
2026年5月29日、株式会社MJOLNIR SPACEWORKS(ミヨルニア・スペースワークス, MSW)は、Series Bラウンドにおいて、第三者割当増資と融資枠を組み合わせ、最大17億円の資金調達を実施したと発表した。本記事では、同社の資金調達概要と目的について整理する。
目次
資金調達の概要
MJOLNIR SPACEWORKSがSeries Bラウンドにて実施した最大17億円の資金調達は、第三者割当増資と融資枠を組み合わせたものとなっている。第三者割当増資の金額は12億円で、融資枠は5億円である。
第三者割当増資の引受先には、インキュベイトファンド、宇宙フロンティア2号ファンド、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、Z Venture Capitalが名を連ねる。融資枠については、株式会社商工組合中央金庫と契約を締結している。
なお、本増資によるMJOLNIR SPACEWORKSの累計調達額は20億円となった。

MJOLNIR SPACEWORKSはどんな会社
MJOLNIR SPACEWORKSは、札幌市に本社を置く、北海道大学発の宇宙スタートアップだ。ロケットの大量生産の実現に向け、量産可能なロケット部品・コンポーネントを開発している。
中核技術は、「ハイブリッドロケットエンジン」と「無溶接タンク」である。
「ハイブリッドロケットエンジン」は、固体プラスチック燃料と液体酸化剤を燃焼させて推進力を得るエンジンである。北海道大学の永田晴紀研究室で長年研究されてきたエンジン技術で、燃料のプラスチックはホームセンターでも手に入るような、爆発リスクの低い安全性の高いものである。さらに、従来のエンジンと比較してシンプルな構造となっており、コストの削減や大量生産につながる技術として期待されている。
「無溶接タンク」は、その名の通り、溶接部のないロケット・宇宙機用タンクである。通常、宇宙用タンクの製造では溶接が必要となるが、溶接部には強度低下や溶接欠陥といった品質上のリスクがある。MJOLNIR SPACEWORKSの無溶接タンクは、溶接部が存在しないため品質が安定しており、短納期かつ低コストで納品できる点を特徴としている。また、宇宙用機器に求められる清浄度や内部デバイスの搭載にも対応している。
さらに同社は、2025年12月に4年間で総額約18億円の宇宙戦略基金に採択されており、高圧ガスなどを蓄える超軽量気蓄器の量産技術の開発も進めている。
| 会社名 | 株式会社MJOLNIR SPACEWORKS |
| 設立 | 2020年1月21日 |
| 公式サイト | https://mjolnir-sw.com/ |
調達資金はエンジン開発と人材に活用
ハイブリッドロケットエンジンの研究開発を加速
MJOLNIR SPACEWORKSは、今回の資金調達によって、ハイブリッドロケットエンジンの研究開発を加速させる。
調達資金は、エンジンの大推力化及び軽量化、テスト設備の拡充、次世代エンジンの設計・製造に向けた材料費や設備投資に充てられる予定だ。
一般的に、ハイブリッドロケットエンジンは、安全性や低コスト化が期待される一方、実用化に向けては推力の向上や性能の安定化が重要な課題となる。同社は、北海道大学で長年研究されてきたハイブリッドロケットエンジン技術を背景に、こうした課題に取り組んでいる。
ロケットの量産化を実現するためには、エンジンそのものの性能向上だけでなく、試験設備や製造体制の整備も欠かせない。同社は今回の調達を通じて、研究開発の速度と再現性を高める段階に入るといえるだろう。
専門人材の採用と開発体制の強化
調達資金は、研究開発だけでなく、専門人材の採用にも活用される。
MJOLNIR SPACEWORKSは、推進系のエンジニアをはじめ、アビオニクス、構造設計などの高度な専門知識を持つ技術メンバーの採用を進める方針だ。また、研究開発を支えるコーポレート体制の強化も図るとしている。
ロケットエンジンや宇宙用タンクの開発には、設計、製造、試験、改良を高い精度で進める体制が必要となる。特に、量産化を目指す段階では、個別の技術開発だけでなく、複数の開発工程を継続的に回せる組織づくりが重要になる。
専門人材の採用とコーポレート体制の強化は、同社がロケットエンジンや宇宙用タンクの開発を継続的に進め、量産化に対応できる組織へ移行していくための土台となる。
ロケット量産が求められる背景
近年、地球観測、通信、測位、宇宙安全保障など、さまざまな分野で小型衛星の活用が広がっている。特に、複数の小型衛星を組み合わせて運用するコンステレーションの拡大により、衛星は一度の打上げて終わるものではなく、継続的に製造・打上げ・補充していくインフラへと変化しつつある。
こうした変化に伴い、宇宙輸送にも高い供給力が求められる。衛星の開発や利用が広がっても、軌道へ投入する手段が限られていれば、事業展開の速度は打上げ機会に左右される。つまり、宇宙利用の拡大には、衛星側の技術開発だけでなく、ロケットを安定的に供給できる体制が欠かせない。
その中で重要になるのが、ロケットを構成する主要コンポーネントの量産化である。ロケットエンジンやタンクは、推力、軽量性、信頼性、製造コストに直結する中核部品であり、これらを安定した品質で供給できるかどうかは、ロケットの製造能力そのものを左右する。
MSWが目指すハイブリッドロケットエンジンや宇宙用タンクの量産化は、こうした宇宙輸送の供給面の課題に対応する取り組みといえる。高頻度な打上げを支えるには、ロケットを一機ごとに特別な開発品として扱うだけでなく、主要部品を再現性高く製造し、継続的に供給できる基盤が必要になる。
さいごに
MJOLNIR SPACEWORKSは、今回の資金調達を通じて、ハイブリッドロケットエンジンや宇宙用タンクの研究開発、専門人材の採用、事業基盤の強化を進める。
小型衛星の活用が広がり、宇宙輸送の需要が高まるなかで、ロケットを構成する主要コンポーネントを安定的に供給できる体制の重要性は増している。日本の宇宙輸送産業において、高頻度な打上げを支える基盤づくりの一つとして、今後の同社の活躍に注目だ。
宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。

参考
エクイティ・融資枠の組み合わせで最大17億円の資金調達を実施:MJOLNIR SPACEWORKS(2026-06-05閲覧)









