2024年5月29日、宇宙ロケットの開発廃材を活用し、新しいプロダクトを生み出すアップサイクルプロジェクト『&SPACE PROJECT』の製品「宇宙タンクベンチ」が2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けたプログラムに採択されたことが明らかとなった。
同プロジェクトは、宇宙産業が活発な北海道を舞台に製品開発が行われており、⺠間宇宙ロケットの開発を行うインターステラテクノロジズ株式会社をはじめとしたプロジェクト協力企業のもと進められている。
本記事では、&SPACE PROJECTの事業内容や、万博に採択された製品の魅力についてご紹介する。
目次
&SPACE PROJECTとは
北海道から目指す新しいアップサイクル
『&SPACE PROJECT』は、ロケット廃材を活用して宇宙を身近に感じられる新たなプロダクトを生み出すアップサイクルプロジェクトである。
本プロジェクトは、スペースポートの建設等、宇宙産業の拠点を目指し官民でさまざまな取り組みが行われる北海道が舞台。
計10社以上の、①道内のものづくり企業、②道内外のクリエイター、③北海道のロケット宇宙産業の3者が
近年盛り上がりを見せる宇宙ビジネス業界で新産業創出を目指すプロジェクトである。
プロジェクトの第1弾はインターステラテクノロジズが開発する宇宙ロケットの廃材を使用した宇宙家具の開発。
これまでに機体外壁を再利用した「宇宙カーボンチェア」やヘリウムガスタンクを支えていた部材を再利用した「宇宙シェルフ」など7種類ほどの商品が制作されており、ニコニコ超会議や釧路空港など様々なイベント・場所で展示された。
道内企業連携でつくるこだわりの製品
本プロジェクトの宇宙家具の制作の流れは次の通り。3者の強みと想いが詰め込まれた同プロジェクトならでは流れとなっている。
(1)宇宙産業の廃材ロケットの開発・製作過程で発生した廃材や治具等が集められる。道内の家具職人が出向き、形状や状態などひとつひとつ確認を行い選別。
(2)工房で加工廃材の形状や素材から家具の完成形をイメージし制作に着手。廃材を使用していることもあり金属、木材など様々な材質のものを加工することとなる。それぞれ適した工房が異なるため、道内複数の工房で連携して加工・制作を行う。
(3)様々な材質に合った加工経て、各工房で加工したパーツを組み合わせたら完成。あえて廃材の傷や汚れは残しておりロケット開発当時を感じられるようなアップサイクルならではの仕掛けが施されている。
新しい発想で地域の魅力を届ける
大阪万博で発信する北海道の魅力
&SPACE PROJECTは、今回、2025年日本国際博覧会協会が推進する、「大阪・関西万博を景気に、これからの日本のくらし(まち)をつくる」をコンセプトの新しい共創事業「Co-Design Challenge」プログラムに採択された。
ロケットの廃材を活用して新しいプロダクトや産業を生み出すアップサイクルの取り組みが採択された大きな理由の一つ。
今回のプログラムでは、&SPACE PROJECTで作られた「宇宙タンクベンチ」が大阪・関⻄万博において開催期間中に会場に常設される。
また、それだけでなくつくり手が工場や工房の製造現場を公開し、来場者にものづくりを体感してもらう取り組みとしてオープンファクトリーのツアーも計画されている。
ツアーでは、宇宙産業が活発な地域として注目を集めると同時に北海道の中でも特に豊かな自然と文化が息づく道東エリアでの自然体験・文化体験を提供し、同エリアの魅力やポテンシャルを届ける発信を目指しているとのことだ。
展示される注目の宇宙タンクベンチ
宇宙タンクベンチは、インターステラテクノロジズの観測ロケット『MOMO』の初号機より以前の試験用燃料タンクをリメイクしたベンチである。
MOMOの燃料であるエタノールと液体酸素が搭載されるタンクはアルミの板を丸めて、両側に半円状のドームを溶接して制作されたもの。
外装との結合部は細かな板を枡状に溶接して強度と軽さを保っており、素材は極低温の燃料に耐えられ、強い強度と軽さを併せ持つアルミ合金となっている。
初号機までの宇宙打ち上げを目指し開発を重ねた燃料タンクとあり、開発者やロケットの打ち上げを心待ちにしていた人の想いが詰まったアップサイクルベンチとなっているのだ。
さいごに
いかがでしたか。
&SPACE PROJECTは、宇宙産業の活性化、地方創生、サステナビリティ、新しいプロダクトの提供など、様々な面で価値を産む。
このプロジェクトには、北海道釧路市で100年程続く、鮮魚店や業務用酒類卸業などを営む企業や、北海道を拠点に暮らしに関わるものづくりを行う企業、北海道で木を使用した住宅や家具をつくる企業など、一見宇宙業界と関わりのないように思えるローカルな企業が多く参画している。
北海道の宇宙産業には、大樹町へのふるさと納税を通じてお礼の品や税額控除といったメリットを享受しながら宇宙業界の企業を応援できたり、宇宙企業がコミュニティ形成やパートナーシップ創出を積極的に行っていたりと、異業種の方や住民の方々も宇宙産業に関わりやすい仕組みがある。
それが北海道の宇宙産業の強さと新しい大きな価値の創出に繋がっているのだろう。
今後の取り組みにも注目である。
参考
宇宙ロケット廃材を活用したアップサイクル家具『宇宙タンクベンチ』が2025年日本国際博覧会(大阪・関⻄万博)「Co-Design Challenge」プログラムに選定