安全・低コスト・低環境負荷を実現!?ハイブリッドロケットとは
©Space Connect株式会社

2024年11月9日、AstroX株式会社が高度10㎞級のハイブリッドロケットの打ち上げに成功した。

ハイブリッドロケットは安全性や価格の低さなどから注目されているロケットである。一方で、課題もいくつかあり、現在までに実用化された例は少ない。

本記事では、ハイブリッドロケットの仕組みや使用する利点、開発における課題ならびに、ハイブリッドロケットを開発する企業をご紹介する。

ハイブリッドロケットとは

ハイブリッドロケットとは、固体燃料と液体の酸化剤というように、異なる2種類の推進剤で動作するハイブリッドエンジンを使用したロケットである。

ハイブリッドロケットでは通常、エンジンの燃料に末端水酸基ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ワックス、アクリルなどの炭化水素系高分子材料(プラスチック)が用いられ、酸化剤には酸素、過酸化水素、亜酸化窒素などが用いられる。

一般的なハイブリッドロケットエンジンの構成を簡易的に表すと下図の通りとなる。

ハイブリッドロケットエンジンの構成
ハイブリッドロケットエンジンの構成 ©Space Connect株式会社

エンジンの作動時、固体ロケットの場合は酸化剤と燃料を均一に混ぜ合わせて固めた固体燃料を燃焼させ、液体ロケットの場合は別々のタンクに入れた液体の酸化剤と燃料を燃焼室にパイプを通じて送り込む。

ハイブリッドロケットの場合は、固体燃料を充填した燃焼室に液体酸化剤が高圧ガスやポンプで送られる。通常、自然には着火しないため、別途用意した点火器で着火。着火に成功すれば、固体燃料の表面に火炎が形成される。

また、ハイブリッドロケットにおける液体ロケットや固体ロケットと比較したメリットは以下の通り。

ハイブリッドロケットのメリット
ハイブリッドロケットのメリット ©Space Connect株式会社

一方で、課題としては以下のようなものが挙げられる。

ハイブリッドロケットの課題
ハイブリッドロケットの課題 ©Space Connect株式会社

これらの課題を解決し、安全性が高く、低コストのハイブリッドロケットを実現させるべく、様々な研究機関や企業が、ハイブリッドロケットの研究開発を行っているのだ。

さらに、ハイブリッドロケットのエンジンと同じ仕組みをもつ、人工衛星搭載用のハイブリッドスラスタ(エンジン)の開発も進められている。

ハイブリッドロケットを開発する企業

ここからは、ハイブリッドロケットを開発する企業・団体3つと、その特徴についてご紹介する。

AstroX

まずは、AstroXを紹介する。同社は、気球で成層圏までロケットを放球し、そこからロケットの空中発射を行う「ロックーン方式」での衛星輸送サービスを開発する企業。

最高技術責任者(CTO)の和田豊氏は、千葉工業大学宇宙輸送工学研究室の教授でもあり、ハイブリッドロケットの開発も行っている。

これまで、世界初の姿勢制御技術を用いた気球からのモデルロケット空中発射実験や、姿勢制御装置の統合試験、ハイブリッドエンジンを搭載した超小型ロケットの発射実験等に成功。

また、今回行われた実験では、高度100㎞程度の宇宙に到達するロケットと同じサイズのロケットの打ち上げに成功した。

同ロケットは地上から打ち上げた場合には高度10㎞程に到達するが、気球によって、空気抵抗の低い場所から打ち上げることによって、宇宙への到達を目指す。

同社は2025年度中の宇宙到達、2028年度中の衛星の打ち上げ成功に向けて順調に歩みを進めている。

© 福島イノベ機構

bluShift Aerospace

bluShift Aerospaceはアメリカのロケットスタートアップ企業。

バイオ由来の固体燃料を使用した、無毒のハイブリッドロケットを開発する。

最近では、衛星輸送サービスに使用するエンジン「Marevl」のおよそ1分間の燃焼試験に成功。最初のテストと比較して、推力を10~15%向上させることにも成功している。

衛星輸送サービスは、2025年に開始される見込みとなっている。

©bluShift Aerospace

神奈川大学宇宙ロケット部

世界各国では、大学のサークル等においてもハイブリッドロケットが開発されている。

その1つ、神奈川大学宇宙ロケット部は神奈川大学工学部機械工学科航空宇宙構造研究室と、課外活動としての宇宙ロケット部から構成。2014年に発足した。

ハイブリッドロケットの燃料として使用済みプラスチック再生技術を活用し、2021年に行われた打ち上げでは高度約10.1㎞に到達。ハイブリッドロケットの当時の高度日本記録を更新した。

現在は、高度100㎞への到達を目標に活動している。

©神奈川大学宇宙ロケット部

さいごに

いかがでしたか。

今回紹介した企業・団体以外にも、様々な機関・企業でハイブリッドロケットの研究は進められている。

例えば、株式会社 MJOLNIR SPACEWORKSは、北海道大学で開発された、プラスチック燃料の安全性を維持したまま燃焼を促進すると同時に燃焼効率を高める燃焼技術を発展させ、商用サイズの推力の大型化に成功した。

また、衛星用のハイブリッドエンジンまで広げると、例えば無人小型衛星による宇宙実験サービスを開発する株式会社ElevationSpaceは、東北大学の協力のもと、世界初の衛星用ハイブリッドエンジンの実用化に向けて開発を急速に進めている。

ハイブリッドエンジンは、世界でもまだ実用例が少ないため、日本が世界に先駆けて実用化・技術の確立をを行うことが可能な分野だろう。この技術が日本で確立され、持続可能な宇宙開発に向けて技術が世界に広まっていくことを期待したい。

また、今回紹介したAstroX、またElevatonSpaceは、現在、採用活動を強化している。

同社の働き方に興味のある方は、ぜひ下記リンクからご覧いただきたい。

スぺジョブ説明画像

参考

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