Pale Blueが小型衛星用水エンジンの量産技術の開発拠点につくばを選定。その理由とは?
©株式会社Pale Blueの画像を使用

2024年1月24日、株式会社Pale Blueは、茨城県つくば市に衛星用の水エンジンの事業拡大に向けた「つくば生産技術開発拠点」を立ち上げることを発表した。

また、茨城県の補助制度「茨城県企業立地促進補助金」にも採択され、約1.5億円の補助見込み額となり、茨城県との連携も強化していくという。

本記事では、千葉県を拠点としている同社がなぜつくば市を新しい拠点に選んだのか、また宇宙産業における茨城県の施策についてご紹介する。

Pale Blueとは

Pale Blueは、2020年に創業した東京大学発の宇宙スタートアップ。安全無毒で環境にも優しい「水」を燃料とした小型衛星用エンジンの開発および社会実装に取り組んでいる企業だ。

地球からの高度が低い軌道を周回する小型衛星は、近年、低コストかつ短期間で開発可能となっておりビジネス利用が急拡大。

これまではエンジンが搭載されていないものも多かったが、複数の衛星を宇宙空間で連携させるための位置調整や宇宙ゴミ化を防ぐための移動などに衛星が目的地まで狙い通りに進むためのシステムが必要であるため、エンジンの需要が高まっているのだ。

Pale Blueの開発する水エンジンは、安全で管理コストがかからないだけでなく、燃料にかかる費用が業界で一番に安い。

さらに、2023年に宇宙で衛星の軌道投入や軌道維持のために使用されて成功し、製品としての信頼性も高めている。

これにより、国内外の衛星事業者からの問い合わせが急増していることから、現在はエンジンを量産する技術の確立に向けて動いているのだ。

厳しい環境での一発勝負となる宇宙製品の量産技術を持つ企業は世界を見ても少なく、この技術を確立させることは世界から一歩リードする重要なポイントでもあるだろう。

©株式会社Pale Blue

Pale Blueが生産技術開発拠点につくば市を選んだ理由

Pale Blueは、水エンジンの量産に向けた技術開発および生産を行う拠点として茨城県つくば市を選定した。

新拠点は同社の「柏の葉研究開発拠点」との距離が近く、生産技術開発と研究開発の密な連携と迅速な改善サイクルにより、付加価値の高い製品の早期実現と事業拡大が可能になるという。

新拠点につくば市が選定された理由は以下の3つ。

  1. 宇宙関連やメーカー等での業務経験を持つ人材のポテンシャルの高さ
  2. 交通アクセスの良さ・他の拠点との近さ
  3. 周辺地域で商業施設の建設が予定されており、働きやすい環境が期待される

同社はすでに約1,911m2の土地を購入しており、今後、水エンジンの量産に向けた技術開発を実施するうえで、雇用の維持創出や投資の拡大により地域経済にも貢献していくという。

つくば生産技術開発拠点の位置 ©株式会社Pale Blue

宇宙産業に関する茨城県の施策

今回の発表について、茨城県の大井川和彦知事は、以下のようにコメントしている。

本県では、つくばの研究集積を活かし、国や JAXA との連携の下で「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」を立ち上げ、支援体制の構築などに取り組んでおります。

特に、宇宙ベンチャー企業の誘致に力を入れており、世界に誇る宇宙ビジネス拠点の形成を目指しております。

このような中、同社には、本県を拠点に世界の宇宙産業をリードする企業としてさらに発展されることを期待しております。

茨城県 大井川和彦知事

「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」は2018年8月に立ち上がったプロジェクト。

茨城に拠点を持つ宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国とも連携し、宇宙業界の専門家による伴走支援や宇宙ビジネスフォーラムの実施、環境試験における設備の検索から結果の解析を一気通貫で行うサービスの提供などを通して、宇宙関連企業が活動しやすい環境づくりに取り組んでいる。

これらの施策により、宇宙ベンチャー等の創出・誘致と県内企業の宇宙ビジネスへの新規参入を積極的に推進しているのだ。

Pale Blueに関しては、宇宙分野の先端技術を有する同社を誘致することで若者が望む質の高い雇用の創出が期待できることから、都心へのアクセスが良い土地の提案や補助制度の活用などの積極的な誘致活動を展開し、今回の結果に至ったという。

同プロジェクトは大井川知事が2018年2月の「G1サミット」にて宇宙ベンチャー企業の講演を聞いて宇宙ビジネスの成長可能性を確信したことから始まり、これまでワープスペースやスペースシフトなど、30件以上の宇宙関連事業を支援してきた。

JAXAの拠点の存在や都心からのアクセスの良さに加えて、県が宇宙ビジネスに関する施策等を積極的に実施していることが、茨城県の強みなのだろう。

さいごに

いかがでしたか。

Pale Blueの水エンジンの量産技術の開発は、宇宙ビジネスの拡大と技術革新の可能性を示し、地域経済にも大きな影響を与えるだろう。

同社は、量産化に向けて、試作機の製造と組み立てについてを東京計器との協業により進めていることも発表しているので、そちらも合わせてご確認いただきたい。

今後の同社の躍進が楽しみだ。

参考

Pale Blue、茨城県つくば市に水推進機の生産技術開発拠点を立ち上げへ

本県への本社機能(研究開発拠点)の誘致について

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