QPSホールディングスの決算内容を解説・考察|2026年5月期通期決算
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2026年7月14日、小型SAR衛星の開発・運用事業を行う株式会社QPSホールディングスは、2026年5月期通期決算を発表した。

本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。

QPSホールディングスの概要

QPSホールディングスは、福岡市に本社を置き、小型SAR(合成開口レーダー)衛星事業を展開するQPS研究所を中核子会社とする持株会社である。

QPS研究所は、九州大学発の宇宙ベンチャーとして、小型SAR衛星「QPS-SAR」の研究開発・製造から打ち上げ後の運用、衛星画像データの販売までを一貫して手がけている。天候や昼夜に左右されず地表を観測できるSAR衛星の特性を生かし、災害対応、インフラ監視、安全保障など、幅広い分野でのデータ活用を見据えて事業を展開。

衛星本体に加え、地上システムや衛星運用、観測データの提供に必要な仕組みを統合的に開発・運用できる点を強みとする。将来的には、1つの軌道に3機ずつ、計12軌道に36機の小型SAR衛星を配置する衛星コンステレーションを構築し、世界中のほぼどこでも平均10分以内に観測できる体制の実現を目指している。

2023年12月に、事業会社であるQPS研究所が東京証券取引所グロース市場に上場。その後、2025年12月にQPS研究所を中核子会社とするQPSホールディングスを設立し、株式移転によって持株会社体制へ移行した。

▶QPSホールディングス・QPS研究所の詳細はこちら

QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像
QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像(QPS研究所のPR TIMESより引用)

QPSホールディングスの決算内容|2026年5月期通期決算

2026年5月期通期決算概要

QPSホールディングスが発表した2026年5月期通期決算は下図の通りである。

QPSホールディングスが発表した2026年5月期通期決算概要
QPSホールディングスが発表した2026年5月期通期決算概要 ©Space Connect

QPSホールディングスの2026年5月期における売上高は38億300万円となり、前期比で141.9%増加した。

売上高のうち、SAR衛星による画像データ提供は、前期の12億3,200万円から22億2,100万円へ増加した。増収をけん引したのは、防衛省が進める「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」である。同事業は2026年4月に開始され、QPSホールディングスグループにとって画像データ提供における新たな収益の柱となった。

一方、衛星の開発・調査研究による売上高も、前期の14億4,900万円から15億8,200万円へ増加。防衛省向けに進めている2機の衛星の試作・開発が中心となっており、同案件は2028年5月期まで安定的に業績へ寄与する見通しである。

売上高が拡大した一方、売上原価は前期比17億1,000万円増の34億7,300万円、販売費および一般管理費は同3億3,000万円増の11億6,300万円となった。

主な要因は、運用する衛星の増加である。減価償却の対象となる衛星は前期末の2機から今期末には8機へ増加し、減価償却費や衛星との通信費などが膨らんだ。

さらに、補助金の対象となる衛星開発費用や、事業規模の拡大に伴う人員増加も費用を押し上げた。この結果、本業の利益を示す営業損益は8億3,300万円の赤字となった。

2027年5月期の業績予想は、売上高100億円、営業利益3億円、経常利益20億円、当期純利益19億円としている。売上高は2026年5月期の約2.6倍に拡大し、営業損益も黒字へ転換する計画である。

画像データ提供では、防衛省の衛星コンステレーション事業が通年で業績に寄与する。補助金収入については、宇宙戦略基金から12億円、経済産業省のSBIR事業から8億円を計上する見込みである。

財務状況とキャッシュフロー

2026年5月期末の総資産は、前期末から約185億円増加し、424億6,300万円となった。このうち現金および預金は212億4,800万円で、前期末の118億3,300万円から約94億円増加している。純資産も前期末の148億7,900万円から316億8,000万円へ拡大した。

現金が増加した背景には、シンジケートローンと第三者割当増資による資金調達がある。

QPS研究所は2026年1月、衛星の製造費用や打ち上げ費用などに充てるため、融資総額62億円、融資期間5年のシンジケートローン契約を締結。さらにQPSホールディングスは2026年3月、スカパーJSAT、ミツウロコグループホールディングス、三井住友海上火災保険を割当先とする第三者割当増資を実施し、152億円を調達した。

