2023年3月16日、大阪の大人気ラーメン店『人類みな麺類』を運営するUNCHI株式会社と宇宙産業における総合的なサービスを展開するSpace BD株式会社のコラボレーションが発表された。
その内容は「宇宙」 × 「ラーメン」である。
と言っても、店主が月や火星にお店を構えるという夢を、本気で実現させるための第一歩として、『人類みな麺類』のラーメン素材やロゴプレートをSpace BD社を通じて、宇宙に輸送し、その後地球に帰還するというものだ。
店主の宇宙に店を進出するといった意気込みは非常に面白いのだが、ここで一つ疑問が生まれる。
もし将来、月に『人類みな麵類』が進出した場合、地球と変わらない美味しいラーメンを月で楽しむことはできるのだろうか。本記事では、この疑問について考察している。
ラーメンの味は月と地球で変わるのか
改めて、月でラーメンを提供する場合、地球と同じ味のものを楽しむことはできるのだろうか。
結論から述べると、月で提供されるラーメンの味は変わるだろう。
ただし、地球と同じ作業工程で提供する場合である。
その理由は、以下の4つが挙げられる。
味覚の変化
まず考えられる要因として、味覚の変化がある。
月の重力が、地球の約6分の1であることから、月面での味覚の働きは、地球上の時と比較して鈍くなることが研究からわかっている。
このような低重力環境では、地上よりも血液の流れが上半身に偏り、頭部の圧力が増加。
これにより、鼻づまりの症状が発症することがしばしばあるのだ。
味覚を捉える上で嗅覚が非常に重要であることは、風邪を引いたことがあるみなさんにとって、ご存知の通りであろう。
そのため、地球で感じる味が月では薄く感じられることがあるといったわけだ。
香りの影響
続いて考えられるのは、香りの影響である。
上記でも述べたが、嗅覚と味覚は密接に関わりがあるので、当然のことながら、料理の味と香りの関係性も深い。
月の衣食住は、月面基地で行われることになるが、月面基地のような密閉された空間では、通常の空気の流れがなく、香りが拡散しにくい状況が想定される。
香りの感知が減少することで、ラーメンの味が地球のものとは異なって感じられることもあるだろう。月面環境が与える食材への影響
続いて、月の低重力環境や気圧の違いが、食材に影響を与え、ラーメンの味が変わるといった現象も想定できる。
例えば、月の重力環境が食材の水分の分布位置を変化させるため、食感が変わることが考えられる。
これは、低重力状態では、食材中の水分が地球上とは異なる方向に移動し、食材が乾燥したり、水分が集まったりするためである。
このように、食感が変わるなど、食材自体が変容することでラーメンの味が変化することもあるだろう。
月面環境が与える調理過程への影響
同様に、月での環境が、ラーメンの調理過程に影響を与えることで、ラーメンの味が変わる場合も考えられる。
例えば、月では水の沸点や熱の伝わりやすさが地球と異なる。
これにより調理時間が変化し、麺の食感やスープの味に影響が出る可能性がある。
さらに、水と麺の接触面積が地上と異なるため、麺が均一に茹で上がらず、食感や味に影響が出ることも考えられる。
地球の味を再現するためには
ここまで、月で食べるラーメンの味は、通常の作業工程だと、地球で提供されるものとは異なる可能性があるということを述べてきた。
では、地上で人気の味を月でも再現するためにはどうすればよいのだろうか。
考えられるアプローチとして、下記のようなものが考えられるだろう。
- 味覚の変化に対応したレシピ開発:
スパイスや調味料の量を調整するなど、月面での味覚の変化を考慮したレシピを開発 - 香りの再現技術:
香りを効果的に拡散させる技術や、人工的に香りを再現する技術を開発 - 調理器具や調理法の工夫:
月面環境に適した特殊な調理器具や調理法を用いる
これらのアプローチはあくまで一例であり、将来的に月面基地で地球と同様の美味しいラーメンを提供する場合、私たちの想定を超えるありとあらゆる要因が絡んでくるだろう。
さいごに
いかがでしたか。
本記事では、月で地球と変わらない美味しいラーメンを楽しめるのかについてご紹介しました。
月で美味しいラーメン店を開くためには、みなさんが思っている以上に乗り越えるべき課題がたくさんあるとお分かりいただけましたか。
しかし、『人類みな麺類』のような宇宙に挑戦する企業が増えることで、宇宙食や調理器具の研究開発が進み、周辺産業で新たなビジネスの拡大が考えられます。
このような事例が人類の進歩にも大きく繋がってくるというわけです。
誰でも宇宙に行ける時代が近づいてきている現在、この記事を読んでいるあなたも、いつか月でラーメンを食べることができるかもしれませんね。
参考: