月面探査車YAOKI、初の月面へ!民間初着陸を遂げたNova-Cとともに挑戦
©株式会社ダイモンの画像を使用

株式会社ダイモンが開発する月面探査車「YAOKI」が、米国テキサス州に拠点を置くIntuitive Machines社の月着陸船「Nova-C」に搭載され、2025年2月26日から4日間の間(現地時間)に初の月面着陸に挑戦する予定となっている。

本記事では、ダイモン社が開発する「YAOKI」の魅力とミッションの概要について紹介する。

月面探査車「YAOKI」の注目ポイント

概要と特長

ダイモン社が開発する「YAOKI」は、月面開発の最前線で活躍する月面探査ロボット(月面ローバー)である。

特長は主に以下の4つ。

  1. 超小型:手のひらに乗るほど小さい。(15㎝×15㎝×10㎝)
  2. 超軽量:月への輸送は1㎏あたり1.4億円。YAOKIは498g。
  3. 高強度:100Gの衝撃に耐え、洞窟への投げ込み探査も可能。
  4. 確実走行:転んでも倒れても、走り続ける設計

「YAOKI」は二輪方式を採用しており、従来の小型探査車に対して重量で10分の1(現在498g)、大きさで50分の1(15×15×10cm)となる超軽量・小型化の実現に成功しているのが大きな特徴だ。

これにより1kgあたり1億円以上とされる月への輸送費用の大幅節減に成功し、複数機の同時投入や連続的な月面ミッションが可能となった。

また設計の面でも100Gの衝撃に耐えうる高い耐久性を備えている。

100Gとは0.1秒間で約353㎞/h、1秒間で約3500㎞/hに達す加速度を意味しており、宇宙飛行士が立った状態で耐えられる限界が3.5から4G、スペースシャトルの打ち上げ時で最大3Gされるのと比較するとその約25倍の加速度に相当する。

当然のことながら、超小型でありながらも、センサー、モーター、バッテリー、通信機器といった探査に必要な機能をすべて搭載し、月面での実証実験の体制も充実している。

このような驚異的な耐久性と転んでも倒れても走り続けられる確実走行の設計により、クレーターが多く険しい環境での探査や、地下数10mから数100mの深さにある洞窟への投げ込み探査も可能となっている。

YAOKIはなぜ重要なのか

現在、今後の国際的な月開発のロードマップとして、月面基地の建設などが計画されている。そのためには月面探査および様々な要素技術の月面実証が必要不可欠となっている。

しかし現在、月輸送のコストは1kgあたり約1億円以上という相場となっており、大規模な機材になるほど実証実験にかかるコストも大きく、それはまた失敗時の損失リスクも大きくなることを意味する。

そこで「YAOKI」では、安価で高頻度に利用できる月面実験プラットフォームとしてサービスを提供。継続的に複数台の機体を月に送り込み、様々な企業による月面での実証・実験およびデータ取得を実施する。

これにより、多くの企業が月開発に参入するための月面での稼働実績を得ることが可能となるのだ。

YAOKIの月面イメージ図
YAOKIの月面イメージ図 ©株式会社ダイモン

Project YAOKI 1(PY-1)について

今回実施される「YAOKI」初のミッションでは、Intuitive Machinesの月着陸船「Nova-C」に「YAOKI」を搭載され、月の南極付近に着陸する予定となっている。

Intuitive Machinesは、2024年2月に民間として世界で初めて月面着陸を果たした企業。今回のミッションは同社にとって2回目の月面着陸となる。

ミッションの注目ポイント

月面画像撮影やパートナーの技術実証を実施

着陸後、「YAOKI」は地球からのリモート操作による月面走行および月表面の接写画像データの獲得などの月面運用を実施する予定だ。

月表面の画像データは月面環境の理解を深めるだけでなく、将来の月探査ミッションの重要な基盤となる事を目指している。

また、今回のミッションにはProject YAOKI技術パートナーの各種要素技術の実証も含まれている。

例えば、YAOKIのタイヤ部分に使用されている一部のねじは、パートナー企業である桂川精螺製作所にて大田区の小学生が製作したものだという。

この活動は、次世代を担う子供たちに宇宙産業の魅力を体感してもらうことを目的として実施。

こうした取り組みを通じて、企業が月面での稼働実績を得る機会が増加することに加え、より多くの人々が宇宙開発へ関心を持ち、未来の探査ミッションがより身近なものとなることが期待される。

YAOKIのタイヤ部分のねじ
YAOKIのタイヤ部分のねじ ©株式会社ダイモン

運用・地上制御専門のJAOPSと連携

今回のミッションでは、ミッション運用と地上セグメントの管理を株式会社JAOPSが担当する。

同社の共同創業者兼CEOのアレハンドロ・セラ氏は宇宙セクターにおいて約20年の経験を持ち、宇宙製品開発の全段階にまたがる包括的な専門知識を生かして初期コンセプト設計から運用終了に至るまで多方面に貢献。オペレーションからマーケティング、試験、インテグレーションに至るまで幅広い経験を持つ。

また、共同創業者兼CMOのルイ・ブルツ氏の専門分野は、月探査機のフィールドテストや仮想シミュレーションを含む移動ロボット、オートノミー(自律性)、ミッション運用のシステムエンジニアリング。これまでispaceでは月探査機「HAKUTO」のコンセプト設計からフライトモデルの認証までを手がけ、LunarVision社ではアメリカ、カナダ、日本など様々な国のチームで関連業務に関わりコンサルティングを提供してきた。

株式会社ダイモン CEOの中島 紳一郎 氏は、「JAOPSと協力することで、ミッションの技術的側面に集中しながら、円滑な運用とデータ伝送を確保することができます。」と述べている。

JAOPSとのパートナーシップが、YAOKIミッションの成功を力強く後押しするだろう。

打ち上げ情報

打ち上げ概要は以下の通り。

  • 打ち上げ時期:2025年2月26日~2025年3月1日(現地時間)
  • ロケット:Falcon9(SpaceX)
  • 着陸場所: 月の南極にある「シャクルトン・クレーター」(Shackleton)付近
  • YAOKIのミッション概要:地球からのリモート操縦による月面走行および画像データの取得

「YAOKI」を搭載した「Nova-C」は、SpaceXのロケット「Falcon9」で打ち上げられる予定で、機体はフロリダ州ケープカナベラルに輸送済み。

Intuitve Machinesによると、打ち上げは現地時間で2月26日以降、4日間の間に実施される予定だ。

さいごに

いかがでしたか。

「YAOKI」は、超小型・超軽量でありながら、高強度を誇る次世代の月面探査ローバーであり、新たな探査手法を切り開く可能性を秘めている。

その活躍が、今後の宇宙開発にどのような影響を与えるのか、注目が集まっているところだ。

Intuitive Machinesの月面着陸が成功し、「YAOKI」の挑戦が、新たな月面探査の一歩となることを願いたい。

参考

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