一般公開が可能となっていたり、参加者同士で交流できるDiscordチャンネルが開かれていたりするため、参加者はコンテストを通して知見を深めて次のコンテストに臨むことができるのだ。
SBIR採択事業概要
Solafuneが今回のSBIR事業において行う事業は、「超解像度化モデルを使用した高解像度の衛星データによる森林モニタリング」だ。
超解像度化とは
「超解像度化」とは、低解像度の画像や映像を処理し、高解像度の画像に変換する技術を指す。
学習した様々なデータや読み込んだ画像を参考に、欠けている情報を推測し、補完することで、より鮮明で詳細な画像を生成する。
診断を行うための医療画像処理や天体観測、顕微鏡などに応用されており、衛星画像においても通常では捉えきれない細部の情報を再現するために重要な技術だ。
超解像度化技術についても、衛星データ解析プラットフォーム「Solafune」においてコンテストが複数回実施されている。
例えば、2022年12月に実施された「衛星画像の5倍超解像度化」のミッションである。
公開されている超解像モデルには2倍や4倍超画像のものが多いため、参加者は自身で工夫することで5倍超画像を達成する必要があった。
このミッションについても、1位をはじめとする複数の上位レイヤーが解法を公開しているので、興味のある方はぜひ調べてみていただきたい※。
※参考
Solafune の衛星画像の超解像コンペで 1 位を獲得しました
[solafune] 衛星画像の5倍超解像度化 (for OSS) の解法
衛星画像の5倍超解像度化
目指すは森林モニタリングの実用化
Solafuneは、この超解像度化技術を活用することで、高解像度の衛星データによる森林モニタリングの実用に向けた検証を行う。
衛星データを活用した森林モニタリングは、植生調査や伐採等の監視、CO2吸収量測定によるカーボンクレジット創出等の分野で応用が進んでいるが、解像度の不足や衛星データの特異性の問題などから、実用面での応用に課題もある。
今回の事業において、同社はこの課題を解決するために超解像度化モデルによる解像度の補強と、衛星データに特化したAIモデルの開発を行い、実用に向けて検証。
具体的には、下記のような技術を検証・開発する。
さいごに
いかがでしたか。
Solafuneは、衛星データ解析のオンライン競技で知見を集めて買い取ることで、自社の技術力を向上し、サービスを開発している。
この手法は世界中から集まる多様な才能やアイデアを活用することで技術を効率的に取得できるため、同社の強みとなっているだろう。
森林モニタリングに関しても、これまでの衛星データ解析コンテストで得た超解像度化技術等の知見を活かしながら技術的課題を克服することで、実用性向上に取り組んでいくと考えられる。
同社の今後の活躍が非常に楽しみだ。
参考
Solafune プレスリリース
「Solafune」 コンテストページ
IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO
複数画像からの超解像技術