
日本の小型衛星分野では、民間主導による観測・通信インフラ構築の動きが加速している。その中で注目されるのが、ともに東大発の宇宙ベンチャー企業であるアクセルスペースとアークエッジ・スペースだ。両社は同じ分野に位置しながら、事業の起点、技術思想、成長の描き方が異なる。
本記事では両社の事業を整理し、日本の宇宙産業構造の中での位置づけを分析する。
目次
アクセルスペース ― 光学観測と宇宙利用の標準化を目指す企業

株式会社アクセルスペース(英:Axelspace Corporation、以下 アクセルスペース)は、東京大学の小型衛星技術を基盤として創業した宇宙ベンチャーである。現在は衛星プラットフォーム提供と光学地球観測を二本柱とする事業構造を持つ。
一つの柱が「AxelLiner」である。AxelLinerでは、顧客のミッションに応じた衛星を設計・開発し、打上げや運用までを含めてワンストップで支援するサービスに加え、他社の宇宙機器・コンポーネントの実証ニーズに応える軌道上実証サービスを展開。
これらのモデルは、衛星を個別にゼロから開発するのではなく、標準化されたプラットフォームを活用して宇宙利用を広げるという思想に基づいている。
もう一つの柱が、光学観測データプラットフォーム「AxelGlobe」である。これは自社開発・運用の100kg級小型光学衛星コンステレーションにより取得した地球観測データを提供する事業であり、農業、環境監視、インフラ管理など幅広い用途への活用が想定されている。
アクセルスペースはこの分野において、観測データの提供を中心に、利活用を見据えたサービスモデルの構築を進めている点が特徴である。
アークエッジ・スペース―多用途対応の超小型衛星を開発

株式会社アークエッジ・スペース(英:ArkEdge Space Inc.、以下「アークエッジ・スペース」)は、6Uサイズ(10㎝四方の立方体6個相当)を中心とした超小型衛星の設計・製造・運用を手掛ける企業である。同社はの特徴は、単一用途に特化するのではなく、複数ミッションに対応可能な汎用衛星バスの開発を進めている点にある。
同社の超小型衛星は、地球観測、IoTデータ収集、船舶向け衛星通信(VDES)、光通信、低軌道測位(LEO-PNT)に加え、月・深宇宙関連の技術実証ミッションなど、幅広い用途を想定して開発が進められている。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)やJAXAの宇宙戦略基金事業にも採択されており、将来的には商業コンステレーションの構築を進める事業展開が示されている。
両社の比較と分析
アクセルスペースとアークエッジ・スペースは、ともに小型衛星を手がける企業であるが、事業の出発点と価値創出の軸は違いがある。
衛星サイズとミッション設計
アクセルスペースは100kg級の小型衛星を主軸に据え、「AxelGlobe」による光学地球観測データの提供と、「AxelLiner」による顧客ミッション支援という二層構造を取っている。
一方、アークエッジ・スペースは6U級の超小型衛星を基盤とし、通信・測位・観測・深宇宙関連技術実証など、複数ミッションを同一バスで実現する汎用性を強みとしている。
産業構造の中での役割の違い
アクセルスペースは、取得された観測データの継続的利用と社会実装に重心を置いている。AxelGlobeは農業、環境、インフラ監視など地上産業との接続を前提としたサービスであり、宇宙を「データインフラ」として社会実装する方向性が強い。またAxelLinerは、衛星開発のハードルを下げる仕組みとして機能しており、宇宙利用の裾野拡大を支える立ち位置にある。
これに対しアークエッジ・スペースは、超小型衛星バスそのものを基盤技術として確立することに重点を置いていると考えられる。複数ミッション対応を前提とした設計は、特定データサービスに閉じない柔軟性を持ち、将来的には通信・測位・観測などを組み合わせた宇宙インフラの一部を担う可能性がある。
今後の展開に対する期待と課題
両社の取り組みは、日本国内における小型衛星の実利用領域を広げる役割を果たしている。アクセルスペースが進める観測データの社会実装と、アークエッジ・スペースが志向する多用途衛星プラットフォームは、それぞれ異なる角度から宇宙利用市場の拡張に寄与する。
一方で課題も共通して存在する。小型衛星は開発期間が短い反面、多数機の安定量産、品質保証、部品調達の継続性が事業の持続性を左右する。また、通信や測位など周波数を使用するミッションでは国際調整が不可欠であり、観測データ事業では解析・販売まで含めた付加価値設計が求められる。これらは単一企業のみで完結しにくく、官民連携や国際連携の枠組みの中で進める必要がある分野である。
さいごに
アクセルスペースとアークエッジ・スペースは、それぞれ異なるアプローチで日本の小型衛星産業の発展に寄与している。アクセルスペースはデータサービスとミッション実装支援を基軸に、アークエッジ・スペースは6U衛星汎用バスとコンステレーション構築を通じて多様なニーズに応える体制を整えつつある。今後の競争環境や国際連携、政策支援の方向性が、両社の成長と日本全体の宇宙産業競争力にとって重要な鍵となるだろう。
また、両社は現在、複数のポジションで人材を募集している。興味のある方はこちらからご確認いただきたい。

参考
アークエッジスペース,『宇宙戦略基金「商業衛星コンステレーション構築加速化」事業者として採択 ~多目的衛星コンステレーション群の構築~』












