野村不動産、インターステラテクノロジズと資本業務提携
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2025年9月17日、野村不動産株式会社(以下、野村不動産)は、北海道大樹町を拠点とする宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社(以下、インターステラテクノロジズ)への出資および資本業務提携の締結を発表した。

本記事では、不動産開発を主軸とする同社が宇宙分野へ関与する背景と狙いについてご紹介する。

インターステラテクノロジズについて

インターステラテクノロジズは、北海道大樹町を拠点にロケット輸送事業と通信衛星事業を展開する宇宙ベンチャー企業である。
2019年には観測ロケット「MOMO」によって、国内民間企業として初めて宇宙空間への到達を果たし、日本の民間宇宙輸送を牽引する存在となった。

現在は小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の開発を進めており、文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択。初回ステージゲート審査を通過した3社の一つとして評価を受けている。2025年にはウーブン・バイ・トヨタやトヨタ自動車と連携し、ロケットを一点ものの試作から高頻度打上げに対応可能な工業製品へと進化させる取り組みを具体化している。

宇宙輸送だけではなく、通信衛星事業にも注力している。

衛星通信は打上げ頻度が高いほど優位性を発揮する領域であり、自社でロケットと衛星を一体的に展開することで競争力を最大化しようとしている。現在は、スマートフォンや自動車といった地上端末と直接つながる高速・大容量ブロードバンド通信の実現を目指し、総務省やJAXAの支援を受けながら研究開発を進めている。

提携概要と野村不動産の狙い

今回の提携は、宇宙と不動産といった異なる領域の強みを組み合わせ、双方の事業発展を図ることを目的としたものである。両社はこの協業を通じて、都市開発をはじめとする分野において新たな事業創出を目指している。

野村不動産は資本参加によってインターステラテクノロジズの成長を支援すると同時に、自社にとっても宇宙領域での新規事業機会を開拓する狙いがある。

その背景には、同社グループが掲げる2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」がある。このビジョンのもとで「人々の幸せと社会の豊かさの最大化」を理念に据え、2026年3月期から2028年3月期にかけて約1,000億円を戦略投資に充てる方針を示している。

その重点テーマのひとつが「新領域ビジネスの獲得」である。

特に、衛星通信をはじめとする宇宙技術は、スマートシティのインフラ整備、次世代モビリティの普及、防災・減災といった分野に高い親和性を持つ

野村不動産の発表によれば、こうした技術の発展が従来の不動産事業の枠を超え、街づくりそのものを変革し得ると見据え、今回の提携に踏み切ったといえる。

両社提携で期待できること

今回の提携は単なる資本参加にとどまらず、街づくりと宇宙開発を結びつける新たな挑戦として注目されており、両社の協業によって、以下のような相乗効果が見込まれる。

1|スマートシティの高度化

通信衛星による安定的なネットワークは、既存の地上インフラを補完し、災害時の通信確保や都市サービスの持続性を高める。都市の安全性と利便性を向上させるうえで、宇宙技術の活用は不可欠な基盤となりつつある。

2|次世代モビリティの実装支援

自動運転車や空飛ぶクルマといった新たな交通手段の普及には、高速かつ広域をカバーする通信環境が不可欠である。インターステラテクノロジズが開発を進めるブロードバンド衛星通信は、次世代モビリティの社会実装を後押しする可能性を秘めている。

3|地域発の宇宙ビジネスと大手不動産の協業

北海道大樹町を拠点とするインターステラテクノロジズにとって、不動産開発の知見を持つ大手企業との連携は、地方から全国、さらには世界への事業展開を加速させる契機となる。一方の野村不動産にとっては、従来の都市開発を超えて「宇宙を取り込む街づくり」を実現するための重要な足がかりとしての連携が期待される。

さいごに

本提携は、単なる資本参加にとどまらず、地上の都市基盤軌道上の通信・観測基盤を接続することを前提とした取り組みであることがうかがえる。

不動産側は、衛星通信や宇宙データを都市運営に組み込むことで、レジリエンス、モビリティ、運営効率の各面で価値を拡張でき、宇宙側は、大手デベロッパーの現場運用、規制調整、供給網の知見を得ることで、技術の社会実装を加速できる。

宇宙関連企業の地上社会との連携機会も増えてきている。日本発の「宇宙×都市開発」モデルの大きな一歩として、今後の動きに注目したい。

参考

インターステラテクノロジズが野村不動産株式会社と資本業務提携を締結(インターステラテクノロジズ, 2025-09-18)

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