2010年以降の世界の月面着陸ミッションを時系列でご紹介!

2024年2月23日午前、アメリカの宇宙企業であるIntuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)の無人月着陸船「Nova-C(ノバC)、愛称:Odysseus(オデュッセウス)」が月面着陸に成功した。

民間企業としては世界初、アメリカとしても1972年のアポロ17号以来およそ半世紀ぶりの月面着陸成功となった。

近年、中国、インド、日本の月着陸船が次々と月に降り立っており、月面探査への熱は世界的に非常に高まっている。

本記事では、1970年代に終了したアメリカのアポロ計画やロシアのルナ計画の後、2010年以降に月面着陸に挑戦した月着陸船を時系列でご紹介します。

月面着陸の歴史と現在

世界で初めて月面に到達したのは、1959年、ソ連のルナ2号であった。

当時はアメリカとソ連の冷戦の緊張が高まっており、宇宙開発競争が両国の間で加速。アメリカはアポロ計画、ロシアはルナ計画を打ち出し、1969年にはアメリカが世界初の有人月面着陸に成功した。

しかし、冷戦の終結とともに宇宙開発競争は終わりをみせ、アポロ計画は1972年に終了。ロシアのルナ計画も1976年に終了した。

それからは有人月探査に莫大な費用がかかることや技術の進歩の影響もあり、月探査の焦点が有人ミッションから無人ミッションや宇宙望遠鏡などに移行していた。

その後、約37年間は無人・有人ともに月面着陸ミッションは行われなかったが、2013年に中国の無人着陸が月面着陸に成功。

2019年にはアメリカ航空宇宙局(NASA)によって月や火星での人類の持続的な活動を目指すアルテミス計画が発表され、現在では日本、オーストラリア、韓国、イギリスなど30か国以上が合意している。

一方、中国とロシアは2021年に国際月面研究ステーション(ILRS)の建設を協力して行う政府間合意に署名。ILRSには、ベラルーシやパキスタン、アゼルバイジャン、UAEなどが参加を表明している。

宇宙探査や月探査に関する関心が世界各国や企業の間で高まっているのである。

2010年代以降の月面着陸船を年代順にご紹介!

ここからは、2010年代以降に打ち上げられた月面着陸機について、ミッションの結果やその内容を表にてご紹介する。

着陸実施日
/失敗日
探査機名 開発国・
企業
軟着陸
結果
詳細
2013/12/15 嫦娥(じょうが)3号 中国 成功 中国の月探査においては初めて、世界で3か国目となる軟着陸[*1]を達成。1976年のソ連のルナ24号ミッション以来37年ぶりの月面到達となった。

月北部の虹の入江への着陸が予定されていたが、実際はやや東にずれた雨の海に着陸。着陸後は天体望遠鏡により世界初となる月面からの天体観測を実施した。

また、約120㎏の重量の月面ローバー(月面車)「玉兎号」を搭載。着陸の約1か月後に車輪が動かず自走不可能となったものの、観測・通信機器はおよそ2年半にわたり稼働した。
2019/01/03嫦娥4号中国成功世界で初めて月の裏側に着陸。月の上空に中継衛星を配置することで地球との通信を実現した。

いくつかの植物や植物の種、虫の卵などの生物が搭載され、実験を実施。植物の発芽に成功している。
2019/04/11べレシートスペースIL
(イスラエルの民間宇宙団体)
失敗成功すればアメリカ、ソ連、中国に次いで4か国目、民間団体としては初の月面着陸であった。

着陸ミッション中の写真を地球に送ることに成功するも、エンジントラブルによりコントロールを失い月面に墜落した。
2019/09/07チャンドラヤーン2号ISRO
(インドの宇宙開発機関)
失敗月の南極域を目指すも、月面の上空2.1㎞地点で通信が途絶。

その後、チャンドラヤーン3号に搭載されていた月着陸機「ビクラム」が南極から600㎞離れた高地に衝突して破片が散乱している様子をNASAの月周回衛星が撮影している。
2020/12/1嫦娥5号中国成功月の表側、嵐の大洋にあるリュムケル山付近の台地に着陸。

これまでアメリカやソ連が採取した月の石よりも新しい年代の月のサンプルを採取し、地球に帰還した。
2022/11/22OMOTENASHIJAXA
(日本)
失敗11月16日の打ち上げ直後から地上と通信できず、着陸を断念。

失敗原因はエンジンの液体燃料の漏れであった。
11×24×37㎝の超小型衛星で、成功すれば世界最小の探査機の着陸であった。
2023/4/26HAKUTO-R M1ispace
(日本)
失敗世界初の「月保険」を契約した事例。三井住友海上火災保険とispaceが共同開発した保険である。

月面着陸については、着陸時刻まではほぼ予定通りの展開で進行したが、途中で通信が途絶。

ソフトウェアがクレーター辺縁部の急激な高低差を感知したときに高度センサが故障したと判断し、高度センサを遮断。その結果、高度ゼロと見積もった時点で実際の高度は約5㎞となっていた。

その後も着陸を目指して降下を続けたものの、途中で燃料が尽き墜落した。

成功していれば、世界初の民間の月面着陸であった。
2023/08/23チャンドラヤーン3号ISRO
(インド)
成功月の南極付近に世界で初めて着陸。インド初の月面着陸成功で、インドは世界で4か国目に月面着陸に成功した国となった。
2023/08/19ルナ25号/ロシアロシア失敗月の上空を周回する軌道には到達。21日に着陸予定であったが、19日に軌道遷移に失敗して月面に衝突した。

月の南極付近に着陸予定であった。
2024/01/19ペレグリンアストロボティック
(アメリカ)
失敗8日に打ち上げられたものの、エンジンの異常が発生し、月への着陸を断念。

宇宙ごみにならないうよう、地球の大気圏に突入させた。

成功していれば、世界初の民間による月面着陸であった。
2024/01/20SLIMJAXA
(日本)
成功日本初の月面着陸の成功である。

降下中に2基のエンジンのうち1基を失ったものの、残りの1基で着陸を継続した。

倒れたような姿勢で着陸する予定であったSLIMだが、計画から90°回転した倒立するような姿勢で着地。これまでの100倍の着陸精度を達成した。

センサーや通信機能等も無事で、着陸後は周辺の岩の科学観測を開始。

その後、場所によっては-200℃となる2週間の月の夜を生き延び、JAXAが2月25日19時すぎ頃にSLIMから信号を受信したことを発表した。
2024/02/23オデュッセウス(Nova-C)インテュイティブ・マシーンズ
(アメリカ)
成功月の南極付近に着陸。世界初の民間による月面着陸成功である。

月の石につまずいて横倒しの姿勢での着陸となったが、太陽光パネルには日光が当たっており、通信等は問題なく確立できている。

さいごに

いかがでしたか。

2024年に入り、日本、アメリカと月面着陸の成功が続いており、これからも様々な国・企業が月面着陸ミッションを実施予定だ。

また、アルテミス計画では、月の南極付近への有人着陸を2026年9月に予定している。

今後、月面着陸・探査はどのように進展していくのだろうか。世界の動向に期待したい。

参考

月探査情報ステーション

人民網日本語版

Science Portal China

SPACENEWS

超小型探査機OMOTENASHIの打上げ結果について

ispace、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1 成果報告を発表

SPACENEWS

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