九工大発、Kick Space Technologiesが事業加速|衛星サプライチェーン構築へ
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2026年2月25日、超小型人工衛星の開発や小型衛星用ハードウェア・ソフトウェアの開発・製造を行う Kick Space Technologies株式会社(以下、Kick Space Technologies)は、約6,000万円の資金調達を実施したことを発表した。

本記事では、同社のサービス内容や強み、今後の展望について解説する。

Kick Space Technologiesについて

Kick Space Technologiesは、2025年7月に設立された九州工業大学発宇宙スタートアップである。九州地域での超小型人工衛星の製造サプライチェーン構築を目指しており、将来的には、独自の深宇宙探査をはじめとした宇宙科学ミッションの実施を目標に掲げている。

主なサービスは以下の3つである。

1|超小型人工衛星インテグレーションサービス

九州工業大学での超小型人工衛星の開発実績を元に、超小型人工衛星のミッション検討から衛星設計・製造、試験、運用まで一貫してサポート。既に、次世代気象インフラ構築事業者向けに6Uサイズの気象観測衛星や研究機関向けの天文観測衛星の開発に向けた取り組みが進行中である。

2|小型衛星用ハードウェア・ソフトウェア製品

小型衛星を開発する事業者向けに、小型衛星向け通信機・アンテナ、展開型太陽電池パドル、衛星運用システムなど、ハードウェアからソフトウェアまで様々な小型衛星用製品を開発し、販売。

3|プロフェッショナルサービス

衛星開発プロジェクトにおいて、専門的な設計・解析力と確実な実行支援を提供。ミッション設計から各種申請、環境試験に至るまで、プロジェクトを着実に前進させるプロフェッショナルサービスを実施。

Kick Space Technologiesのイメージ画像
Kick Space Technologiesのイメージ画像(PR TIMES リリースから引用)

Kick Space Technologiesの強み

上記で紹介したように、ミッションの川上から川下までを網羅するサービスを高い信頼性をもって提供できる背景には、同社ならではの独自の開発体制とバックボーンがある。

ハード・ソフト含めて設計から運用まで内製化

同社は、「衛星用ハードウェア・ソフトウェア製品」をパートナー企業とともに自社で内製できる。

ミッション検討から設計・製造・試験・運用まで、衛星開発・運用の全工程をワンストップで提供する「超小型人工衛星End-to-endサービス」の構築を進めるとともに、衛星用ハードウェア・ソフトウェア製品を標準化・量産化し、外部提供することで、国内外の衛星開発を支えるサプライチェーンの一翼を担うことを目指している。

九州工業大学の知見と「JAXA-SMASH」での実績

同社のバックボーンにある九州工業大学は、世界トップクラスの衛星開発実績を誇る。同大学はこれまで、20機以上の小型・超小型衛星を運用しており、学術機関別の運用数において2018年から8年連続で世界1位を記録

最近では、産学官による輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム(JAXA-SMASH)に採択され、複数の学術機関・企業と協働し、超小型天文衛星VERTECSの開発を推進。JAXA-SMASHでは、超小型衛星の開発とその成果に基づく事業化が求められており、このプロジェクトを通じて培った技術や知見が、現在の同社の事業構想における核となっている。

▲JAXA-SMASHについてはこちら

資金調達の狙い|九州地域でのサプライチェーン構築

今回の資金調達により、同社は衛星システムの信頼性向上に向けた研究開発と組織体制の拡充を加速させる。特に注力するのが、九州域内での製造エコシステムの確立だ。

自社をハブに九州の産学官連携強化へ

同社は、創業前から九州・沖縄のスタートアップ支援プラットフォーム「PARKS」の支援を受け、着実に事業化を進めてきた。創業後も、北九州市やふくおかフィナンシャルグループ、福岡県などの助成事業に相次いで採択されており、地域一体となった強力なバックアップのもと、技術開発体制の強化を加速させている。

特筆すべきは、北九州市宇宙産業推進室との連携による地場産業との深いネットワークだ。精密加工や基板製造を担う北九州市内のメーカーとのマッチングにより、すでに試作・加工の段階から具体的な連携が始まっている

同社は自らをハブとして、九州各地の民間企業、学術研究機関、自治体を結びつけ、ハードウェアとソフトウェアの双方を包含した開発体制を強化することで、産学官連携によるクラスター形成を加速し、九州発の「宇宙産業エコシステム」を確立していく構えだ。

投資家のコメント

今回の資金調達に際し、エンジェル投資家として出資した株式会社Midtown 代表取締役CEO/ ispace創業株主&元取締役COO 中村 貴裕 氏は次のように述べている。

国内宇宙スタートアップの“第1世代”は、上場を通じてひとつの成熟フェーズに入りました。彼らが切り拓いたモデルは、大型調達・長期開発・グローバル人材確保を前提とした、いわば重量級モデルです。

一方で、これから本格的に台頭してくる“第2世代”は、より軽量でアジャイルな成長戦略を志向し始めています。そのアジャイルモデルを実現するための技術力と推進力を兼ね備えているのが、 Kick Space Technologiesです。小型衛星領域へフォーカスすることで、スピードと資本効率を両立しながらスケールアップを狙う、その明確な戦略性とパッションに共感し、この度エンジェル出資させていただきました。今後の成長を全力で支援していきたいです。

さいごに

超小型衛星の需要が高まる中、設計から製造、運用までを一気通貫で担えるプレーヤーの存在は、宇宙利用の裾野を広げる鍵となる。特に、地場の製造業と深く連携し、地域一体となってサプライチェーンを構築する試みは、日本の宇宙産業における新しいモデルケースとなる可能性がある。

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参考

九州工業大学発宇宙スタートアップKick Space Technologies、超小型人工衛星の社会実装を目指し、約6,000万円の資金調達を実施(Kick Space Technologies, 2026-02-28閲覧)

Kick Space Technologies Inc. 公式サイト(2026-02-28閲覧)

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