調達資金は、QPS-SAR25号機から38号機までの製造費用や打ち上げ費用などに充てる方針である。3社とは資本面だけでなく、通信、エネルギー、保険などの領域におけるSAR画像データの活用でも連携を進める。

一方、2026年5月期の投資活動によるキャッシュフローは194億9,700万円の支出となった。衛星の製造や打ち上げを含む固定資産の取得に95億1,000万円を支出したことなどから、フリーキャッシュフローは200億2,300万円のマイナスとなっている。

ただし、財務活動によるキャッシュフローは164億3,800万円のプラスである。第三者割当増資などを通じて資金を調達し、衛星コンステレーション構築に向けた先行投資を支える財務基盤を強化している。

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事業の進捗と今後の計画

軌道上で9機の小型SAR衛星を運用

QPSホールディングスは、2026年6月時点で14機のQPS-SARを打ち上げ、このうち9機を軌道上で運用している。

これまでに打ち上げられたQPS-SAR14機の状況一覧
これまでに打ち上げられたQPS-SAR14機の状況一覧 ©Space Connect

2026年5月期には6機のコンステレーション用衛星の製造を完了した。当初は同期間中に6機を打ち上げる予定だったが、Rocket Labの打ち上げ計画変更により、2機の打ち上げは2026年7月以降へ延期された。

また、テレメトリ送信機の不具合によって2024年8月から商用運用を中止していたQPS-SAR5号機「TSUKUYOMI-I」は、復旧作業を経て2026年2月に商用利用を再開した。

同社は今後の衛星打ち上げに向け、10機分の打ち上げ機会を確保しており、このうち8機についてはRocket Labと契約している。

2027年5月期は7機の打ち上げを計画

2027年5月期には、7機のQPS-SARを打ち上げ、期末時点の運用機数を5号機を含む16機まで増やす計画である。

同期間中には、受託開発衛星を除いて6機を製造する。新たな製造拠点を活用して衛星の安定的な量産体制を整えながら、防衛省向けをはじめとする受託開発案件にも取り組む。

また、自社の衛星コンステレーション構築に加え、防衛省向け衛星の試作・開発や、経済産業省のSBIR事業に採択された高分解能・高画質化と広域観測の実現に向けた次世代SAR衛星の開発も進める。自社衛星の量産と受託開発を並行して進めながら、36機体制の実現に向けて、製造・打ち上げ・運用の各段階を拡大していく計画である。

2031年5月期に売上高300億円を目指す

QPSホールディングスは、新たに公表した中期経営計画において、2031年5月期に売上高300億円、営業利益30億円、EBITDA200億円を目指す方針を示した。

成長に向けては、36機による衛星コンステレーションの構築を着実に進めるとともに、年間の衛星製造能力を20機へ引き上げる。

また、新技術を搭載した次世代SAR衛星の開発により、官公庁向け案件に加え、海外政府や民間企業向けのデータ提供、画像解析などのソリューション事業の拡大を目指す。

中期経営計画の5年間では、本格的な収益成長ステージへ移行し、グローバルなインフラとして活用される状態を目指す。同時に、2032年5月期以降の新規プロジェクトの立ち上げに向けた準備も進める計画である。

さいごに

QPSホールディングスの2026年5月期決算は、防衛省向けの画像データ提供が始まったことで売上高が拡大する一方、衛星の運用機数増加に伴う減価償却費などにより、営業赤字となった。

一方、宇宙戦略基金による補助金収入などを背景に、経常利益と当期純利益は黒字へ転換している。シンジケートローンや第三者割当増資によって、衛星コンステレーション構築に必要な資金も確保した。

2027年5月期には7機の衛星打ち上げと売上高100億円を計画している。今後は、防衛省向け事業を安定的に履行しながら、海外政府や民間企業向けの需要をどこまで拡大できるかが、36機体制の構築と中長期的な成長における重要なポイントとなる。

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参考

株式会社QPSホールディングス 2026/5期 決算説明資料(2026-07-14閲覧)

※本記事は、公開されている決算資料やIR情報をもとに、企業の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。

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