
IMV株式会社(英:IMV CORPORATION、以下「IMV」)は、振動試験装置の開発・製造、受託試験サービス、振動計測ソリューションにおいて国内外で高い評価を得るリーディングカンパニーである。
自動車、電子機器、エネルギー、そして宇宙分野まで、幅広い産業の信頼性評価を支える同社の技術は、製品の安全性と耐久性を保証する上で欠かせない存在だ。
本記事では、IMVの歩みと事業領域、近年注目される宇宙産業における取り組みについて紹介する。
目次
IMVとはどんな企業か ― 概要と沿革
概要
IMVは、1957年に大阪で「株式会社国際機械振動研究所」として設立された。
創業当初から一貫して振動技術の研究・開発に取り組み、現在では振動試験装置の設計・製造を中心に、受託振動試験サービスや計測・解析システムの提供までを手がける総合振動技術企業へと発展している。
本社は大阪市西淀川区に所在し、国内16拠点、海外9拠点を展開。世界8カ国で約400名の社員が活躍しており、グローバルに振動技術の価値を提供している。
沿革

IMVの歴史を振り返ると、日本の製造業の発展とともに歩んできた軌跡が見えてくる。
1970年代には会社更生法の適用を受け、経営再建に取り組む苦難の時期を経験した。しかし1980年代以降、自動車・家電業界を中心に高まった信頼性試験の需要を背景に、再び成長軌道へと復帰した。
2005年には本社および工場を大阪市西淀川区に移転・集約。その後、2007年に名古屋テストラボ、2015年には山梨県上野原市に東京テストラボ上野原サイトを開設し、受託試験体制の強化を進めた。
2010年代に入ると、海外拠点の整備を本格化。現在では、世界各地の顧客に対して技術サポートを提供するグローバルな体制を確立している。
IMVは、創業以来磨き上げてきた振動試験技術を宇宙・航空分野にも応用している点が特徴的である。
業界外ではあまり知られていないものの、JAXAをはじめ、三菱重工業、IHIなど日本を代表する宇宙関連企業と連携し、人工衛星やロケットの信頼性試験において欠かせない役割を果たしてきた。
いわば、宇宙開発を陰で支える名脇役である。
こうした確かな技術基盤を背景に、同社は「Secure the Future ~未来の安全・安心のために~」を企業理念に掲げ、社会インフラから先端技術まで、幅広い産業領域に貢献し続けている。
IMVの事業紹介
IMVの事業は大きく分けて「振動試験装置」「テスト&ソリューションサービス」の2つの柱で構成されている。

1|振動試験装置事業
IMVの主力製品である振動試験装置は、製品の信頼性評価や耐久性試験に欠かせない設備である。
同社は振動試験機のほか、振動を制御する「振動制御機」や、振動を測定する「振動計」、絶縁物の劣化を評価する「絶縁劣化評価試験装置」なども提供し、自動車、電子機器、航空宇宙分野など幅広い産業で活用されている。
特に、航空宇宙分野では、QPS研究所(英:Institute for Q-shu Pioneers of Space, Inc.)が同社の「Kシリーズ(水冷式大型振動試験機)」を導入。
静音環境下での衛星振動試験を実現しており、宇宙機器の開発を支える先進的な事例として知られる。
他にも省エネルギー型の「エコシェーカー」では、必要電力量を自動算出し、電力消費とCO₂排出を最適化を実現しており、安全・快適・環境負荷低減を両立させた製品開発を進めている。
2|テスト&ソリューションサービス事業
IMVは装置の提供にとどまらず、試験そのものを請け負う受託サービスも展開している。
国内では大阪・東京など6拠点、海外2拠点にテストラボを設置し、振動・衝撃・環境試験をワンストップで実施可能な体制を整備。自社で設備を持たない企業でも、宇宙機器や電子部品の試験を外部委託できる点が大きな強みである。
他にも、試験計画の立案から解析、改良提案までを一貫して支援し、顧客の開発スピードと品質向上を両立させている。
IMVの宇宙産業への貢献
人工衛星やロケットといった宇宙機器は、打上げ時に極めて厳しい振動環境にさらされるため、地上での高精度な振動試験が不可欠である。IMVは振動試験のリーディングカンパニーとして、宇宙開発における信頼性評価の重要性を深く理解し、その技術とサービスを通じて産業全体の発展に貢献している。
2025年6月には、航空・宇宙・防衛分野への対応を強化するため、埼玉県入間市の日本高度信頼性評価センター内にEMC試験(※1)専用棟を新設。電磁両立性(EMC)試験の体制を拡充し、衛星・ロケット機器の総合的な試験サポートを可能にした。
前述の通り、2024年6月、QPS研究所は、IMV製の「Kシリーズ(水冷式大型振動試験機)」を導入。
従来は外部委託していた振動試験を自社で実施できるようになり、試験対象の移動時間を削減するとともに、衛星開発のスピードと効率を大幅に向上させたとのことだ。
またロケットに関しても、インターステラテクノロジズ株式会社も、観測ロケット「MOMO」および小型ロケット「ZERO」の開発過程でIMVの試験装置を採用している。
2020年8月以降、自社施設内に振動試験環境を整備し、開発サイクルの短縮と品質保証の高度化を実現している。
IMVはこれらの企業に対し、テストラボを通じた試験支援や、振動条件の設計・最適化に関する技術的助言を提供し、宇宙機器開発の信頼性向上に寄与している。
※1:「電気・電子製品の電磁波(ノイズ)に関する試験」のこと。電磁波が規格で決められた範囲内に収まっているかを評価するエミッション(EMI)試験と、電磁波による誤動作の起こりやすさを評価するイミュニティ(EMS)試験で構成される。
同社が培ってきた精密振動試験技術は、宇宙開発という極限環境下での安全性を確保する上で欠かせない存在であり、今後もその重要性は一層高まっていくだろう。
さいごに
IMVは、60年以上にわたり振動試験の専門メーカーとして日本のものづくりを支えてきた。
その技術と知見は、自動車、電子機器、エネルギー、そして航空宇宙など、多様な産業の信頼性評価と安全確保に活かされている。
単なる試験装置メーカーにとどまらず、顧客の開発現場に寄り添いながら、製品の品質向上と社会の安全・安心の実現に貢献し続けている点がIMVの強みである。
現在、IMVでは、新卒採用をはじめとする人材の受け入れを強化している。
長年にわたり培ってきた確かな技術基盤のもとで、次世代の「信頼性」を支える仕事に挑戦してみてはいかがだろうか。







