九州の下町ロケット!? 世界が注目するQPS研究所はここがすごい

6月13日(米国時間12日)、株式会社QPS研究所の小型SAR衛星QPS-SAR 6号機「アマテル-III」の打ち上げに成功したと発表した。

打ち上げに使用されたロケットは、スペースXのファルコン9で、発射が確認されてから約1時間20分後に予定していた軌道に投入された。

今回の打ち上げは、QPS研究所が目指す36機体制の衛星コンステレーション構想を実現するための、1機目の打ち上げであり、世界中で注目されることになった。

本記事では、なぜ福岡の宇宙ベンチャー企業、QPS研究所は世界中から注目を集めているのかについて取り上げている。

QPS研究所はここがすごい

QPS研究所は2005年に福岡で創業された小型人工衛星を開発している会社である。

小型人工衛星の製造会社は世界中で年々増加しているが、とりわけQPS研究所の宇宙開発が国内外で注目を集めているのには理由がある。

高精細小型SAR衛星の提供

今後需要が伸びるSAR衛星

1つ目の理由としては、QPS研究所が開発しているSAR衛星の汎用性の高さだ。

SAR(Synthetic Aperture Radar)衛星とは、わかりやすく言えば、地球の状態を丸裸にできるスケスケ技術を持った衛星のことである。

従来の衛星では、カメラを使用して、地上を撮像するため、雲の下や夜間での観測が不可能であったのに対して、SAR衛星の場合は、特殊な電波を用いて地上を撮影。

そうすることで、雲の下や夜間でも透過し、観測することを可能とした。

すなわち、24時間のリアルタイム観測を可能とする衛星なのである。

地球の約75%が常に夜間もしくは天候不良であるという事実を踏まえると、SAR衛星の需要は極めて高いことが理解できるはずだ。

また、SAR衛星を活用することで、災害時のリアルタイム観測はもちろんのこと、家畜の放牧の監視や宇宙からジャングルの下にある遺跡の調査等も可能となる。

このような汎用性の高さからも、SAR衛星自体、世界中で注目を集めている。

QPS研究所が撮像した分解能70cmのSAR衛星画像 ©︎QPS研究所

世界トップレベルの技術力

そんなSAR衛星の中でもQPSが開発する「QPS-SAR」は、100kg台の高精細小型人工衛星であるのが特徴。

従来のSAR衛星の機体重量は2トン程度であり、打ち上げまでの費用を含めると数百億円が必要である。

そこで、SAR衛星の小型化を実現するために同社は、小型衛星に搭載できる収納性が高く、超軽量の大型のアンテナを開発。

その直径3.6mの大型のアンテナを直径80cm、高さは15cmほどまで小さく畳みこみ、衛星に搭載することで、1m以下の高分解能(車や船舶などの移動体の動きを定点観測が可能)でありながら、従来の20分の1の質量の100kg台へと軽量化。

コストも従来の約100分の1と、常識を覆すイノベーションを実現しているのだ。

これからますます需要が伸びるSAR衛星の小型化に成功したことでQPS研究所が世界中で注目を集めているといったわけだ。

©︎QPS研究所

九州を中心とした地方創生

QPS研究所の特筆すべきもう1つの点としては、人工衛星の製造会社が九州地域全体を巻き込みながら、産業の創出に貢献しているという点だ。

同社の名前の由来は、「Q-shu Pioneers of Space」であり、九州宇宙産業の開拓者となって、九州から日本、そして世界の宇宙産業の発展に貢献するとの思いが名前に込められている。

その名に因んで、同社は九州大学での宇宙開発技術をベースに小型人工衛星を開発。

衛星を駆動させるシステムには、福岡県発のプログラミング言語「mruby(軽量Ruby)」が使用されている。

また、国内25社のパートナー企業のうち、17社はこれまで宇宙開発技術に携わったことのない福岡県の中小企業であり、ハード・ソフト技術共に福岡をはじめとした九州地域で構成されているのが特徴である。

衛星開発を軸として、九州地域における産業創出の台風の目になっているのが、QPS研究所のもう1つの魅力である。

まさに九州の下町ロケットの到来である。

さいごに

いかがでしたか。

同社が実施する36機の小型SAR衛星のコンステレーションが実現された場合、平均10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供が可能となる。

最終的には、Twitterやインスタグラムの地図版、すなわちリアルタイムマップの作成を目標にしているという。

昨年の10月に初の本格商業衛星となる衛星3、4号機「アマテル-Ⅰ・Ⅱ」がロケットの打ち上げ失敗により、軌道投入ができず、苦汁を嘗めることとなったQPS研究所。

そのような逆境を乗り越えて、歩み出した同社のこれからの活躍に期待だ。

参考:

QPS-SAR 6号機「アマテル-Ⅲ」 打上げオンライン・パブリックビューイングを開催

QPS研究所 HP

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